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第28話 客観的にみてみましょう

今日は久しぶりに制服に袖を通す。図書室の開放日のため学校に行くからだ。海水浴の後、玲奈達とも電話で話はしたが会うことがなかった為、数日ぶりに顔を見ることになる。

バレー部も今日は練習が午後からだというので、午前中のうちに健人くんと和維くんと玲奈の四人で学校で会うのだ。お弁当持参で、久しぶりの四人での昼食もする。

暑いので待ち合わせは図書室の中にしていた。開放開始時間に着いていた私と玲奈は本を返却して新たに借り、勉強していた。


「あ。今、校門だって。メールきたよ。図書室の前で待とうか」


玲奈と移動する。今日の図書室は放課後と違って随分と騒がしい。いつもは話すのも憚られるが、そんな事を気にするのがバカらしく思える程だ。

冷房がついているから外よりは涼しいが、人が多く、熱気と湿度で少々気持ち悪い。図書室の外に出たらかえって気分がいい。

程なくして二人がやってきた。

海水浴の時は日焼けによる赤さもあったが、今はもうすっかり赤みは落ち着き、黒くなっていた。


「おはよう、健人くん、和維くん」

「おはよう。暑い~。中で涼もうぜ」

「おはよう。涼しい場所求ム」

「おっはよう~!思ってるより涼しくないと思うよ。でも、まぁ、入って入って」


健人くんが「お前んちかよ」と突っ込む。四人で図書室に入った。


「うおっ、涼しー…くないなぁ」

「モヤッと空気が澱んでる」

「だから言ったじゃない」


これなら教室に行ってしまおうとなり、暑い暑いと言いながら教室へ行った。教室も暑かったが、窓を開けたら大分マシになった。いつもの席に座る。

まず海水浴の時の精算で、和維くんが二人からお金を受け取る。水道代とかはまだわからないので、後でお釣をわけて返す旨を伝える。うちの分は予算として事前に多めに渡してあるので立替えた側だ。お釣をまつだけである。


「うん、ちょうどだな。確かに受け取った」


和維くんは預かった領収書と明細書を渡す。

次はと、今度は玲奈がSDカードを取り出し、


「はーい、それではカード代徴収しまーす」


みんながデジカメで撮影していたので、プリントアウトした物じゃなく、カードを回してコピーしていこうとなった。次はウチのデータの番となり、カードを預かった。


「あっ、そうそう。奈央ちゃんこれ」


和維くんが紙袋を出してきた。


「私に?」

「何々?和維まさかの奈央への貢ぎ物?」

「違うって。ミヤ兄から預かったんだ。会うんだって話したら渡された。俺も中身は知らないよ」


中の物を出す。海水浴の時の写真がアルバムに収められていた。和維くんが身を乗り出して写真を覗いてくる。


「ミヤ兄、カメラ持って行ってたんだな。母さんのカメラのヤツと違うわ」


私はその写真を次々と見ていく。私の写真がほとんどだ。私が写ってないものはあまりない。でも、雅さんが撮ったはずなのに雅さんとの写真が何枚もあった。私の記憶だとお母さんと恭子さんに撮ってもらったのもある。

あのカメラは雅さんのだったのか。

どういう理由でセレクトされたのかわからないけど隠し撮りっぽい(…)のもある。この抱き締められてるの帰る前のだ。赤くなっていく私の顔に気付いた三人に写真を覗かれていることには気付かなかった。


写真を見ながら気付く。玲奈達と写っている写真は、本当にカラカラと笑っていて楽しそうだ。雅さんと写っている私は、穏やかでふわっとしていて、私が鏡で見る自分の顔とは違う顔だった。『どこかで見たことある』考えを巡らせ思い出したのは、翔惟先輩と彼女の写真だった。


「私もこんな顔してたんだ」


雅さんの顔を見る。色々な表情があったけど、私を見る雅さんの顔は、慈愛に満ちている。好きだという気持ち、愛しいという想いが伝わってくる。

ここ数日悩み考えていた事を玲奈達に言おうと決めた。


「あのね」


と顔を上げて三人を見る。何故か姿勢を正している。健人くんと和維くんがゴクリと喉を鳴らした。


「私、雅さんが好きなの」


「「「…………………」」」


勇気を出しての告白だったのに、呆れた顔した玲奈と口をぽか~んと開けた健人くんと眉間をぐりぐりとする和維くんがそこには居た。


「あのね、私、雅さんのことが好きなの」


もう一度言ってみた。恥ずかしいけど、皆微妙な反応なので更に言う。


「雅さんがじゃなくて、私がなんだけど……」


さすがに恥ずかしさがアップし過ぎて声が小さくなってしまう。


「そんなの知ってるよ?みんな分かってたよ。気付いて良かったね」

「俺、奈央ちゃんが妊娠したとか言うのかと思って、超焦った」

「俺だって、ミヤ兄に引導渡すのかと思って、我が身をおもうと震えたよっ」


思っていた反応と違って驚いた。そんなに前からバレバレだったのかと赤面するしかなかった。


「奈央ちゃん、それ直接ミヤ兄に言ってやって。

俺、ミヤ兄のバイトの予定とかわかんないからさ、自分できいて。

ちゃんと会って言ってやってね。ミヤ兄をよろしく頼むよ」


和維くんにそう言われて、早速今夜連絡しようと決めた。

健人くんが、「まだ付き合ってなくてアレなの」と言っていたが、アレとはどれの事だろう?

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