井上千里3
姉ちゃん達が風呂を使っているので、俺達はその間庭で待つことにした。なるべく室内に砂を持ち込まないようにだ。
翔惟さんの提案で昨日の残りの花火をしようと準備する。ロケット花火は後で拾いに行くのが面倒だというので、パラシュートとネズミ花火をした。あっという間に終わってしまった。まだ風呂は空かない。
母さんが顔を出した。
「おーい。そこのホースで水浴びしたら?ベタベタするでしょ。外から見えないし、男同士、マッパで親交深めたら?
タオル持って来るから、それまで脱がないで待ってるんだよ」
母さんがいなくなると
「俺、水浴びすれば、別に風呂いいや」
と翔惟さん。和維さんと健人さんは、
「俺、髪ギシギシするのイヤだし、髪洗いたい」
「お湯に浸かって疲労を…」
雅さんがオレを見る。
「オレも髪洗いたいです」
「だよね。オレもこのべとべととギシギシどうにかしたいよ。
でも、女の子のお風呂ながそうだし。香織さんの提案にのろうかな」
母さんがバスタオルを置いていなくなると、雅さんと翔惟さんは迷わず服を脱ぎ、マッパで水浴びを始めた。ホースだけの蛇口とシャワーヘッドがついている蛇口の両方を開いたので、水が少ないと文句を言いながらも気持ちよさそうだ。
後で風呂に入ると言っていた雅さんの方が先に終わったので、オレも直ぐに脱ぎ水を浴びた。
翔惟さんはタオルで拭くと、服を着に室内に入って行った。
健人さんと和維さんは浴びるというより遊んでいる。
それも終わり、俺達も中に入った。母さんが「上がったみたいよ」と教えてくれた。
オレ達は着替えを取りに行ってから風呂場へ向かった。ドアの前で恭子さんと出くわした。
「あっ、まだダメよ。彼女達、まだ中だから。
うーん、入らないでここで見張っている方がいいかしら?」
恭子さんはドアの前に立ち、オレ達を少し後ろに退げた。中から声がきこえてきた。
「ねぇ、これ。本当にもらっていいのかな?」
「お姉ちゃん、すごくカワイイよ」
「私が着けるには少し大きい気がするけど、大丈夫かな」
姉ちゃん達の会話がきこえる。何かカワイイモノをもらったらしい。
「着け方の説明書があるよ。えっと、前にかがんで」
「腕を通して…留めて…」
「胸のお肉を背中や脇からも集めて?」
「集める程お肉ないわ」
「あたし、集めるともっと大きくなるから集めたくないなぁ」
「そう言わずに、一度この通りにしてみましょう」
「あー、暑い。汗がひかない」
「着痩せしてるだけで結構あるよね」
うわ~、超気まずい。みると皆そのようだ。そうだよな。
「えっと、上体起こして。集め直すの?」
「あれ?カップから出ちゃう?」
「うん?それで、ストラップの長さを調整して…。あ、私の後ろだ。調整して着け直し?」
「あたしがしてあげるよ。―――これ位でどう?」
「まだ緩いかなぁ。もう少し」
「これでどう?」
「うん、いいみたい。ありがとう」
「しっかり支えられて、揺れても痛くないわ」
何か話して聞かないようにした方がいいかと思ったけど、今更だ。
「私、いつもより大きいサイズだけど、ピッタリだわ」
「これすごい。見て!!あたしの胸、いつもよりスッキリ見える」
「お姉ちゃん、これ、苦しくないよ」
出てきた女子達に気恥ずかしさを感じてしまう。夕菜とも目を合わせられない。
実は、オレと健人さんと和維さんはちょっと前かがみだ。鎮める為に「母さん呼びに来るの早すぎだろ」と心の中で文句を言ってみる。
姉ちゃんと夕菜は不思議そうな顔をして行ったが、玲奈さんはニヤリとしたのをオレは見た。
風呂の順番がまわってきたが、オレと健人さんと和維さんがなかなかバスタオルを外すことができなかったのは言うまでもない。




