内田健人3
「何か違う」
ポツリと言った俺に和維が言う。
「明らかにおかしいだろ。男二人で砂遊びって」
そう、俺達は何故か砂浜で砂遊びをしている。
最初は男四人で……それも何か悲しいが、今に比べればずっとマシだ―――波打ち際で遊んだり、ボールで遊んだりと、楽しく過ごしていた。
いい男四人組だったが、残念な事に逆ナンもされず、ただ楽しく遊んでいた。
しばらくすると、水着姿でない(何故だ~!)玲奈達がやってきた。
奈央さんと雅先輩は二人だけで別行動だそうだ。彼女である夕菜ちゃんが来た千里は(もう、リア充は呼び捨てだ)もちろん、彼女と二人でイチャイチャ始めた。玲奈は親達と話して過ごすらしい。ハンカチで鼻をおさえている。変態モードが発動中なのだろう。
おっ、手を振ってきた。和維と翔惟先輩と三人で振り返す。
翔惟先輩は母親に一声かけに行くと、俺達にも「ちょっと泳ぎに行ってくる」と言い海に入っていった。
和維が濡れている砂の上に座った。俺も隣りに座る。手持ちぶさたになった俺は、向きを変えて座り直し、砂で山を作り始めてみた。特に意味はない。
和維がどこからか小枝を1本拾ってきた。無言でそれを、俺が作った砂山の頂上に挿した。
お互いに見つめ合う。
俺は砂山の根元を、両手でグワッとかきとった。次に和維がかきとる。交互にしていくと頂上の小枝が倒れた。
そんな事を繰り返す。6回目が終わった。7回目の山を作っている。そして冒頭の言葉になる。
俺はそれを放置して海の中へ入った。
プカーっと浮いてみる。和維も入ってきたが、砂を流すと玲奈の方へ行ってしまった。
俺も水から出て、玲奈の方へ行く。
玲奈の笑い声と和維の抗議する声がきこえてきた。
「ちょっ、まっ、お前、それ消せよっ」
「イヤよ。上手く撮れているもの」
「おいっ、カメラ寄越せっ」
「なかなか良く撮れてるから奈央にも見せてあげるのっっ!」
「それは黒歴史だっっ!頼む、消してくれっ!!」
玲奈が俺に気付いた。
「健人っ、和維を抑えてっ」
俺におさえられた和維はアッサリとおとなしくなった。
ぐったりと諦めた表情をしている。
玲奈は、「じゃじゃ~ん」と言って、俺にデジカメの画像を見せてきた。あー、なんかもうわかった。
そこには、四人で遊ぶ俺達やなかなか格好良く撮れている俺達も写っていたが、砂山で遊ぶ俺達が写真だけでなく動画でも撮られていた。
「楽しい思い出が残って良かったね」
俺と和維は抱き合って泣いた。カメラで撮られている音がきこえてきた。
ああ、自ら黒歴史を増やしてしまった。




