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第2話 熱い友情は迷惑です

翌朝、出掛けにお母さんから声をかけられた。


「奈央、玲奈ちゃんが『朝、図書室前集合』だって」

「うん、分かった。ありがとう、行ってきます」

「行ってらっしゃい」


どうやら玲奈は寝坊でもしたようだ。でも、昨夜の事を少しでも早く聞きたくて走ってくる姿が想像できる。

朝のうちに内田くんと話せたら、と思ったが、部活の朝練とかで会えないかもしれないし、後でいいかと思う。


「奈央っ、おはようっっ」

「おはよう、玲奈」


息を整える時間も惜しいとばかりに話を急かしてくる。


「私は内田くんと話せなかったよ。お母さんとは楽しく話していたみたい」

「それで?」

「それだけだよ」

「それだけ?」

「うん」

「かけてあげなかったの?」

「お母さんからと思われて出てくれなさそうじゃない。最初に家電いえでん教えた時の反応考えると、私が意地悪したみたいに思われそうな気もするし」


時計を見ると、あと5分でSHRだ。玲奈を促し教室へ向かった。


教室に入って内田くんを探すと自分の席に座っていた。鞄を持ったまま近付く。


「内田くん、おはよう。昼休みに話したいんだけど、時間もらえるかな?」

「えっ、あっ、うん、おはよう…分かった、よ」

「昨日の事だから。あ、先生来たから戻るね。じゃ、昼休みに」


とりあえず、話をきいてもらえる段取りを取り付ける事ができてホッとした。内田くんが挙動不審だった事は置いておこう。そして、内田くんと仲良しの美男子くんがコチラを睨んでいるが気付かないフリをしておこう。決してソチラを見てはイケナイ。




4限が終わった。手を洗いに教室を出ると、運良く一人でいる内田くんに会えた。


「内田くん、今がいい?食べた後がいい?」

「ああ、弁当の後で」

「教室でいい?」

「いや、4階の渡り廊下で」

「じゃあ、後でね」




お昼を食べ終えた。玲奈は、「行ってくるね」と言った私に、「美男子くんもいるかもよー」と言い、両手を合わせて「南無ー」と頭を下げた。玲奈も私が睨まれていた事に気付いていたらしい。



「お待たせ。来てくれてありがとう」


内田くんに声をかけると隣りに立っている美男子くんこと、藤沢和維くんが答えてきた。


「別に待ってない。俺も一緒にいるけど、いいよな」


何か面倒臭そうだ。どうしようか少しだけ考える。


「…うん、いいけど。私と内田くんの話が終わるまで口出ししないでもらえるかな」


ちょっと強めに言ってみると、とても不満そうな表情をしながらも頷いてくれた。


「内田くん、ちょっと昨日の再現するから、きいていてもらえる?」


何か言いたそうにしながらもコクリとした。

私は、またカードを出す。


「それがウチの番号です。電話の時はマナーを守って下さい。メールの時は、必ず件名の最初に私宛てだとわかるように『奈央へ』とお願いします。

一言一句同じとはいかないけど、大体こんなだったはず」


内田くんが再びコクリとする。私は言葉を続ける。


「続きがあったのですが、内田くんは分かったと言って走り去ってしまいました」


内田くんと美男子くんが何とも言えないバツの悪そうな顔になった。

「けどね」と続ける。


「お願いした通りにしてくれれば、ちゃんと私に繋がるし、その時に続き言えるから大丈夫かなとも思っていたんだ。と言う事で、まず続き言うね」


何故か二人共コクリとした。


「私個人の携帯は持っていません。母と共用です。なので、」


続けようとした私に藤沢くんが


「電話はマナーを守る、メールは最初に井上さんの名前。

にしても、最初にそれを言えばいいんじゃないか?やっぱり健人けんとが悪いわけじゃない。気にするな、健人」


そう言って内田くんの肩に手を乗せた。


「まだ内田くんと話は終わっていない。口出しするなら余所に行って。

内田くんはどうする?」

「和維、余計な事言うなら戻ってくれ」

「ごめん健人。ここにいる」


内田くんが顔をあげて私を見る。


「井上さんはこういう間違いが起きないようにっていうのもあって家電いえでん教えてくれたのかな。…ああ、携帯、持って来れないって言ってたね。

そういえば、校則じゃない理由があるって言ってたような気も」


私はカードを裏返して見せる。


「あとね。裏に共用である事も、普段名字呼びの人もこういう理由で奈央へと入れて欲しい事も書いてあるから大丈夫かなって思ったんだ」


思わず苦笑いがでる。


「お母さん、内田くんと話せて楽しかったみたい。内田くんによろしくって。

良かったら、また電話してね。私宛てのメールはお母さん見ないけど、一応見られたら困る人が出るような内容は遠慮してもらえると嬉しいな」

「また、メールや電話していいの?」

「うん、もちろん。私も楽しい話したいし。

内田くんは格好いいのに中身はなかなか残念さんな事が分かったし。そんな所が親しみやすそうだもん」


クスクス笑う私に「うわぁァーー」っと頭を抱える内田くん。昨日渡したカードに家電いえでんの番号を書き足す。


「家電なら私がとる事も多いよ。あと、私とお母さん、電話だと声似てるんだ」


ちょっとだけイタズラが成功したような嬉しさがあったので、軽くウィンクしてカードを返した。

そして、内田くんと「よろしくね」と握手をした。休み時間が終わりそうなので三人で教室に戻った。その間、藤沢くんは無言だった。とりあえず、これで睨まれる事はなくなるだろう。

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