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井上千里2

藤沢家と夕菜達とウチで海に行く事になった。今年は父さんが留守番なので、海で遊べそうだ。


今は雅さんが運転する車の中である。


「行った先での注意事項があるんだけど聞いてくれるかな」


オレ達は「はい」と答える。


「ところで、健人と千里くんは家で何か手伝いしてる?」


雅さんが質問してきた。家でしている事を思い出しながら言う。


「えーっと。手伝いっていうか、誰でもするような事しかしてないですけど言った方がいいですか?」

「うん」

「自分の部屋の掃除と自分の服のアイロンがけ。あ、ハンカチも。風呂が最後の時は風呂の床掃除。それと体操着が部活や体育で土が付いた時は下洗いするとか。

ああ、家庭科で習ったんだからボタン付けはしなさいって言われているから自分のだけはしてるかな。

うーん、今思いつくのはこの位かなぁ。姉ちゃんはもっと色々してるけど」

「ああ、千里くんは大丈夫かな。健人は?」

「…俺?…自分の部屋の掃除位かな…」


目がキョロキョロ落ち着かない。雅さんが突っ込む。


「本当に?どの位の間隔で?」

「すいません。部屋の物の整理はするけど、掃除機かけるのは母親です」


雅さんが話始めた。


「オレ達が子供の頃から今向かっている別荘借りてるんだけど、子供だったから、まぁ色々やらかしたんだよ。着いたらまず掃除するんだけどね。それが借りる条件だから。

子供だから、掃除するより直ぐ遊びに行きたいだろ?掃除する約束破って、三人で海に行ったんだ。もちろん叱られたけど、出先だからいつもより大目にみてもらえるんじゃないかっていう甘い考えもあったんだよね。その時は、帰る時はちゃんと片付けや掃除するからって約束して」


雅さんはドリンクホルダーからコーヒーを飲んだ。


「なのに、こりずにまた約束破ったんだよ。ベッドの上で飛び跳ねたり駆け回ったり、むしろ掃除の邪魔までして。

その結果、しなかった労働の対価として、3才の和維に400円、5才の翔惟に800円、8才のオレに1200円が請求されて三人共4ヶ月間小遣いなし。伯母との約束も破ったという事で伯母からのお年玉もなしという、子供にとって非情な悲しい結果になったんだよ」


更に翔惟さんが続ける。


「兄貴はその1年でこりて翌年はちゃんとしたんだけどさ、俺と和維はこりずにまたやっちゃったワケよ。で、2年連続お年玉なし」


それに和維さんが続ける。


「その翌年はさすがに掃除したんだけど、嫌々だから、翔兄しょうにいと俺は手抜きしちゃってさ。そしたら、別荘にいる間、俺と翔兄だけ飯がずっとキムチ入りの熱々鍋焼きうどんだったんだ。もちろんお年玉もなし」

「さすがにその翌年は、オレからもよく言ってちゃんとさせたから平和に過ごせたよ。

うちの母さんは君達相手でも手抜きをよしとはしないと思うから、掃除はちゃんとして欲しいな。お願いできる?」


俺と健人さんは「はい」と返事した。

彼らのお小遣い

100円×4ヶ月

200円×4ヶ月

300円×4ヶ月


もちろんお年玉は彼らの手に直接渡らないだけで、恭子さんの手元できちんと保管されてましたよ。

雅の年齢が8才なのは誕生日が7月だからです。間違いではありません。

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