第18話 安全運転で行きましょう
海水浴の日になった。落込むお父さんを尻目に、私達は車に乗り込んだ。運転はお母さん、助手席に私、お母さんの後ろに千里だ。玲奈達を迎えに行き、千里の隣りに夕菜ちゃん、私の後ろに玲奈が乗った。
藤沢家に到着すると、もう皆、車に乗り込み、恭子さんだけが車の外で待っていた。お母さんが車から降りようとすると「そのままでいいわ」と恭子さんが助手席側へやってきた。私は窓を開ける。
「おはようございます、恭子さん」
皆、口々に挨拶する。
「奈央ちゃん、道が分かる人がこっちにもいる方がいいと思うの。だから、あっちに乗ってくれない?香織さん、いいわよね?」
お母さんは私が「イヤだ」と首を横に振ると
「恭子さん、向こう男の子ばっかりでしょ。さすがに娘をあそこに送り込めないわ」
そう言って、千里を降ろし、私が後ろの席へ移り、香織さんが助手席に収まった。もう一台の車の方でも、翔惟先輩らしい人が助手席に移り、千里が後ろに乗っていた。
思っていたより早く到着した。お母さんが言うには雅さんが大分とばしたらしく予想していたより早く着いたそうだ。荷物を降ろし玄関へ運ぶ。久しぶりに使うという事で、まず掃除だ。
恭子さんは水道・ガスの元栓を開けブレーカーを上げると掃除の割り振りを始めた。
「香織さんは私と一緒に台所と浴室・洗面所とトイレをお願いします。
翔惟は家中の窓を開けたあと、各部屋のベランダの柵をちゃんと拭いて布団を干して。
三人娘は、埃がたつから掃除機かけるまえに廊下と各部屋の床をモップで拭いてまわって。
和維と健人くんと千里くんは、掃除機かける担当と濡れ雑巾で台とかを拭く係りを三人で交代しながらしてね。
雅は1番にハタキをかけて。その後備品のチェック。それと階段の手すりや高い所の拭き掃除。
はい、始めっ」
パンッと手を叩いた。恭子さんはおっとり甘あまな人だと思っていたが、さすが、男の子を三人育てただけあると感心しながら掃除にとりかかった。正直、男性陣は手抜きやサボりがあると思ったがむしろ私達より必死に私語もなく一生懸命にやっていた。バケツの水換えの時で通った千里に聞いたら、行きの車の中で、これをサボったり手を抜いた時のその後の恐ろしい仕打ちの話をきき、十分肝に銘じていたそうだ。とはいえ、健人くんと千里は真面目だし、サボったりする事はなかっただろう。
揃って本気を出した掃除は45分程で終わり、女の子から順番にシャワーを浴びて、お母さん達が用意してくれたお昼ご飯を食べる。
そして、ここで漸く藤沢家次男、翔惟先輩に挨拶する事ができた。話したみたら、翔惟先輩はバスケ部で、一途に想う恋人がいるそうだ。「彼女も連れて来たら良かったのに」と言ったら、残念そうに「都合がつかなかったんだ」と言われた。携帯で彼女との2ショットの画面を見せてくれた。
「彼氏欲しいと思ってなかったけど、翔惟先輩みたら、恋人がいるっていいなって思います」
「あ、俺、売約済みだから」
「分かってますよ。そうじゃなくて。彼女が幸せそうな顔してるから、恋人がいるっていいなって思ったんです」
「健人か和維でいいじゃん。どっちもいいヤツだろ?」
「奈央さんは友達のままがいいんだよ」
和維くんが答えた。それに健人くんもうんうんと激しく頷いている。
「私、何か失礼なこと言われてる?」
「そんな事ないよ。奈央可愛いよ。あたしが貰ってあげるよ」
「えー。じゃあ、15年後、私もみんなも独身だったら、お互い彼氏彼女候補って事で」
「どうかな?」と聞くと、
「奈央ちゃんはオレが貰うから、15年後はとっくに奥さんになってるよ」
と、雅さんが迫力のある笑顔で言った。そして、
「お母さんにもなってるかもね」
と付け足した。
私達は何も言えなくなった。




