第15話 告白っぽいけど違うようです
「奈央ちゃん、休もうか」
と椅子のある所まで移動させてもらう。玲奈の「奈央、お願いします」という声が聞こえた。二人で並んで座わる。
「色々お恥ずかしい所をお見せしてしまいました」
「イロイロ新鮮だったよ」
色々を強調されたようで、いたたまれなくなり小さくなる。
「もう大丈夫なので、皆の所へ戻って下さい」
先に戻ってもらおうとしたが、動く様子がない。
「本当はね、オレが奈央ちゃんに会いたかったから、和維に誘わせたんだ」
雅さんが私を見てる。
「妹のようにかわいい所もあると思うけど、妹だとは思ってないから。
本当は二人だけで会いたいよ」
そういう意味かな。どうしよう。どう答えよう。―――答えてみよう。
「私も雅さんのことお兄ちゃんみたいだと思うけど、お兄ちゃんだとは思ってません。こうやって甘やかしてくれるし、側にいると心地良いし。
でも、今日は…今はドキドキしています」
「腕も胸も顔も、奈央ちゃんの眼鏡にかなったみたいだしね」
「恥かしいです。その話はもうやめて下さい」
きっと、顔も耳も真っ赤だ。手で抑えると、とても熱かった。
「ねぇ、奈央ちゃん」
と耳元に顔を寄せてきた。腕が肩にまわっている。
「今日の水着もよく似合っているけど、今度オレが選んであげるね」
つい、「よろしくお願いします」と言ってしまった。
何だか的外れだと思いつつ言ってみる。
「これ、体育の水泳授業で着ているのなんです」
「スクール水着じゃないんだね」
「ワンピースで、色は白以外なら何でもいいんです。だから、学校でも海とかでも使えそうなのを玲奈と一緒に選んだんです」
私の水着は紺色に白のドット柄で肩や胸はひらひらしている。玲奈はこげ茶色にリボンが付いている水着だ。お互い、色こそ地味だが似合っているし、気に入っている。
「水泳部とスイミングのこは競泳用着てますよ」
「オレの時もきっとそんなだったんだろうなぁ。もう覚えてないけど」
そう言うと手を差し出してきた。手をとり立ち上がると皆の所へ向かった。
玲奈が私達に気付いて手を振っている。
「健人くんと和維くんは?」
「今泳いでいるよ、ほら」
見ると二人が競っているように見えた。どちらも早い。特に和維くんは泳ぐ姿もきれいだ。
「ああいうの、人魚みたいとかイルカみたいっていうのかなぁ」
「ウチはスイミングに通っていたからね。オレと和維は小学生の6年間」
「部活も水泳ですか?」
「ううん、中学はバスケで高校はサッカーだったよ。
あれ?そういえば、海斗…海斗?
お兄さんて高校同じ?」
「ええ、そうです」
「オレの1つ下の学年だよね?」
「えっと、雅さんが幾つか分からないですけど、私の3つ上ですね」
「あの海斗の妹かぁ。よく見ると、目元とか髪質とか顎のラインなんかも似てるね。
でもホント、オレの妹じゃなくて良かったよ」
雅さんは私の顔を一撫ですると和維くん達の所へ行き、彼らと一緒にかなり本気で泳いでいた。
その後、交代しながら五人で存分に泳いだ。そして時間になると、また私が助手席に乗り、家まで送ってもらった。
夜は、玲奈と今日の醜態を慰めあった。




