内田健人1
子供の頃から自宅に近いこの高校に通うつもりでいた。わりと勉学に力を入れている学校である事は小学生の頃から知っていた。これから先、まだ将来どうしたいとかは具体的には考えていない。だから今は部活を楽しみながら勉強を頑張り、新しい友達を作ろうと考えている。
新しい友達には女の子も……と考えていた。
考えていたというのは過去の話だからだ。
女の子は………いや、女は怖かった。恐ろしかった。
俺と親友の藤沢和維は世間ではカッコいいという部類に入るらしい。確かに和維は喋らせなければ、アイドルグループに居そうな面持だと、男の俺が見ても思う。
そんな俺達に、同じクラス・他のクラスの女達は突進してきた。明るく溌剌とした自分に自信があるのであろう彼女達は、俺達に話をさせる間も与えずに自らの意見を押しつけ感情をぶつけてきた。
最初は「イケメン羨ましい」「一人位こっちに来て欲しい」「生まれ変わるならお前になりたい」などの羨む言葉を掛けてきた男友達も2週間も経つ頃には憐れむ視線と慰めの言葉をかけてくるように変わっていた。そして、男友達に距離を置かれ始めてしまった……ような気がする。
「おい健人、お前が女子の会話にホイホイ乗るからこうなったんだぞ」
「和維には悪いと思っているよ。
でも俺だって、高校では女の子の友達が欲しかったんだよっっ」
「もっと選べよ。あれは女の子じゃなくて雌の虎か狼だ」
日々危険を感じながら過ごす俺達は、休み時間に放課後になると逃げ回る生活になった。
そんな中、放課後部室に行く為に遠回りするのが日常になってしまった頃、毎日図書室付近で見掛ける、かわいい女子二人組に興味を持った。
「なぁ和維、今すれ違った女子達、おとなしそうだしかわいいな。1年生のタイしてた。
毎日図書室に通うような子達だぞ。きっと猛獣ではないはずだ。ああいう子と友達になりたいな」
「………同じクラスだぞ」
「えっ、うちのクラスにあんなかわいい子いたの?」
「目と胸が大きいかわいい感じの方が片桐さん。髪が長くて背が高い美人の方が井上さんだ」
「和維がチェックしてるなんて珍しいな」
「井上さんの方を書道の展示会で見た事があるんだよ」
「まぁ、何でもいいや。俺、彼女達と友達になるぜ、和維」
そう言って俺は拳を握りしめた。
そして、数日間彼女達を遠目に観察し、猛獣ではない事を確認できたので、友達になる為に放課後彼女達を待ちぶせる事にした。