藤沢和維2
夜、ミヤ兄が俺の部屋を訪ねてきた。
「和維、明日プールに行こう」
俺に向かってそう言うとニコニコしている。
何だかコワイ。話の続きを待つ。
「奈央ちゃん達、明日、市営プールに行くんだって。今から片桐さんと健人に連絡して一緒に行けるように手配してよ」
「ミヤ兄、自分だけで参加しろよ。奈央さんに言えばいいだろ」
「まだオレだけじゃ無理だよ。片桐さんの方がゲンキンな所あるから懐柔しやすいだろ?だから和維の携帯貸して。勝手にアドレス教えてもらうわけにいかないから」
「分かったよ。俺が連絡するよ」
渋々ながら玲奈さんにメールをする。返事を待っている間に健人にもメールする。健人からはノリノリの返事がすぐに返ってきた。まだ決定じゃないからと念を押して、決まったらメールすると返信しておく。
しばらくすると、玲奈さんから電話がかかってきた。
『こんばんは和維くん。何々?一緒にプール行きたいって?』
「ああ、俺達っていうより、1番は兄貴。今、ここに居るから代わるわ。
はい、ミヤ兄、玲奈さん」
携帯を渡した。話し声が漏れ聞こえてきた。
『こんばんは、お兄さん。相変わらず積極的ですね』
「オレは接点少ないからね、頑張るさ。二人だけで会うのはまだ難しそうだし。少しでも奈央ちゃんと仲良くしておきたいんだよ」
『あたしは奈央の友達ですから、奈央の応援はするし、奈央の協力ならします』
「奈央ちゃんがオレを好きになったら、その時はよろしくね」
女になんて興味なさそうにしているミヤ兄が奈央さんにはグイグイいっている。
高1と大2という今の年齢差を考えると正直早まるなと思う。ミヤ兄の意外な好みにもビックリだ。
気まぐれかと思っていたけど、どうやら本気らしい。俺も健人も奈央さんに恋愛感情はないから、応援してもいいかと思わないでもないが、いつか同級生が「義姉」になると想像すると複雑だ。
きっとミヤ兄に捕まったら最後逃げられないだろう。そして奈央さんはきっとミヤ兄に捕まるだろうという予感。
ミヤ兄の心を先に捕まえてしまったのは奈央さんなんだから、こういうのも自業自得というのかな?俺の友達と家族が揃って幸せになるのならば喜ぶべき事なのだろう。
とりあえず今はミヤ兄の事を少しだけ応援しておこう。




