第13話 内緒話をしたんですね
夏休みも図書室は開放されていると思って予定を立てていた私達だったが、なんと、開放日はお盆前に2日間あるだけだった。自習用にクーラーのきく職員会議室が開放されるが、上級生優先のため、実質1・2年生は使えないらしい。
元々お互い一人で勉強するのも苦じゃないし、エアコン代節約を考えてただけだったので、勉強会は見送ることにした。
夏休みに入ったある日、玲奈から電話がかかってきた。
『脳みそ溶けるっ。プール行こっっ!』
「ちょっと待って。予定確認するから。
―――――ここ2・3日と8月2週目以降なら大丈夫」
『じゃ、明日行こっ!!』
「水着、授業の時着てるのだけどいい?」
『いい、いい!あたしもそうだよ』
「キャップいるんだっけ?ゴーグルどうする?」
『市営プールだし、持っていった方がいいかもね。きっと泳ぐでしょ』
そんなこんなでプールに行く事になった。
夜、雅さんから来たメールに「明日は玲奈とプールです」と返信した。 前に言っていた通り、たまにというには多い頻度な気がするが、メールが届く。几帳面なのかマメなのか。まさか、友達がいないのか?
それから30分程して玲奈から電話がかかってきた。待ち合わせじゃなくて、家で待っていて欲しいそうだ。時間は変わらないから、ま、いっか。
出掛ける前に、水着は服の下に着ておく。腕とか足とか再びチェック。髪はゴムキャップにしまいやすい様に2つに分けて三つ編みにする。忘れ物が無いか念入りにチェック。帰りに着替えがありませんでしたとか、髪からしたたる水で服がびっしょりになるとかなりたくない。
準備も終わり待っていると、電話が鳴った。
うちの前に着いたから出て来てという。急いで出ると、家の前に車が停まっていた。
「奈央ー、おはよう」
と後部座席の窓から声がかかってきた。
「おはよう」
と返す。早く早くと急かされる。
近付くと玲奈の奥に和維くんと健人くんが見えた。運転席を見ると雅さんが手をヒラヒラと振ってきた。玲奈に近付く。
「ねぇ、もしかして午後からも遊ぶ予定?」
「あー、人数増えたし、それもいいと思ってたんだけど」
「千里のお昼ご飯も用意したいから、お昼には帰って来たいなぁ」
「あちゃー。ごめん。奈央がご飯作るんだよね。忘れてた」
雅さんが言う。
「責任持って、間に合うように送るよ」
「ありがとうございます。お願いします」
空いていた助手席に乗り込んだ。どうしてこうなったか聞いてみる。
「奈央ちゃんがプールに行くっていうから、和維に行くのかきいてみたら」
「あ~俺も行きたいと思ったから健人に言って」
「でも約束してないから玲奈さんにきいてみた。で、OKもらって、和維に知らせたら」
「兄貴が保護者がいるだろう、車出すって。いいかって玲奈さんにきいたら」
「送迎つきでラッキーって、お願いしちゃった」
「私にも相談してよ」
ちょっとムッとしてみせた。
「奈央ちゃんごめんね」
と雅さんが謝ってきた。
「別にいいんですけどね」
と返事をした。それにしてもと思い、改めてきいてみる。
「どうして助手席が空いていたの?和維くんか健人くんが前に座れば、後ろもっと楽でしょ?」
誰からも返事が返ってこない。
ええ~っ、後ろ三人無視ですか?
雅さん笑ってる。
何で~?
苦しい、嘘だとわかる言い訳ですが、考えたのは誰でしょう。




