第11話 特に不便じゃありません
「まだ途中だけど、今日はもう御開きにしましょ」
「さぁ、皆で片付けましょう」
残っていたお菓子と飲み物は藤沢さん家で食べてくれるそうだ。
というか、藤沢パパが「娘の手作りお菓子を食べたい」と欲しがってくれたのだ。作った甲斐があった。
お母さんと荷物をまとめていると「奈央ちゃん」と呼ばれた。
雅さんが携帯片手に、番号を交換しようと言ってきた。「あ、番号言いますね」と言うと、お母さんから携帯を手渡された。
「奈央と一緒に使ってるのよ。もう高校生なんだから自分の持っていいって言ってるんだけどね」
「別になくても困らないし。むしろ、いつでもどこでも連絡が来る方が面倒。友達には学校で会えるし。用があるなら電話で話す方が早いじゃん」
そう言って、携帯の赤外線送信の準備をする。送りあった後に言っておく。
「母の名前で入っているので、私の名前に変えるなら奈良の奈に中央の央で奈央です。
あと、メールは件名の最初に『奈央へ』と入れて下さい。電話は、どちらが出るか分からないので、家電にかけるのと同じでお願いします。携帯は普段、母が持っています」
雅さんが登録されているのを確認してお母さんに返した。
「用がなくても気が向いたらメールして。オレも送るから」
「無精なので、返信遅くなったり、忘れたりしますよ?」
「本当に用がある時は電話するから見てくれるだけいいよ」
「はい、わかりました」
雅さんが車で送ると言ってくれた。千里と健人くんは玲奈達を送っていくと、四人で先に帰った。
私達は遠慮したけど、今日何も出来なかったから送らせて欲しいと言われ受ける事にした。
助手席にはお父さんが乗った。中学の学区こそ違うが歩いても20分程の距離だ。
あっという間に家に着いた。お礼を言うと「また後でね」と言い帰っていった。
夜、玲奈・健人くん・和維くん・雅さんからメールがきた。
それぞれに、楽しかったのとお礼とおやすみを打って送った。
月曜日は今日の話になるのかな。




