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続9話.乙女心は乙女でも難解です

お久しぶりです。


ゴールデンウィークも終わってしまった。

今年の連休は雅さんとお出かけしたり、雅さんの部屋でまったりしたり、雅さんの部屋でお兄ちゃんも加わって三人でまったりしたり。和維くんの部屋でお兄ちゃんと和維くんと健人くんと千里が楽しんでいる間に玲奈と恭子さんと私でお菓子作りをしたり、玲奈と二人で和維くんと健人くんのバレーの応援に行ったり…結構忙しく過ごした。

この休みにお兄ちゃんが帰ってきたのも驚きだったし、こんなに自宅以外で過ごしたのも、私にとっては珍しいことであった。忙しくて正直疲れたけど、いい思い出だ。



近づいてきた千里の誕生日。

今年はお母さんも体が万全じゃないし、正直、誕生日のケーキをどうしようかなと思っている。

作るのもいいんだけど、いつもお母さんと私の手作りが当たり前になっているので、私とお母さんの二人にとっては他の人の手が掛かっている味が恋しいのだ。はっきり言ってしまえば自分達の味は食べ飽きているので買ったものを食べたいのだ。

お母さんも私も誕生日もクリスマスも基本、自らの手で作ったケーキを食べているのだ。


「お母さん、千里の誕生日どうする?」


お母さんは私の言いたい事が分かり苦笑いを浮かべた。


「もうそろそろ母と姉の愛情ケーキも作るのやめていいわよね?」

「うん。もうそろそろいいよね」

「よし!今年からは買っちゃおう!」


台所のドアが音を立てた。


「えっ、マジで?」

「あ、おかえり千里」

「オレの誕生日はやっぱり母さん達のケーキがいい…」

「う~ん、でもさ、お母さんも作るの大変だし、私も忙しいからさ。どうしても駄目?」

「そういっても姉ちゃんは雅さんのためには作るんだろ?オレなんて姉ちゃんのケーキで祝ってもらえるのあと2回くらいしかないかもしれないのに」


その2回って何かな?



◇◆◇


「なんてことがあったんです」

「で、結局どうなったの?」

「あんまりしょんぼりするんで私が作りました」

「そっか。で、オレの誕生日は期待していいのかな?」

「え?」

「え?」


千里の誕生日も終わり、もうすぐ私の誕生日もやってくる。

そういえば、雅さんの誕生日っていつ?

たらりと汗が伝う。


「まさか、オレの誕生日知らない、………とか?」


まさか、まさか。そのまさかですけど。でも、私の誕生日がもうすぐって知っていての質問?

それとも、雅さんもまさか?


「私の誕生日も期待していいんでしょうか?もうすぐですけど、まさか知らないってことはないですよね?先に聞いてきたの雅さんですもんね?」


私も知らないから別に雅さんが知らなくても怒りもしないし不満もないんだけど、流れでこうなっちゃった。

私は気にならないけど、雅さんが気まずそうにしている。


「雅さん、私、雅さんの誕生日知りません。教えてください」


顎がかっくーんて落ちた。すごい、漫画みたいだ。


「どうしたんですか?あ、私の誕生日当ててみますか?」


瞼をぱちぱちさせている。ちょっと可愛い。


「ヒント要りますか?」

「要る、けど。えっと、オレのも当ててみて?」


とっかかりはどこにすればいいのかしら?まずはヒントを出して、私も貰おうかな。


「奈央はもうすぐって言ったけど、今月?来月?」


先に言われちゃいました。


「来月、です。雅さんは?」

「ん、オレも来月」


私と同じ7月なのね。


「う~ん、7月といったら、まず言ってみたくなる7日!」


どうかな。あ、笑顔がひくついた。もしかして当たったのかな。


「わあー、当たりましたか?」

「うん。あっさり当てられちゃったね。ということで、オレの誕生日は愛しい女に年に一度しか会えないといわれている彦星で有名な7月7日でした。まさか奈央もなんてことはさすがにないよね?」

「さすがに無いですね」


でも、予定日は7日だったそうだけど。予定通りだったら本気で織姫と彦星扱いされたかも。今更ながら予定日に生まれなかった私、えらい!自分を褒めちゃうよ。


「なら、1日?」

「残念。私の名前がヒントになるかな?」


名前の由来でもなんでもないんだけどね。


「奈央、なお…NAO、な、な、な。なな。7?な、奈。央、お、お、Oおう、ゼロ?ななゼロ?Oおう…ABCD……15。15日?」

「残念!でも惜しい」

「考え方は合っているってことか。じゃ、ゼロかな。10日?」

「正解!」


当ててもらったのが嬉しくて、隣に座る雅さんの首に腕をまわした。


「ふふ。近いですね」

「だね」


空気が甘くなる。こういうとき、流されてしまいたくなる自分がいる。

でもまだ後悔しないって言い切れない。なのに、先に進みたい気持ちもあって。

この矛盾に折り合いをつけるのが難しくなってきている。


「そんな顔、オレにしか見せちゃ駄目だよ」


覆いかぶさってくる雅さんを受け入れる。

私がいいって言うまで待ってくれる雅さん。


「どうしたの?今日はもうトロトロだよ」

「んっ、そんなこと、ない…」


否定した私を辱めたいのか、わざと水音を立てて聞かせてくる。

片手は胸の先を刺激してくるし、耳元で話していた唇は耳をハムハムとしてくる。舌先が耳の裏をチロチロとなぞる。


「ああんっ」


思考が停止していく。

言葉は体の反応と反対にいやっ、駄目っとかしか出て来ない。

視界にいつの間にか裸になった雅さんの体が映る。

快楽に浸った私の目はソレに釘付けになる。

やっぱり、無理。まだ怖い。あんなモノ入らない。


「奈央、そんなに見ないで。オレも恥ずかしい」

「ごめんなさい」

「そんなに見つめられると期待しちゃうから、さ」

「ごめんなさい」

「うん、わかってる。最後まではしないから。でも、お願い」


私は今日もソレを含んだ。

雅さんの表情を見ながら思った。


私にはまだ出来ないけど理解できた。自分をの初めてを捧げてもいい、捧げたいっていう気持ちが。




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