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続.藤沢雅2

いつものタイミングになってしまったが奈央との約束を取り付けることが出来て放課後デートとなった。


奈央の様子がおかしい。本人にどのくらい自覚があるのだろうか。一見いつもと同じなのだが…。

溜息が多い。不安の表れなのだろうか、やたらとオレに触れてくる。…間違ってもその気になったのだとは思わない。だって、奈央だしね。何か言いたいことがあるのか、心が揺れているのか、なんだろう。


さて、観察ばかりしていても進まない。

逃がさないように繋いだ手は離さない。うん、今日も可愛い。

少し問い詰めてみる。…ふ~ん。隠す気なんだ。でも、もうオレにばれてるって分かっている顔だよね。

…少し揺らしてみるか。奈央自身、後ろめたそうだし。ちょっと困った風を装って困ったような悲しそうな表情を作っちゃえば……ほら、もう。

っておい、そこでトリップ?このタイミングでそうくる!!

…さすが奈央。

ま、外だけどいいよね。誰も見てないでしょ。オレ、見られても構わないしね。



やばい。奈央、超可愛すぎ。

相談に乗るはずだったけど、オレが無理。

ホント、お願い。外でそんなエロい顔しないで。ああ、いつまでお預けかなぁ。



結局オレの部屋でいちゃついている。声を抑えながら体を震わせる姿に約束を破ってしまいそうになる。

でも、我慢だ。ああ、このままスルリと滑らせて…いや、いけない。あせって怖がらせないようにしなくては。

ぐったりしている奈央の色っぽさに、また勢いを取戻りそうになる。自制だ、自制。収まれ、静まれ、オレ。

ああ、若干の自己嫌悪。おかしい。奈央の問題に、相談に乗るはずだったのに。

う~ん、誘ってきたの奈央だし良かったのか?愛情を与え合うのはストレス解消にもなるし、満たされた感と適度の疲労と安心感でよく眠れるようにもなるし、これも解決の一つになるか。



なんとか紛らわすことにも成功し、身支度を整える。服を着た奈央はまだぼんやりぐったりしていて、ベッドにもたれ掛かっている。奈央に寄り添ってオレもまったりとしようなんて考えていると玄関のチャイムが鳴った。

築数十年の我が家にはインターホンがないので、部屋のドアを開け渋々玄関へと下りる。居留守を使いたいところだが、奈央がよしとしないだろう。

こんな時間だし、回覧板かなと玄関のドアを開けると、立っていたのは制服姿の少年だった。


「はい、どちら様で?」


この憎々しさを隠そうともしない、オレを敵認識している眼差し。ああ、コイツね。

オレの質問に答える気はあるのかな?


「奈央先輩を拉致ったのがおまえなのはわかっているんだ!」


物騒なこと言ってくれるねぇ。


「で、どちら様?オレ、君のことなんて知らないけど?」


せめて、自己紹介と挨拶くらいはしようよ。これを見ると、健人も千里もちゃんとしたご両親に育ててもらったんだなぁ、そんな事を思う。オレも将来、きちんと挨拶できる子に育てようと思う。あ、そういうことは奈央がするのかなぁ。


「ぱっとでのお前が奈央先輩を唆したのはわかっているんだ」


…オレが奈央の恋人だということは理解している…んだろうな。…よな?


「ちょっとばかし顔がイイからって、お兄さんからは数段落ちる!おまえなんて認めない。奈央先輩は俺が連れて帰る」

「一応褒めてくれてるのかな?奈央以外に褒められたって嬉しいとも感じないけど」


う~ん。この頭悪い子恥ずかしくないのか?コイツの後ろで近所のおばさんがニヤニヤしながら手を振っている。口が「かわいい彼女を持つと大変ね。頑張って」と動いた。それに軽く頭を下げる。

奈央と歩く姿はよく見られているし、母さんが「雅の嫁になるから私の娘になる子なんですの♪」なんて紹介することもあるから、こいつが吠えようともあまり問題ない。


「せっかく奈央と二人で居るんだから邪魔しないでよ」

「居るんだったら奈央先輩を出せ。返せ!」

「出さないよ。…奈央、裏口から帰したよ…って言ったら?」


なんてやっていると心配した奈央が下りてきてしまった。

コイツの失礼な態度に奈央が怒りと不快感を示した。

オレに対しては強気でも、奈央に対してはそうもいかないらしい。


奈央が泣いた。


今日は奈央から悩みを聞きだしてと予定していたが状況が変わった。

今日、終わらせる。

奈央も話を付ける気になったようだ。もう少し休ませてあげたかったけどこのタイミングで解決できるなら結構なことだ。

奈央の肩に手を回す。離したくないし、これが自然な姿であることを見せ付けたかった。

それにしても奈央の態度が容赦ない。

…片桐さんと「大沢君」とやらを呼ぶ。…また男。誰?オレ知らないよ。初めて聞く名前だけど。和維達からも聞いてないよ。ねぇ、奈央?「本田」といい「大沢君」といい、どいうことなのかなぁ?


片桐さんは別に構わないけど、奈央までが「大沢君」とやらに見とれている。

美形が好きなのはよ~っく知っているけど、今じゃないだろ。相手が奈央でもさすがにフザケンナと思う。嫉妬もあるけど、それは人としてどうよ。

大沢君が保護者で、別に奈央に恋愛感情なんかこれっぽっちも無いのも、見て直ぐに分かるくらい無いけどね。


面子が揃ったところで話し合いというか、奈央の心情吐露……が始まった。



それは…当初の悩みは予想とたがわなかった。

が、何でそういう気持ちに行き着いたのかオレにはさっぱりだ。

納得いかない。


これでもかというほどお互い愛し合っていると思っていたのに、しばらく前までしていた愛撫にオレの想いを感じ取ってくれなかったというのか。

オレの愛情表現って、疑わせてしまうほど分かりにくいか?


ね~え、奈央?どういうことかしっかり説明してもらうからね。覚悟してね。


次回も雅視点の予定です。

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