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受付嬢は愚痴ばかり。

ギルドの受付嬢の日常。

※愚痴注意※

愚痴っぽい話です。嫌な人は回れ右。

 当ギルドは登録窓口が1つに受注窓口が3つ、帰還報告窓口が1つに、買取専門窓口が1つの計6つ。

 買取専門は基本的に専門家が担当するから私たち受付嬢には関係ない。

 それ以外の5つをまんべんなくこなすことが出来れば受付嬢としては一人前だ。

 でもそれぞれ苦手な受付もあれば、なんでもそつなくせる娘もいる。

 受付嬢もそれぞれだ。

 冒険者の人柄がそれぞれなように。


 「だーかーらー!!本来の俺の実力をすればこのクエストはこなせるんだよ!!!なのにお前らの役所仕事のせいで受けられないわけ!!!!

お前の権限でどうにかできないなら上をだせよ!!!」


 ダーカーラーオ前ノレベルジャ死ンデ終ワリナンダヨ!!


 「ですから、私どもがレベルを設定している基本的な理由は冒険者の方々の安全の為です。上役うんぬんの話ではありません。」


 「だから、本来の俺なら間違いないわけ!なのにお前らが月にこなせるクエスト数やら、レベルが上がる条件やらつけるからこんな下位に俺のレベルは留まってるんだよ!」


 おおっと、話が無限ループだね、新人君。


 「はぁ、では、そのクエストをお受け頂くとして、その際の供託金と保険料をお支払い頂くことが出来ますか?」


 「は?」


 「供託金と保険料でございます。」


 「聞こえてるよ!なんだよ、それ。今までのクエストにはなかっただろ、そんなの!」


 「下位クエストでは手数料として頂いていたものを、上位クエストでは供託金と保険料として納付をお願いしております。

供託金は当ギルドに在籍されている全ての冒険者の方々や当ギルドにクエストを依頼された市民の皆様の万が一の事故や死亡の際の医療費やご家族へのお見舞金、災害などの緊急時の財源として積み立てております。

 保険料は今回受けていただくクエストで万が一高額な医療費が発生した場合などに備えての保険金として。保険料はご帰還頂いた際に窓口でご返金させていただきます。

 どちらも上位になればなるほど、額は多くなって参ります。」


 「はっ!!俺は怪我なんかしないから大丈夫だよ!」


 「残念ながら、お支払い能力がない場合もクエストを受ける条件に満たないと判断させていただきます」


 「なんでだよ!金はこのクエストを受ければ入ってくるだろ?!それで帰ってきてから払ってやるよ!!!」


 イヤ死ンダラ払エナイデショ。

 ギルドが冒険者に受付時にお金を支払わせる理由は二つある。

 ひとつは当然のごとく危険な仕事であり、怪我や病気はしょっちゅうのことである。それを冒険者個人が療費や休暇中の生活費を出していてはすぐに干上がってしまう。かと言ってギルドからお金を出していても、やはりすぐに財源は尽きるだろう。つまり言葉通り保険金、である。

 もうひとつが、冒険者を見極めるため。

 初期の冒険者はそれはそれはお金がない。

 一日の宿代に食事代、装備は誂えねばならないし、怪我などの回復用のアイテムも必要だ。それなのに受けられるクエストは内容も報酬も微々たるもの。

 冒険者として一攫千金、夢を抱いてきた少年には詐欺のようなものだ。

 だが少しずつクエストをこなしてレベルを上げていけば当然実入りも増える。面倒がらずにきちんと一歩一歩成長していけば、受付で支払う金額にごちゃごちゃ言う必要はないのである。

 また、レベルが上位なのにお金がない場合、それはギャンブル、女、私生活周辺になんらかの問題を抱えている場合が多い。

 つまり目の前の新人君は、レベルの上でも金銭上でもこの希望クエストには該当しないのだ。


 「全ての手数料および供託金、保険料は前払いの上でクエスト受付をしております。

例外はございません。」


 「だーかーらー!!絶対大丈夫なんだって。」


 おい、もう受付代わってくれよ。


 「まぁ、待ちたまえ。」


 無駄な美声とともに横から入ってきた冒険者を見て、思わず顔を顰めそうになる。

 金髪碧眼の見目麗しい最低野郎。おっと、平常心。平常心。


 「不躾にすまないね。横から聞いていて、思わず話かけてしまったよ。」


 「グルエスさん!!!!」


 お、新人君の目がキラキラしてる。

 当ギルドきっての上位冒険者グルエスに話掛けられれば、新人君としてはそうなるかね。

 テンション喜びマックスじゃん。


 「どうやら、聞いていた所によると、君の、あー、名前を聞いていいかな?『マックスです!!』あ、そうだ、マックス君のレベルがクエストを受けるに足りないと、そういう話だったね?」


 ぶふっ!!!

 やべぇ、噴出しかけた。

 マックス君テンションマックス!!!!


 「私は常々、このレベルというものに疑問を抱いていたんだよ。

 もちろんギルド側の人的被害を最小限に抑えたいというのはわかる。冒険者を危険にさらしたくないという親心もね。

 だが、若いうちは多少無理をしてでも新たな冒険に出たいものだし、それが成長に繋がるものだ」


 ご高説ごもっとも。それが本心からならね。


 「レベルはあくまで基準にすぎない。それはその冒険者の正しい評価かと言えばそうじゃないだろう。レベルは画一的だ。クエスト数、場数、成功数、それだけでは人は測ることが出来ない。

 とくにマックス君のような若者はね。」


 そうだね、あんたみたいな上位の冒険者でも中身は下種だもんね。


 つまりそうゆうことだ。

 この手の騒ぎは実は3ヶ月に一度は起きる。

 実力の足りない血気盛んな若者は上位クエストを受けたくて仕方がない。

 己の力への過信、報酬への欲望、名誉欲、周囲への見栄、理由は様々で複合的だが、結果は同じだ。

 無理をしてそのクエストを受けて、死ぬ。


 クエストを受けずに勝手に単体で突撃して死ぬこともあるし、上位パーティの捨て駒にされることもある。

 まれにギルド職員がもてあました結果、許可してしまうことも実は多々ある。


 そんな騒ぎの時、横から話に入ってくる上位冒険者は2パターンしかいない。

 兄貴分、親分肌の冒険者が新人君を嗜めて、冒険者というもの、レベルというもの、魔物というもの、たくさんの経験を話して育て見守ってくれるパターンと。

 今回みたいにレベルだけは上位の下種野郎が中途半端に夢を見させて新人を潰してしまうパターンと。

 何度も言うが、冒険者とは一攫千金の職業ではない。

 一歩一歩自分で育って行く地道な職業なのだ。


 「クエストを受ける際の供託金が払えないのなら、私が貸してあげよう。」


 「え??いいんですか?!」


 「あぁ、幸いにして私はお金なら沢山あるからね。それならギルドも問題ないだろう?」


 このくそ野郎。


 「ギルドとして冒険者同士の金銭の貸し借りについて何か言う権限はございません。

 代わりに支払うことは出来ませんが、誰かから借りたお金で供託金や保険料が支払われたとしてもギルドでは関知いたしませんし、問題なくクエストも受注して頂けます。」


 「レベルについても私が後見するということで見逃してもらえないかな?」


 本当にクエストについて行く気なんかこれっぽっちもないくせに。


 「かしこまりました。レベル7 上位冒険者グルエス様の後見ありとのことで、

 レベル4 中位魔物ケサザ3体 討伐クエスト受注を許可します。」


 「支払いは全部でいくらかな?」


 「供託金1500G、保険料3000G 合わせて4500Gでございます。」


 「よし、じゃあマックス君の上位クエスト受注をお祝いして6000Gを渡してあげよう。

返済は5000Gで構わないよ。支払って残った分は明日の為の英気を養うのに使いなさい。

報酬は10000Gだから、帰ってきて返してくれれば問題ないし、君もまた新たなクエストが受けられるだろう?」


 「グルエスさん・・・・!!!!」


 この下種野郎さん・・・!!!!



 受付を済ませてご機嫌な様子でグルエスとともに出て行く新人君。

 名前を覚えるのは無事帰ってきてからにしよう。



 受付窓口業務はだから嫌い。




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