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第一話 残酷

暗い空間にぽつんと佇んでいる


どっちが右なのか左なのか、上か下なのかわからない


ただ、自分の体が見えているだけ


怖くなって一歩後ずさった。


だけど、ピチャッという音に足元を見た


「血?」


しゃがみこんで手で触れようとした


「…っ!」


だが、血の中からいきなり手が出てきて、飛び退いてしまった


そして改めて周りを見渡したら


「!」


血の海が広がっていた


その中からどんどん人が出てきて「殺す」と言いながら近づいてくる


怖くなった少女は一目散に走った


追いつかれたくなくて、触れられたくなくて。


(あの人たちは…私が殺した人達…どうして…)


恐怖に襲われた。


走るたびに血が服に飛び散ってくる


助けを求めたいけれど声が出ない


そんな中目の前に二つの影が現れた


すごく懐かしい気配がして咄嗟に叫んだ


「母様!父様!」


少女の声が届いたのか二つの影はゆっくりと少女に近寄って来る


「何してるんですか!!さっさと逃げてください!」


少女がそう言っても二つの影は止まらない


仕方なく少女が近くまで行って二人の手を取って走った


「何してるんです!さっさと逃げますよ!

私が何とかしますから!!」


少女がそう言うと


「貴女に何が出来るの?必要のない子なのに。」


「!!」


ひとつの影がそう言った


振り返って影を見た少女は…絶望した


「貴女は…必要じゃないのよ」





少女を連れ帰った夜桜と青年


あれから14日たった


だが、なかなか少女は目を覚まさない


時々、サクラが様子を見に来ては看病をしている


夜桜はそんな光景を見ながら少し不安に思った


少女の怪我したところは紫色に少し変わっていた


こんなふうになるのは毒だけだ


夜桜は応急処置として毒を抜いた


(それでも異常だ。)


そう思った夜桜は青年とサクラに任せて上司の元へと行った



とある部屋の前についた夜桜は中にいる人物に声をかけた


「土方、居る?」


夜桜の声に中の人物は「入れ」と言った


夜桜は何気なく襖を開け、中に入って座った


「まだ目が覚めないのか?」


夜桜の目の前の人物が聞いてきた


夜桜は目を伏せ


「えぇ…まだ覚めないわ。」


そう答えた。


夜桜の答に人物はため息をはき眉間に皺を寄せた


「お前らが連れてきたんだ。

きちんと看病してるのか?」


「してるよ。あたしも総司も。

それにサクラだってここに来ては看病を手伝ってくれてる。後は、あの子が目を覚ますだけ」


夜桜は感情の無い声で言った


元々夜桜は目の前の男の事は好きじゃない


だけどこうして来ているのは少女をここで看病したいからだ。


「…ハァ

お前らの事に関してはとやかくは言わねぇ。だが、もしあいつが敵だったらどうする。」


「敵じゃないわ。あの子はあたしの血縁者よ。

敵だとしても、あの子はあたしには牙を剥かない。」


夜桜は少し怒気を含ませながら言った


そんな夜桜を男は鼻で笑った




「ねぇ。お姉さん…大丈夫…かな…?」


「大丈夫だろうね。」


「…気になるの?…夜桜さんの事と、このお姉さんの事…」


サクラは一緒にいる青年に話しかけた


あまり話さない二人だが、こうして一緒に居ることもある


ただ、夜桜が居るときは夜桜とだけサクラはめいいっぱい話すのだ。


「…早く目が覚めてくれればいいのに。」


そう青年が呟いた途端


「うわぁぁあああああああ!!」


突然今さっきまで寝ていた少女が叫んだ


吃驚した青年とサクラはそれぞれ違う行動をとった


サクラは部屋の端に行き、青年は少女の顔を見た


少女の目は虚ろで視界にとらえた青年に何を思ったのか、いきなり起き上がり、少女の周りには無数の白い光が集まって、少女の手に白い光が一つあたったと思ったら、無数の白い光は少女の手に集まって刀の形を象っていき、少したって光がとけ、刀が露になった。


そしてそのまま少女は青年に向かって刀を降り下ろした。


ガキン!!


その場にはその音が響いた。


青年は自分の刀を鞘から抜いて、斬られぬよう防御したのだ。


だが少女は、関係なく青年の腹をおもいきり蹴った


庭に落ちた青年を虚ろな目でとらえ、後を追うように少女も庭に降りた。




「さっきの叫び声といい、音といい…

何かあったんじゃねぇのか?」


「行ってみるとしようか…」


さっきの叫び声や、音が気になったのか部屋にいた二人は、聞こえてきた方へと向かった




二人が向かった場所は凄い事になっていた


「ありゃま…」


夜桜は完全に無意識に呟いていた


その光景は…


少女が難いのいい男二人に押さえつけられていて、青年は驚いているのか、その場に座り込んだままだった


「何があったの?総司」


夜桜は座り込んでいる青年に話しかけた


青年…もとい総司はさっきあったことを話した


すると夜桜は押さえ込まれている少女に近づいた


「ふ~ん…成る程ね…」


夜桜は少女の胸元を見て小さく呟いた


「永倉、原田、離してあげて」


「でもよ、また何かするかもしれないし…」


「大丈夫よ。任せなさい」


夜桜は押さえ込んでいる二人に言った


すると、渋々だが二人は押さえ込むのをやめた


そして夜桜は少女に近づき、触れた


「貴女は首から下げているこれに何を誓ったの?その誓いはどうしたの?」


夜桜はゆっくりと少女に話しかけた


「貴女は今何を見ているの?大丈夫…怯えないで。あたしはあなたの敵じゃない。あたしにとって貴女は“必要な子”だから」


夜桜が静かにそう言うと少女の目はハッキリと夜桜をとらえ、そして涙を浮かべた


「よざ…くら…」


少女はそう呟くと目を閉じてパタリと倒れた


少女が握っていた刀は押さえ込まれたときに手からはなれたのか、既にそこにはなかった




同じ頃…とあるところでは…


「まだあいつは帰ってこないのか!?

今日で14日目だぞ!?」


ある男が頭をかきながら言った


すると、その男の前にシュタッと何者かが降りてきた


その人物が、男に言った


「月光様。姫の居場所がわかりました。」


「そうか…行くぞ」


「はい」


男はその報告を聞いてその人物を連れて、

“姫”が居る所まで行った




「夜桜さん、お姉さんは大丈夫なの?」


サクラはずっと少女の看病をしている夜桜に話しかけた


「大丈夫よ。今は何の夢を見ることなく、ゆっくり眠っているだけ。明日の朝には目を覚ますでしょうね。」


夜桜は微笑みながらサクラにそう言った


安心したのかサクラは突然立ち上がり


「わたし、帰るね?また明日…来る…から…」


そう言って帰っていった


「…あの子の力、奪いたいくらいだよ」


夜桜は誰にも言うのではなく自分自身にしか聞こえない声で憂いに満ちた顔で静かに呟いた。




(ここは…)


少女はまた暗闇の中にいた


だが、さっきとは違い何故か凄く落ち着く雰囲気になっていた。


不思議に思い辺りを見渡した


でも、何もない。


どういうことか調べようとした少女は一歩足を踏み出した。


すると、何故か一瞬にして辺りは真っ白になり、

何事かと上下左右を何度も見回した


「クスクス…」


いきなり笑い声が聞こえてきた


少女は笑い声が聞こえた方へと振り向いた


「っ!…母様…父様…」


少女は少し怯えた声を出してしまった


その事に苦笑をした二人は少女の近くに来た


「る~り。そんなに怯えないで?」


「会ってそうそう失礼な奴だな~

挨拶くらい教えただろう?」


突然話しかけられた少女は息をするのも忘れ、二人をジッと見詰めていた


少女は唾を飲み込み、二人になんと言っていいのかわからず口を開けては閉じたりを繰り返している。


その様子に母親はきれいに笑い、


「無理に喋らなくていいわよ。ここに連れてきたのは私たちなんだから。」


そう言った。


少女はまた、拒絶の言葉を言われるかもしれないという恐怖に襲われた


だが、二人が言ったのは予想してなかったことだった。


「ごめんなさいね?貴女に酷いこと言って…」


「え?」


「あの時はああ言うしかなかったの…

貴女を助けるために。」


「必要な者は死に、そうでない者は生き延びる

これはこの世の掟なんだ。必要とされた者は、戦で死に、必要じゃない者は、逃げて生き延びる」


「私達はこの事を知っていた…

だからワザとあんな風に貴女に言ったの…

そしたら貴女は生き延びるから…

だから本当にごめんなさいね

貴女の事を嫌いになった訳じゃないの。

わかって…」


「…っ」


少女は二人に言われたことに涙を流した


止めどなく溢れる涙を母親は拭っている


その手を取り、自分の頬に寄せ、泣き止むまでそうしていた。


父親はなにも言わず少女の頭をゴツゴツした手で撫でていた



しばらくして泣き止んだ少女は二人の目を真っ直ぐに見詰めた


「母様、父様、今…幸せですか?」


突然の質問に二人は顔を見合わせた。


だが、二人は微笑み、


「瑠璃…えぇ幸せよ

だから瑠璃…貴女も、今居るべき所に戻って幸せになりなさい。私達は貴女をずっと、見守っているから。」


そう言って少女…瑠璃の手を握ってそう言った


「さぁ、私達はもう行くわ。またね、瑠璃」


「はい、母様、父様…お幸せに」


瑠璃は二人に最高の笑顔を見せて二人が消えると同時に眩しい光に包まれた



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