ヒットアンドアウェイ
「アクアアランス!」
「アクアアランス!」
「アクアアランス!」
もう何回この魔法を使ったのだろうか。
水の精霊ウンディーネの力を使い、強力な水の槍を飛ばす精霊魔法。
西大陸の精霊の力が干渉しにくい東大陸。氷系の魔法よりも、水系の魔法の方がまだ東大陸でも有効のような気がして、ゴブリン――小鬼に連打している。
最初はただの放水だったが、何度か使ううちに魔法の熟練度が上がったのか、威力が向上。
「ぐぎゃあぁぁ」
逃げる、魔法、逃げるの繰り返しで、ようやく小鬼を1体倒せた。先ほどと違い、一撃で倒せないと認識できていれば、戦い方はそれなりにある。
まぁ、俺が1体倒す間に、真が残り3体を瞬殺していたが。
「おめでとう! ゴブリン1体倒せたじゃないか」
「清継様、おめでとうございます」
これは喜ばれているのか、それともバカにされているんだろうか。
「なんだろう。完全に修行し始めた頃の気分だ」
「途中から、清継様の魔法が安定しておりました。早くも東大陸に順応し始めているんではないでしょうか」
「そうか?」
本当にそうだろうか? そもそも、俺の魔法は精霊の力を行使しているわけだから、東大陸に順応ってのは違う気がする。
「まぁ、とにかくよかったじゃない。結構魔法連打してたし、暫く馬車で休んでおきなよ」
確かに真の言う通り、魔力も集中力もかなり消費してしまった。このままだと次の戦闘は小鬼1体倒せるかどうか。
「そうだな。悪いが少し休ませてもらうよ」
言って馬車に入り、荷物から薄い毛布を取り出す。
やっぱり疲れていたのか、すぐに夢の世界に落ちていった。
馬車に乗っていたはずなのに、何故か船の上に居る。
「清継様ー! どこを触っても良いんですよ。ほら、もっともっと」
「ちょ、ちょっと優衣さん! 俺の手を持って、何を触らせてるんですか!」
そして、新手の少女がやって来る。
「きよちゃーん! 玲奈ちゃんだよー!」
「いきなり抱きつくなー!」
「はーい、玲奈ちゃん脱いじゃいまーす! ピッチピチでスッベスベのお肌だよー!」
「何でだよ!」
今度はちっちゃい女児が来た。
「ウチもおるよー!」
「ダイブするなー!」
「ちゃんとウチのコト受け止めてねー! 将来のお嫁さんなんだからねー!」
「うどわぁぁぁぁぁ!」
思いっきり叫んで、身体を起こす。どうやら夢だったようだ。
最近、いろいろと刺激が強いことがありすぎたからだろうか。ありえない夢だった。
「清継様、どうされました?」
ふと横を見ると、同じ毛布に優衣さんが包まっていた。
「えっと……何してるんですか?」
「えっ? もちろん添い寝です」
あの夢は、この優衣さんのせいだった。