東大陸到着
「ごちそうさまでした」
俺に少し遅れて、真が朝食を食べ終わる。
どうやら俺達が食事をしている間に、東大陸へ着いたようで、既に船は停止していた。
「よし、行くか」
「うんっ、久しぶりだねー」
魔王退治の修行が明け、6年振りの帰国。とはいえ、これからが本番。この修行の成果を発揮し、魔王を倒さないといけない。
「あんたらが一番最後だよ。気を付けてな」
昨晩いろいろあって、荷物を全くまとめていなかったので、かなり出発が遅れてしまった。
声をかけてくらた船長さんに礼を言い、桟橋へ。
ずべしっ!
船を降りて早々、大きな旗が視界に入り、盛大にすっころんだ。
『おかえりなさいませ、跡部清継様』
黄色の旗に、大きく青字で書かれていた。
「今度は一体何なんだよ」
「いやー、清継は人気者だねー」
真の冗談が全く笑えない。
そして、その旗の下。また見知らぬ女性が凛と立っていた。
「おかえりなさいませ、清継様。長い修業の旅、御苦労様です」
昨晩の2人組に似た着物の女性が俺に声をかけてくる。今度は、清継様ときた。残念ながら、俺は様付けで呼ばれるような者ではないのだが、どういうつもりなのだろうか。
「とりあえず、堅苦しいことは抜きにして、その旗しまってもらえます?」
聞きたいことは山程あるが、最優先事項はこの旗の回収。かなり恥ずかしいんだが。
「はい。清継様の望むままに」
そう言って、手際良く旗を片づける。
「あのー、あなたは清継とどういう関係でしょうか?」
旗を片づけ終わったのをみて、真が気になる質問をする。
「申し遅れました。私、大六天神社の巫女をしております、宮城優衣と申します。
清継様の許嫁ですので、以後お見知りおきを」
あ、やっぱりそう来るか。
「……って、巫女なのか?」
「はい。土徳の神に仕えております」
巫女――確か、神に仕える無垢な女性……のはずなんだが、許嫁など許されるのだろうか。
「あのさ、清継。土徳の神って何?」
「あー、真は知らないか。
西大陸は地水火風の四精霊が魔法の基本とされているんだけど、東大陸は木火土金水の五行思想が魔法の基本となっているんだ」
「へー、そうなんだー」
俺は西大陸で精霊魔法を専攻して修業していたこともあり、一応の知識はある。
まぁ、元々俺も真も東大陸生まれなんだが、長く西大陸に居過ぎてしまった感がある。
「で、その土の巫女さんが、何で俺の許嫁なんだ?」
本人が一切知らされていない許嫁。やっと、話ができそうな人物が出てきた。
「そうですね。そのお話については、私よりも陽莉様からの方がよろしいかと思います」
跡部陽莉――俺の婆ちゃんだ。この巫女さんみたく、とある神社で巫女をしていたと聞いたことがある。
「わかった。婆ちゃんは家に居るんだな?」
「はい。私が道中案内させていただきます」
案内も何も、自宅に帰るだけなんだが。まぁ、長らく帰ってなかったから、ここは素直に従おう。
「わかった。よろしく頼む」
「畏まりました」
真がちょっと嫌そうな顔をしているが、3人で俺の家に向かうことになった。