リセット
眩しい……。
目が覚めると、ベッドの上だった。いつの間にか、眠っていたようだ。
でも、今は東大陸へ渡る船に乗っていたはず。船代をけちって、安い大部屋にしたのに、何故俺はベッドで目覚めたんだろう。
「清継ー! よかったー、ちゃんと目覚めたんだね」
ずっと介抱してくれていたんだろうか? 体を起こしたと同時に、真が抱きついてきた。
「おー、真おはよー。何で俺はベッドで寝てるんだっけ?」
「覚えてない?」
「何を?」
昨日、何してたっけ? 星空に感動したのは覚えてるけど……。
「んー……忘れてるなら、その方がいいかもね」
真がそう言うのであれば、思い出さない方が良いこともあるんだろう。
「あー、腹減ったー! 飯行こうぜ」
「うん。食堂に行こう」
ベッドから降りても、どこか体が痛いとか、動かないってことはなかった。
個室を出た時に、部屋のプレートを見ると『医務室』と書かれていた。
昨日、何かあったんだっけ?
「お兄ちゃん達、何にするんだい。Aコースはパンとスープ。Bコースはサンドイッチだよ」
食堂のおばちゃんが声をかけてくる。
どうやら俺はかなり寝ていたらしく、時計は9時を過ぎていて、食堂にほとんど人は残っていなかった。
「僕はAコースにするけど、清継は?」
「じゃあ、俺はBのサンドイッチで」
おばちゃんからサンドイッチと水を受け取り、テーブルへ。
一口食べると、海の香りが口いっぱいに広がった。
サーモンだろうか? 流石、海の上。魚の鮮度が良い。
……魚。そう、魚。
「うぉぉぉぉぉー!」
「何? 清継どうしたの? うおと魚をかけたギャグなの?」
相変わらず寒い真は無視。とにかく叫ばずにはいられない。
「思い出したー!」
「げっ」
「真! 今のリアクションは何だ? てか、昨日の2人はどーなった?!」
俺の思い出した宣言で、真があからさまに困った顔をしている。何か言えないことがあるんだろうか。
「あー、思い出しちゃったか」
「思い出したさ! 思い出したくなかったけどな!」
2人の少女、玲奈と茜ちゃん。2人も俺の許婚だとか言っていた。
「で、どーなったんだよ」
「……清継が急に倒れちゃって、その様子を見た2人とも動揺しちゃって」
「それで?」
「今日のことは無かったことにして欲しいから、僕に上手く誤魔化して欲しいって言って、帰って行ったよ」
いや、無かったことにって。許嫁のことも無かったことにしてくれるなら、俺は大賛成なんだが。
「それで、初対面ということにして、また改めて会いに来るって」
「いや、もう勘弁してくれー」
初対面からやり直しって、こっちはどうすりゃいいんだよ……。
また目まいがしてきた。