将来のお嫁さん?
「えっと……お嬢ちゃん。清継の将来の嫁ってどういうことかな」
おぉ、真が意外と冷静だ。俺は急にいろいろ起こり過ぎたせいか、めまいがして考えがはっきりしない。
「そのまんまの意味やで。今はまだ14歳やから結婚できへんけどな」
「はっ……?」
いや、全然理解できないんですが。
「あー、とりあえず説明してくれ。まず、あんた達はどこの誰なんだ?」
「ちょっとー、茜ちゃんだけじゃなくて、きよちゃんのお嫁さんは玲奈ちゃんもだよー」
また、わけのわからないことを……。
こっちの自らを玲奈ちゃんと呼ぶ少女が混ざると、ややこしくなる。
「とりあえず、茜ちゃんだっけ。ちょっと説明してくれ。で、そっちの玲奈ちゃんは少し待機」
「玲奈ちゃんだなんて、玲奈でいいよー」
何で初対面なのに、いきなり下の名前で呼び捨てしないといけないんだろうか。
「じゃ、じゃあ玲奈……は少し待機で」
「はーい」
少し躊躇したが、従わないと面倒なことになるので、とりあえず望み通りに呼んでみた。これで少しは話しが進むと思い、後から来た茜ちゃんの話を待つ。
「うーん、どこから話したらえーんやろ? ウチ、こーゆー説明苦手なんやー」
「玲奈ちゃん説明するよー」
真と顔を見合わせる。とりあえず、まともな説明になるか疑問だが、話を聞くことにした。
「玲奈ちゃんと茜ちゃんはねー、きよちゃんのお嫁さんになるのー」
凄く楽しそうに話す玲奈。月の光でしか顔が見えないが、作った笑顔などではなく、本当に嬉しいようだ。
けど、頭は悪そうだ。さっきから何回同じ話をするんだろうか。
「玲奈さん、どうして2人は清継のお嫁さんになるんですか?」
なるほど。真のように質問して誘導していけば良いんだな。
「それはねー、そーゆーことになってるからだよー」
「どうして、そうなってるんですか?」
辛抱強く真が質問する。
「お家同士で決めたんだよー」
……ん? 家同士で嫁を決めた? それって、いわゆる許婚ってことか? そんな話聞いたことないぞ。
しかし、玲奈の隣で茜ちゃんが大きく頷いている。
「えっと、それって許婚ってやつだと思うんだけど、俺と玲奈が許婚なの?」
「そうだよー」
――っ! あっさりと肯定されてしまったが、なかなかの衝撃だ。
だが、しかし。こんな真夜中の海の上で、初対面の怪しい少女に許婚と言われても、すぐには信じることが出来ない。
「ちょっと、ウチもあんたの許婚なんやからね!」
そうだった。もう1人、俺の嫁と言っている少女が居た。
「えっと……許婚が居るってのも初耳なんだが、さらに俺は許婚が2人も居るってことなのか?」
とりあえず、家に帰ったら親族に即問いただそう。
もしも、この少女たちが言っていることが真実だった場合、出来ることなら親父を殴ってやりたいところだ。
「ううん、違うよー。2人じゃなくて、5人だよー」
……俺は玲奈の言葉を聞いて、めまいが酷くなり、視界がブラックアウトした。