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キスしたら巫女さんと結婚  作者: パセリ
1.知らぬ間に許婚とやらが居ました
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海の上に浮かぶ少女

「はぁーい」


 声をかけてきたのは、月の光に照らされた長い髪と、その声色から少女と思われる。


 だけど、ここは夜の海に浮かぶ船の外。

 そこそこ大きな船なので、海面までかなりの高さがあるはずなのに、甲板と同じ高さに少女が浮いている。

「とぉーっ!」


 俺達が驚き戸惑っているうちに、謎の少女が少しかがんで、大きく跳ぶ。

 よく目をこらすと、浮いていたわけではなく、海から突き出た柱のようなものに乗っていたようだ。少女が跳んで離れた後、その柱がどんどん海面に沈んでいく。


「きよちゃーん! おっかえりー!」


 謎の少女が叫びながら、俺に向かってダイブする。

 きよちゃん? 俺か? 俺のことなのか?


「ごめん!」


 ごしゃぁっ!


 そこはかとなく嫌な予感がしたので、とりあえず避けてみた。一応、謝ったから許して欲しい。

 その結果、壮大な音を立てて、謎の少女が顔面から甲板にダイブしたけど、大丈夫だろうか。


「あの……大丈夫ですか?」


 真がおそるおそる声をかける。

 少女がゆっくりと上体を起こす。


「えーん。きよちゃん酷いよー」


 とりあえず、おそらく俺のことを指しているであろう、『きよちゃん』をやめて欲しい。

「知り合いなの?」

「いや、こんな真夜中の海の上でダイブしてくるような知り合いは居ない」

「そうだよね……なっ! 清継離れてっ」


 いきなり真が、俺と謎の少女の間に割って入る。

「足を見て! こいつ、セイレーンだよ!」


 セイレーン――西の海に出没する妖魔。その歌声で船を沈めるという。

 謎の少女の少女の足を見ると、その下半身が魚の尾ひれになっていた。

「清継! 今こそ修行の成果を出す時だよ!」

「違うわー!」


 剣を抜いて臨戦態勢になっている真の頭がはたかれる。

 さっきまで倒れていたはずの少女が、いつの間にか真の横に立っていた。2本の足で。



「ちょっとー! 誰がセイレーンよ。玲奈ちゃんはれっきとした人間よ、人間。

 それもピッチピチの16歳。水も滴るイイ女よ」

「まぁ海から出てきたし、水も滴りますよね」


 ……


 場が凍る。真の不用意な一言で、静寂が周囲を包み込む。

「いや、あの……魚だけに、ピッチピチですよね」


 ……


「まぁ、それはさておき。きよちゃんったら酷いんだからー」


 言いながら、ちょっとずつ俺に近寄ってくる。

 完全に無視された真が落ち込んでいるが、今はそっとしておこう。


「えっと、俺のことを知っているみたいだけど、誰だっけ?」

「えー! きよちゃん玲奈ちゃんのこと忘れちゃったのー?!」


 玲奈ちゃんと名乗る少女。海から出てきたはずなのに、もう髪の毛が乾いている。

 そして、東大陸の伝統衣装――着物と呼ばれる服を着ている。膝上くらいまでスカートのように生地があり、そこからすらっと綺麗な2本の足が見えている。


「ごめん、覚えてないや」

「きよちゃんと玲奈ちゃんはー、何度もデートしたんだよー。夢の中でー」


 いや、夢の中かよ。

「えっと、夢の中って?」

「え? そのままの意味だよー。はじめましてだよー」


 だめだ。この少女の話が全く理解出来ない。

「もー、玲奈ったら……だから1人で行くなっつったのに」


 また新しい声が増えた。

「どーも、はじめましてっ! ウチは不知火茜、14歳! あんたの将来の嫁なんで、よろしくっ!」


 ……


「えーっ!」


 いつの間にか、着物姿のちっちゃい女の子が立っていた。

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