6年ぶりの帰国
長編小説初執筆となります。
「OVL文庫大賞」のテーマ(異世界×ハーレム)を見て、書こうと思いました。
小説家になろう自体も、初めての利用となりますので、問題などがありましたら御連絡願います。
作品に対しての、御意見、御指摘などについても大歓迎ですので、よろしくお願いいたします。
「6年振りかぁー。終わってみると、修行って言っても良い思い出だねー」
「どこがだよ! 地獄の日々だったじゃねーか!」
今は西大陸から東大陸へ向かう船の大部屋。6年間一緒に修行した、戦友とも言える真のふざけた発言に対して思わず叫んでしまい、周りの乗客に睨まれる。
2人して視線から逃げるように甲板へ出ると、視界いっぱいに星の煌きが映った。
「すごい星空だねー」
「あぁ、魔王復活なんて嘘みたいだな」
「そうだねー。魔王復活のこととかどーでもよくなるねー」
「いや、流石にそれはだめだろ」
真の言う『魔王』が復活したとされるのが、今から十数年前。それ以来この大地に、妖魔と呼ばれる人型の魔物が出没するようになったらしい。
そして、俺が10歳になった時。西大陸の勇者育成学校とか言うところへ、留学という名の修行に出されてしまった。
何でも俺の家――跡部家は、世界がピンチになった時に頑張らないといけない家系なんだとか。家のしきたりだか何だか知らないけど、当事者としては全く納得できなかった。
10歳にして、見知らぬ大陸で魔王を倒すための修行。我ながら6年間もよく頑張ったと思う。
「さっきの話だけど、やっぱり清継と僕の師匠が違ったからじゃないかなー?
修行はきつかったけど、結構楽しかったよー」
親戚の長谷川真。俺が修行に出されることになった時、「清継と仲が良かったから」というだけで一緒に修行に出された可哀想なやつ。
俺のせいで巻き込んでしまったと、申し訳なく思っていたけど、本人が楽しかったと言ってくれているので、正直助かる。
「あー、剣士側は身体修行が中心だったもんなー。俺ら魔法組は精神修行が中心で本当に地獄だったぜ」
西大陸へ行ってすぐ。適正テストと称して、いろんな検査をされた結果、真は小剣。俺は精霊魔法を学ぶことになった。
その修行は、今思い出しても嫌になる。
精神面を鍛えるためだと、何が入っているかわからない箱の中に手を入れたり、大量に蟲が入っている部屋に閉じ込められたり。街中で大道芸の真似事もさせられたな……。
おかげで、精霊魔法を使う時の集中力は養われた。まぁ、師匠のような「何があっても冷静沈着」というのはマスターできなかったけど。
「6年ぶりのおうちだねー」
「そうだな」
久しぶりに東大陸のご飯が食べれる。実は、それが一番楽しみかもしれない。
「あ、そうだ。実はもうすぐ日付が変わるんだよ」
「えっ? もうそんな時間なのか? そろそろ船内に戻ろうか」
もう春とはいえ、夜中……しかも海の上。今まで気づいてなかったけど、意識してしまうと、結構寒い。
「待って待って。日が変わるってことは、清継の誕生日じゃない」
「あー、そうか。これで俺も16歳かー」
「そーだよー! おめで……」
なんだ? 真が口を開けたまま、急に固まった。
振り返って、真の視線の先を見ると……船の外に少女が浮いていた。