表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 王生らてぃ

 今年も春が来た。


 春は嫌いだ。


 だって、桜の花が散ってしまうから。


 出会いの季節、スタートの季節なんて人は言うけれど。


 私から見れば、立派な『死』の季節に見える。


 きっとそれは、私の価値観がおかしいから。


 悲観主義、なんて巷では呼ばれてる。


 でも、仕方ないじゃない。


 だって、私はずっと病院にいるんだから。


 白い病室、白い服、白い布団。


 何もかも『白』の世界に慣れていた私は、他の色が嫌いだ。


 だから、桜も嫌いだ。


 嫌いな色を、年に一度は私の視界に放り投げるから。


 だから、春も嫌いだ。


 嫌いな色が、年に一度は世間にあふれるから。


 あぁ、死にたい。


 一体、何度そう思っただろう。


 こんな場所にずっといるから、死にたくても死ねない。


 勝手に、大人たちが私の命を永らえさせるから。


 私が小さいからって、判断能力が無いからって。


 私はきちんと、私だから。


 自分の命くらい、好きにさせてくれませんか?




 その時、ふと、気付いた。


 きっと、桜もそうなんだろうな。


 桜もきっと、春が、桜色が、嫌いなんだ。


 だから、それを早く散らせて、自分から切り離したいんだ。




 そう思った時から、私は3日間だけ、桜が、春が好きになった。


 私が生きていた中で、さいこうの3日間だった。

「一文字物語」用に書き下ろした短編です。

ぎりぎり499文字。危ない危ない。


春も、桜も、きっと皆さん、好きでしょう。

でも、そういう人ばかりじゃないんだってこと、忘れないでください。

中にはこういう風に、春が嫌いな人もいるのです。


でも、そんな人も、いつかは好きになれるのです。

何かを嫌いなまま一生を終えるのは、とても辛いことです。


少しでも、ひとつでも多く――。


この作品が、多くの皆様に読まれますように……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして。読ませていただいたので、感想を置いて行こうと思います。 ちょうど私の名は桜月で、桜は好きなのですが、 この主人公と同じで、死を連想する花と感じています。 一般からすると、椿と…
[良い点] 言い回しや描写が美しいです。 [気になる点] 悪いというか少し気になったのですが ずいぶん「だから」が多くありませんか? [一言] 良い点でも言ったとおりですが言い回しがとても綺…
2012/06/30 22:39 退会済み
管理
[良い点] 「さいこうの三日間」の引きが秀逸だと思います。 三日後に桜が枯れたのか、命が枯れたのか……。想像力を掻き立たされます。 [気になる点] 言葉の使い方が大人っぽいのに、どうも主人公は幼いよう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ