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咎人のRequiem  作者:
2/3

episode1 『男と男』



―――――――――――――――――




『あー、やる事ねーな』


古めかしいソファーに座りながら呟いた。


さっき任務から帰ってきたばかりで体が疲労困憊の上、

あいにく、いつも「お疲れ様ー」といって紅茶を出してくれる少女が外出中のため、

自らの喉の渇きを癒してくれるものがない。

それも自分で作ればいい話なのだがこの男にはそういったやる気は微塵も感じられない。


『おいヴァン、紅茶でも淹れろ』


「なぜ俺がおまえごときの為に茶を淹れなければいけない」


ヴァンと呼ばれた青年は反対側のソファーに座り、膝の上に広げた本を読みながら答えた。

一般人と同じ行動をしても何故か絵になってしまうのはこの美貌ため。


『少しは人間らしい事してみろよ

 近頃の女の子は家庭的な男が好みらしいぞ』


「女などには興味がない

 ユーリ、冗談はその黒髪だけにしろ」


『おまえなー黒のどこがいけねーんだよ

 好青年っぽくていいだろうが』


「美学の欠片も感じられん」


それはおまえの趣味の問題だろ?

不遜(ふそん)反駁(はんばく)を仕掛けたところでユーリは辺りを見回す。

大量の古い本が放つ独特の異臭が満ちる室長室。

今は2人しかいないため普段からだだっ広いと感じていたこの空間が余計に広く感じる。


『なんで誰もいねーんだろな』


「この前の話を聞いていなかったのか?

 今日明日は国との会合で上の連中はいない、あとは全員任務だ」


どこか威圧感のある翡翠の瞳がユーリを捉える。


『へぇー、それは初耳だ』


「もはや愚かとしか言いようがないな」


自分の迂闊さを少し憎みながらもここで堪える。

それが一般社会における大人というもの。

この戦闘しか能がないお馬鹿ちゃんと張り合っていてもらちが明かないのは重々承知だ。


『そんじゃ俺は外でのんびりしてくるとするか』


そう言ってソファーから立ち上がりいかにもダルそうな足取りで部屋のドアまで向かう。


「おまえの、のんびりは新鮮な空気を吸って気分を立て直す事か?

 それとも新鮮な女を捕まえて遊ぶ事か?」


『そんなの決まってるだろ、後者のほうだ』


口角を上げ、自慢げに言い切る。

それにヴァンは冷ややかな視線を送る。

ユーリはその視線を無視してドアノブに手をかけた。



――――次の瞬間、ドアが勢いよく開く。


案の定、それに対処できなかったユーリの顔面にドアの尖っている部分がクリティカルヒットし、

そのままユーリは後ろに倒れこむ。


『俺の顔がぁ!』


悲痛の声が部屋中に響き渡る。

ヴァンも少し目を見開いてその様子を見据える。


「あれ、何か当たった?」


するとドアの向こう側で2人のよく知った者の声が聞こえてきた―――――




(続く)


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