プロローグ
澪が送るシリアス&コメディー要素も入った作品です。
至らない部分も多々ありますが温かい目で見守っていただければ幸いです!
人は神に裁かれ、神は罪のいう概念を持たない
じゃあ何故人は断罪を受けるのか
そんなの決まってる
それがこの世の“理”
それ以外の何物でもない
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夜の静寂なか
1人の青年は月下にそびえ立つビルの頂にいた。
『そろそろだな・・・』
意味深な言葉を吐き捨て、自らの黒髪を手で撫でる。
そしてその手を腰にある双剣へと移す。
同時にあたりに爆音が響いた。
それを聞いた青年はビルから一気に駆け下りる。
そのまま重力を無視して地上に降り立つとすぐに双剣を構える。
『3・2・1』
「どけーッ!!!」
青年の口から紡ぎだされる言葉とかぶる怒声
前方から迫ってくる鬼神の如き男
『・・・残念、ゲームオーバーだ』
醜い音とともに辺りに鮮血が舞う。
男はそのまま地面に倒れこんだ。
赤黒い液体が冷めた地面を覆っていく。
青年はそれに一瞬視線をやったもののすぐに目を閉じる。
『任務完了』
そう呟いて両手の双剣をしまい、路地脇の壁にもたれかかる。
いつの間にか月が雲で隠れていた。
明かりがないこの辺りにとって少々酷な状況ではある。
「何をしている・・・」
すると暗闇の中から甘美な声が聞こえてきた。
青年はその声の主に視線を移す。
『おまえを待ってただけだ、他に何があるんだよ』
「それはこっちの台詞だ
殺り終わったらこっちまで来い」
2人の青年は互いに睨み合いながら言葉をかわす。
『その前になんでこいつ逃がしたんだよ
おかげで、俺が始末するはめになっただろーが』
「知らん、勝手に逃げただけだ」
『つまり逃げられたんだろ?』
「一度で理解しろ、逃げたんだ」
すると、黒髪の青年はこの言い合いがいかに馬鹿馬鹿しいか気づいたのか、
もう片方の青年に怪訝な表情を向けながらも話を止めた。
『で、この死体はこのままでいいのか?』
「日が昇る前に回収班が撤去してくれる
俺達はこのまま本部に戻ればいい」
『へいへい、了解』
「なんだ、不満でもあるのか?」
探るような声に黒髪の青年は苦笑した。
『別に・・・ただ、人殺しの後の気分は最悪だなと思ってさ』
「ふん、相変わらず甘い奴だ
俺達はただ上の命令に従ってればいい
そんな感情は無意味だ」
『俺はおまえみたいな戦闘馬鹿じゃねーの
ピュアな心の持ち主なの』
「よく言う、ここまで八つ裂きにしておいて」
青年は淡々と呟き、地に横たわっている男を一瞥した。
『だって完璧に殺らねーと、おまえ怒るだろ』
「・・・当たり前だ」
黒髪の青年は目を細めて彼を凝視した。
さっきまで陰って見えなかった月が彼を照らして、なんもと幻想的に見える。
それは月光のせいもあるが一番の要素は青年の整いすぎた風貌にあるだろう。
肩まで伸びた白髪に、翡翠色の瞳
適度についた筋肉が彼の美貌を引き出している。
『まぁ、おまえはマトモな人間じゃないからな
俺の気持ちは分かんねーよ』
「分かりたくもないがな」
『左様ですか・・・』
黒髪の青年は呆れたように曖昧な言葉を返して歩き始める。
「帰るのか?」
『おまえはそのまま死体と一緒におしゃべりでもする気か?』
「寝言は寝て言え」
青年はそう言って黒髪の青年の後ろに続く。
『・・・無駄に疲れたな』
うんざり顔でぼそりともらし、歩みを進めた。