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Love tears*  作者: 茶色ゆづ
2/10

*1.家出少女と

“ぎゅるぎゅるぎゅる〜〜〜”

 お腹からなんとも情けない音が鳴った。

(そういえば、夜食食い損ねたんだった……)

 私は優しくお腹をさする。

 夜食をこっそり食べようと台所へ向かった際に偶然聞いてしまった話に夢中で、お腹がすいていることをすっかり忘れていたのだ。

 ふとその時のことを思い出して、胸が苦しくなった。

(思い出しちゃダメっ。私はなにも知らない!知らないんだから……)

 首をふって顔を強く叩き、前を向く。

 家から約40分。近くにあったコンビニに寄り、私はコロコロチキンとお握りサイズのます寿司を買った。どちらも私の大好物である。

「美味しい……」

 歩きながら、私はそれらを勢いよく頬張る。いずれも5分もしない内に食べ終わった。

 よほどお腹がすいていたらしい。

 ゴミは近くにあった公園のゴミ箱に捨て、私はある場所に向かった。

 本条学園と書かれた正門。ここは私がいつも通っている高校だ。

 目の前にある大きな門の端の小さなドアを開けようとする。だが、強く揺すっても叩いても開かない。……どうやら鍵がかかっているようだ。

 こうなったらと私は門を登り、ボストンバックを下に落としてからそこに飛び込んだ。

 通っている学校とはいえ、これは立派な不法侵入である。だが、校舎外には防犯カメラも防犯システムもないと知っている。

 しかもバレないと確信してる。私は悪い笑みを向けた。

 時計をみると、時間は六時を少し過ぎたところだ。おそらく校舎も開いてないだろう。

(中庭のベンチで少し休もうかな……)

 私の下敷きになっているボストンバックの埃をはらいながら、向かった。

 ただ淡々と、なにも考えずに───。



+*+*+



「あんた、“また”なの……」

 机に顔を伏せていると、溜め息混じりの声が頭から降ってくる。

(この声は……)

 私は小さな溜め息をつく。顔を見なくても分かる。いや、嫌でも顔が浮かんでくるのだ。

 ゆっくり顔を上げてみるが、焦点が合わない。まだ若干寝ぼけているようだ。

「何が?」 

 それが、ひどく気に障ったらしく、彼女は眉間にしわを寄せて大声を放った。

涼音(りょうね)!!あんた、また家出いえでしたんでしょう!!!」

 彼女が指差したのは、私のボストンバック。

「そうだけど」

 母親のように口うるさいのは、幼馴染の花沢美咲はなざわみさ───ミサである。幼稚園の時からの仲だけど、性格は真反対だ。

 小さい頃から私に世話を焼いている。それは私が頼りなく空気のように淡々と過ごしているせい。

 私自身はその生活が好きだから別にいいのだが、ミサが言うに「頼りないだけならいいけど、涼音は変に強がるから危なっかしい」らしいのだ。

 それでも一緒にいるのは、なんだかんだ言ってもこのポジションが居心地がいいのだ。私もミサもそんなこと言わなくても分かってるし、思い合っている。

「だいたい涼音は!」

「はいはい」

 私はムキになって言い返そうとはせず、ミサの問いにうんうんと平然と受け答えていく。

 このやり取りは”いつもの”ことである。そしてこの煩いやりとりをクラスメートは、いつも黙認しているのだ。

 クラスメートいわく”反抗期の少年わたしと口煩いミサ”ということらしい。

「ちゃんと聞いてるの!?私は涼音に”悪い印象”が残ったら困るから言ってるのよ」

 その言葉に私はピクリと反応眉を少し寄せた。それはちょっとした嫌悪の表れだった。いま最も私が嫌う言葉だったから。

「………だから?」

 素っ気ない態度に、ミサはついにキレた。私の机をドンと叩き、強い眼光で私を睨めつけた。

「だ・か・ら?……あんた!!毎回毎回家出少女なんかやって!!いつかその辺の男に食べられちゃんだから!!!」

 そう激高しているミサの後ろに大きな影がひとつ。その影はミサの肩をとらえた。

「男に食べられちゃうだなんて、”みさき”ちゃんったら卑猥」

「黙れ」

 ミサはすばやく後ろを向き、大きな拳を作りその影に大きくなげんこつ一つ。

「……ぐっ、いってぇーーー!!」

 影───篠崎悠真しのざきゆうまは、痛そうに頭を抱え、叫ぶ。

「大げさね。男なんだからそれくらいで大声あげるんじゃないわよ」

「みさきちゃんに、僕のことを見てもらいたくてさー」

 ミサは呆れたと大きな溜息をついた。

 悠真くんはミサのお隣に住んでいて、やたらとミサにちょっかいをかけてくる男の子。

 小さいころから3人で一緒に遊んでいるのだが、その時からこの調子だ。あの頃はちょっかいだしすぎでミサを泣かせることがしょっちゅうだった。だけど、私は知っている。

───ちょっかいをだすのは、ミサだけ。

 悠真くんはミサにあしらわれても、ただただニコニコしていた。それを見たミサも照れくさそうに笑っている。

「あのー。そこのカップルいちゃいちゃしないでいいから」

 その言葉に過敏に反応したミサは、さっき以上に怖い顔で睨めつけてきた。

「カップルじゃない!」

 ミサは必死に怖い顔を作っているけど、顔が真っ赤だ。面白くて笑いそうになる。悠真くんも私と同じで、くくくっと笑っている。

 この雰囲気に気まずくなったのか、ミサはさっきまでの話題に無理矢理戻した。

「悠真のことはどうでもよくて、涼音!今日は家に帰りなさいよ」

「いーや」

 今回ばかりは帰りたくないし、帰れない。

「ミサの家にいってもいいー?」

 甘えた声でミサに頼んでみるが、それは悠真に遮られた。

「それは駄目、今日は僕が行くから」

 「ニコ」っていう効果音がつきそうなほどの満面の笑み。

(独占欲強いなぁ……) 

 苦笑いも通り越して、溜息すらでない。女の私にまで、此処までの独占力を見せつけてくる。

 仮にも私も幼馴染なんだけど?って言ってみようかなと思うが、悠真という男には通じないとなんとなくわかる。

(本当に悠真くん、ミサのこと好きだよね……)

「そういうことならいいけど?」

 しょうがないなと、次の思惑を考えていると、何やら喧嘩声(?)がする。

「何言ってんのよ!悠真!」

「何って何が?」

「そんな約束してないわよ!」

「そんな約束って、みさきちゃんの家に行くこと?」

「そっそうよっ」

「あぁーじゃあ、約束すればよかった?」

「そう意味じゃなくて」

「じゃあ、みさきちゃんが思ってることをちゃんと言ってよ?」

「──悠真の…悠真の……ゆうまのばかぁ!!!」

───何、朝からイチャついてるんだ、あのバカップル。

 二人を見ているクラスメートらは、きっと心の中で溜息をついているだろう。

 クラスに中にそんな空気が流れているとは知らないだろう二人はまだ言いあっている。

 こんなやりとり聞けば誰もが二人は恋人だと思うけど、実は二人付き合っていない。カップルの自然消滅ってあるけど、この二人の場合自然成立?って感じだろうか。

 どちらかが言えばいいと思うだが、二人の性格上難しい。

 私が手助けしようと思ったこともあるのだが、ミサは絶対認めようとしないタイプだし、悠真くんは言っているようにみえて、実は怖がっているのだ。漂々とした言葉じゃきっと伝わらない。それは悠真くん自身も分かってると思うから口は出していない。

 実質見守ることしかできない。いろいろと口出せばきっと余計なお節介だろう。

 私は席を勢いよく席を立った。

「じゃあ、そこの夫婦!私もちょっと行ってくるから!」

 ボストンバックを持って、私は教室を出ようとする。

「ちょっと……ってまさか涼音、またアイツの所に行くの?」

 ミサはちょっと嫌そうに、アイツと言葉を吐いた。

「そうだよ。だって今日宿なしだもん、頼みに行かなきゃっ」

 ミサと反対に、悠真君は盛大に送り出してくれる。

「行ってらっしゃい、涼音。具合悪いとでも先生に言っといてやるから」

「ありがとう、悠真くん」

 悠真くんに軽く礼を言い、私は教室を飛び出した。

 スキップするように廊下を走けていく。階段で転びそうになるぐらいはしゃいでいた。

(この時間に行くの、久しぶりだなぁ……)

 始業時間間近、私のクラスメートが声をかけてきた。教室と反対方向に行くのを不思議に思ったのだろう。

「あれ、風原(かざはら)さん?何処に行くの?」

「ん?先生のところ!」

 クラスメートはそれだけで分かったらしく、そうかそうかと頷いた。

「あぁー先生のところに行くのね。いってらっしゃい!」

────そう。私が向かっているのは、大好きな先生ひとのところ………。





  

 こんばんは。柏木なゆです。

 どうやらスランプに入ったようです。

 最初の投稿からあいてしまいました。

 一応ストーリーは考えてあるので、続きを書いて行きます。

 続きをどんどんと書いて行くと波に乗っていくタイプなので(笑

 この話については、スランプが抜けた頃に内容が崩れないように、文の修正を行いたいと思います。


* * *


 次話更新しました。(2013.5/20)



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