「異世界転生に当選しました」というLINEが鳴ったうえに異世界転生係と名乗る変な奴が俺の前に現れたのだが ~こんな異世界転生は嫌だ~
俺は佐藤優斗、ごく普通のやや陰キャな高校2年生だ。スポーツは苦手で成績はそこそこ、飛びぬけた特技とかはない。我ながら平凡な人間だと思う。そんな俺の趣味は小説サイトで異世界転生チートものや追放されたキャラが元のパーティーを見返すような小説を読むこと。いわゆる「なろう系」と呼ばれている小説を読むのが好きだ。
そして今日も自分の部屋でスマホで小説サイトの小説を読んでいた。
「ピコリン♪」
『ん、LINEか・・・何これ? 「異世界転生に当選しました」とかいうLINEが来てる』
『まったく、詐欺LINEか何かだろ なんでLINEで異世界転生の当選メッセージが来るんだよ』
「ピコリン♪」
『またLINEが来た・・・え、「今そちらに向かっています」だって?』
「ピコリン♪ 今あなたの家の前にいます」
『早いよ早いよ、なんか怖い!』
「ピコリン♪ 今あなたの家の2km先にいます」
『通り過ぎてんじゃねぇか! そんなベタなボケいらない!』
「ピコリン♪ 実はもうあなたの背後にいます」
『・・・は? うわああぁ!!』
背後を見ると中世の西洋のようなマントを着た男が俺の後ろに立っていた。いったいどこから入ってきたのか。
「異世界転生の当選おめでとうございます。担当のメフィでございます」
『は、はぁ・・・てか、なんで俺が異世界転生に選ばれたの?』
「しがない生き方しかできない今の世界から抜け出して、転生先の世界で楽してチートしてチヤホヤされたいというあなたの強い願いが届きました」
『言い方! もうちょっとオブラートに包んで!』
「えー、では・・・」
『?』
「この世でなれぬ幸せならば、せめてあの世で幸せになりたい」
『なんか違う! 心中物じゃないんだから! 俺別に心中したいわけじゃないし!』
「はっはっは、そうですよね。だって一緒に心中してくれる相手がいませんもんね」
『おまえいい加減にしろよ(怒)』
『あのね、俺にだってね、心中してくれる相手はちゃんといるんだよ・・・モニターの中に』
「・・・・・」
『そこはツッコめよ! 渾身のボケだったんだぞ!』
何なんだろうかこの男は。異世界転生をさせてくれると言いながら全く話にならない。
そこで、俺のほうから異世界転生について聞いてみることにした。
『で、異世界転生できるっていうけど、ちゃんとチート能力はついてるんだろうな?』
「はい、チート能力を一つ自由に選ぶことができます」
『うーん、一つだけか。二つ以上チート能力を持つとかダメなの?』
「追加のチート能力はオプションでして、能力一つにつき25万円です」
『異世界転生商法!? チート能力のオプション購入制とか聞いたことないんだけど!』
『わかったよ、金がねぇからオプションのチート能力はなくていいよ』
「それがですね優斗さん、今なら特別にチート能力が大幅割引で一つ15万円! しかも今の能力を3万円で下取りします!」
『ジャパネットた○たかよ! しかも能力の下取りって何なんだよ!』
「あ、すみません、優斗さんは能力がないから下取りできないですね」
『おぉん? おまえなぁ(怒)』
すると異世界転生係に電話がかかってきたようで何やら会話をしている。どうも何かが決まったみたいだ。
「それでは異世界転生の準備ができましたので、外に出てトラックに轢かれてください」
『何かもうちょっと言い方ないの? そりゃわかるけどさ!』
『ていうかさ、異世界転生するっていっても今から死ぬんだよ? もうちょっと何かないの?』
「では、死ぬときにお経でも唱えましょうか?」
『そういうことじゃなくて!』
『それにしても、いざ死ぬとなるとやっぱり怖いな・・・ なんかもうちょっと気の利いた死に方はないの?』
「死に方によっては健康保険が使えませんので」
『健康保険!? 異世界転生に健康保険関係あるの!?』
「死亡が失敗したときの入院のことを考えると健康保険は大事ですよ」
『ちょっと! 失敗させないで! そこはちゃんと決めて!』
とりあえず異世界転生するには死なないといけないので、俺達は外に出た。とはいえ、今から死ぬと考えると心臓がバクバクしてくる。
「それでは間もなくトラックが来るので飛び出してくださいね」
『ちょ、ちょっと、もうちょっと楽な方法で! 保険とかはどうでもいいから!』
「えー、それでは戦車をご用意しますね」
『余計ひどくなってるだろ!』
「戦車のほうがひと思いに死ねますよ」
『“ひと思い”とかじゃなくて! もうちょっと心の準備がしやすい方法でお願い!』
「わかりました、それでは空からタライが降ってくるようにいたします」
『そう、そういうのだよ。わかればいいんだ』
「タライの重さは16トンにしておきますね」
『怖い怖い怖い怖い! それならトラックのほうがまだマシだから!』
『あ、あのさぁ、パンをくわえて走ってきた女子と曲がり角でぶつかって異世界転生とか・・・ダメ?』
「承知いたしました。少し計算しますね」
『計算・・・?』
「えー、女子の走る速さが時速30万kmでしたら可能ですね」
『それ速すぎて何も見えないじゃん! 何なのその速度!』
「この速さでしたら接触した瞬間に粉々になれますので苦しまずに死ねますよ」
『そういうことじゃなくて! ・・・もういいよ、普通のトラックで諦めるから!』
すると異世界転生係は誰かに電話をかけて話し始めた。
「はい説得完了しましたー。トラックお願いしまーす」
『おーい!(怒) 聞こえてる聞こえてる!』
もうすぐトラックがやってくる。俺はひどく緊張しながらトラックを待った。
そしてトラックがやってきた。「怖いけどどうしてもチート能力を持って異世界転生をしたい」、その思いで俺はトラックへと飛び込んだ。
『・・・あぁ、意識が薄れていく』
しかしなぜか異世界転生係がひどく焦った顔をして誰かと電話で話している。
「そうなのですか? はい、わかりました」
「優斗さん、すみません。異世界転生が取り消しになりました」
『は、は? なんで?』
「転生先の世界から『佐藤優斗の受け入れは拒否したい』という強い申し出がありまして」
『ちょっと待って! 俺そこまで嫌われてるの!?』
『というか、異世界転生できないんだったら、俺このままだとどうなるの?』
「普通に死んで終わりですね」
『サラッと答えてんじゃねーよ! とにかく早く別の受け入れ先探して!』
「はい、わかりました! 私も異世界転生のプロフェッショナルです。その誇りにかけて受け入れ先を探します」
『頼んだぞ!』
そう言うと異世界転生係は急いでいろんなところに電話をかけて受け入れ先を探した。俺は「どうか決まってくれ」と祈りながら薄れゆく意識の中で耐え続けていた。
「優斗さん、すみません。どこの病院もベッドが埋まっていて受け入れ先が決まりません」
『病院の受け入れ先じゃなくて! 異世界転生の受け入れ先を探してって言ってんの!』
「あ、そちらでしたか。それでは転生の受け入れ先を探しますね」
『ほんと今度こそ頼むよ・・・』
今度はちゃんと転生先の世界を探してくれているようだ。今回はこの異世界転生係なりにいろんな世界に電話をかけて交渉してくれている。ただ、俺の意識はだんだんと遠のいてきている。
『ま、まだ決まりませんか・・・ 意識が・・・』
「死にぞこない君! もうちょっと耐えて!」
『死にぞこないって! たしかにそうだけども!』
「あっ、転生を受け入れてくれる世界が見つかりました! これで異世界転生ができます!」
『マジで!? 良かった! で、転生先はどんな世界なの!?』
「地獄です」
『それ地獄に落とされるだけじゃねーか!!』
────── 完 ──────
私が普段書く小説はシリアスなムードのものが多いのですが、生粋の大阪人の性なのか普段からボケとツッコミのやり取りが思い浮かぶことが多く、それゆえギャグを書くのも好きだったりします。今後もこうした100%ギャグのコメディ小説をときどき書こうと思っています。




