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天使と悪魔の言う通りに…ね?〜力を貰えず異世界へ…だから2人とも、俺に力を貸してくれないと死んじゃうんだけどッッ!?〜  作者: お汁粉パンチ
憤怒の魔女ステラ編

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第33話 一太刀

「来たみたいだな、300代目王者」


 陽の光に照らされた広場、そこにポツンとある切り株へ彼女は腰掛けていた。

 褐色の肌に腰の辺りまで垂れた燃えるような赤髪。

 寒いのに露出している肌、そのラフな格好自体は街で見かける人とあまり変わらない。


 でもこんな人の気配を全く感じない空間に一般人がいる訳ない。

 間違いなく…魔女だ。


「おいおい、もうやりたいのかい?

まあ、俺はかまわないけどよぉ」


 そう彼女に言われて俺は、無意識に戦闘体勢を取っていた事に気づいた。

 …少し力を抜こう。


「魔女ステラさんは…」


「うん?」


「憤怒の魔女ステラですか?」


 その瞬間雰囲気が変わった。

 フラフラと揺れていた体の動きは止まり、視線はこちらの身体を捉えて離さない。

 広場中に張り詰めた空気が広がり、鳥達がバサバサと飛び立っていく。


「…どこで聞いた?」


 もう彼女の表情にはニヤリとした笑みはない。

 

 …完全に地雷を踏んだ、しかも正面から。

 どうやら当たりみたいだ。

 でも、だったら警戒させないまま戦いたかったけど。

 ルシェとセフィからも少し怖い雰囲気が流れている。


「まあいいさ。それに関しては終わってから、じっくりと聞かせてもらおうじゃねぇか」


 そう言いながら立ち上がる魔女ステラ、その瞬間に目が眩むほどの光の奔流が立ち昇る

 それを行った2人の姿も視認はできない。

 でも今は、それに身を任せるだけ。


 パッとそれが消えた瞬間から身を包む力…久しぶりの感触だ。

 体を流れる魔力の量も、この黒と白を混ぜた色のローブも…背中から生えた大きな翼も。


「なるほどなあ、それがお前の本気か」


 その問いには答えず、静かに剣を構える。

 立ち上がった無手の彼女が思い切り手を振ると、どこからか現れた剣がいつのまにか握られていた。


「初代竜王祭王者で…憤怒の魔女ステラ」


「…第三百回竜王祭王者、掛布段」


 大地を踏みしめる足へ強く力を入れていく。

 

ジャリッ…


 少しつま先を滑らす様な音、それが開戦の合図だった。



キィンッッッ!


 最初にお互いが飛び出し行われた一合は、こちらの方が有利だ。

 力は明らかにこちらの方が強い。

 ただ彼女の体へ傷をつけるほどではなかった。


「ははっ、良いねぇえ!」


 素早く手首を返し放たれた突き。

 だがしっかりと横から弾き、体までは届かない。

 今のところは強化された動体視力で彼女の動きを追えている。

 

 そうして俺たちは何度も剣を交わす。



 …そう、何度も剣を交わしているのだ。

 

「攻撃がなんで届かない、って顔かぁ?」


 彼女のその言葉……大当たり。

 こちらは最初から全力のはず、なのに…まともに攻撃がヒットしないのだ。

 最初のゴブリンの時から、竜王祭まで…こんな事一度もなかった。

 竜王祭はレベルが高かったのにも関わらず、攻撃は当たっていた…天魔融合を使わなくても。


 でもこうして考えながら無意識に剣を振り続けるも当たらない。

 あちらの攻撃はすり抜けて何度か当たるも、このローブのおかげで傷には至らなかった。


「その種明かしをしてやろう。

確かに攻撃は早いし防御も硬い、でもお前…まともに鍛錬した事ないだろ?」


「だから、こうやって…」


 彼女の手元から放たれた突き、それをいつも通り横から…


「〜〜ッッ!?」


「上手いことやれば、隙をつけるって訳よ」


 弾いて防御しようとした剣は空を斬っt>

 

 頰が熱くて…痛い。

 ダラリと何かが頬をつたい落ちてくるのを感じる……血だ。

 それは灰色のシミひとつなかったローブを汚し、消えていく。

 

 攻撃はしっかりと見えていた。

 でも腕の位置が悪く、防御までは手が回らなかった。

 きっと彼女は、ここまで狙って…。


「中々の強敵ですね」


 今も剣を合わせていても、怖い。

 いつ、あの技が繰り出されるか分からないから。

 だから少し縮こまった様に動いてしまう。

 

「まあまあ、致命傷ではないんだs…ッ!?」


「さっきからウロチョロしてるコイツはなんだ?」


「ルシェッッ!!」


 彼女の突きは俺…ではなく、正確にルシェの位置へと放たれた。

 今までは誰も認識できず、存在がバレたのはギルマス達にこちらから意図的に話した時だけだ。

 なのに彼女は…自分の力だけでその位置を探り当てた。

 

 そうしてバチバチバチッッと、障壁と剣が激しく衝突し悲鳴を上げる。


「ははっ、本当にいたみた…」


「あのさぁ……不敬だよ、魔女ステラ。

聞こえてないと思うけどッッ!!」


 不機嫌な声なルシェの声、どうやらまだ体までは届いてないみたいだ。

 そんな彼女の周りに展開されていた透明な障壁、それがドス黒い色に染まり…


バチッッ!


「おっとっと…」


 派手に弾けた。

 その衝撃で彼女の体がズザザザと音を立てて、滑っていく。

 魔女の体には傷がついてはいないが、距離は取れた。


「致死の攻撃、じゃねぇみたいだな」


「…私たちがやったらダメだからね。

ダン……絶対の勝利を、これは悪魔ルシフェルとしての命令だから」


「…分かった」


 そうして俺は構え直す。

 体を動かして温かくなっていたのが、再び突き刺すような寒さに襲われる。

 風が広場へと吹き、少し黒さを増したローブがバサバサと靡く。


「ねえ、ルシェ」


「…なに?」


「…300年間行われた竜王祭、その王者は全員ステラに勝利できずに負けていった。

だから流れ者の俺がコイツに勝ったらさ、この国が力の象徴を失うって事だよね?

それってさぁ…」


 そうして先ほどから不満げな表情を浮かべていたルシェ。

 でも今は、こちらの語りが続くたびに口角が吊り上がってきていた。


「何を言って?……なッッ!?」


 跳ね上がった魔力、今回は元の量から違う。


「最ッ高の悪事だね、ダンッ!」


 ルシェに向けるために傾けた首、視界に入っていた翼までも黒く染まっていくのが見える。

 もちろんただの世間話という感じではない。

 これが…力を引き出すのに一番手っ取り早い方法だから。


「ははっ…イかれた魔力だぜ」


 そうして踏み出した一歩、速度はもう先ほどの比ではない。

 先ほどより減った彼女の魔力と、増したこちらの魔力。

 比べるのも烏滸がましいほどの差だ。


 彼女が咄嗟に防御に出した剣は…断ち切られた。


「ぐッッ……」


 袈裟斬りにした彼女の体。

 その大きな傷は決して浅くなく、ドバドバと命の灯火が流れ出していく。

 彼女は折れた剣を片手に地面へ膝をついた。


「なんだよっ…それっ、反則級だぜ……」


 それを言い残し、彼女はガクリッ…と力尽きた。

 カランと音を立ててその剣は手からこぼれ落ちる。


 俺はまだ剣を握りしめ、彼女へ向けたまま。

 ……これは、もう死んでしまったのだろうか。

 最後の最後まで剣を手放さなかった彼女は戦士だった。


「ふぅ……ッッ!?」


 一瞬気を緩めた瞬間、彼女の体からドス黒い色の柱が立ち昇る。

 …アレはまるで、


「天魔融合みたいですね」


 その準備の様だった。

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