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天使と悪魔の言う通りに…ね?〜力を貰えず異世界へ…だから2人とも、俺に力を貸してくれないと死んじゃうんだけどッッ!?〜  作者: お汁粉パンチ
決闘都市ズィッペリン編

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第32話 邂逅

「…それで、本当に挑戦するのだな?」


「はい、そのために竜王祭に出場しましたので」


「そうか…」


 あの時褒賞を貰った部屋、そこでまた王族と謁見していた。

 それは見送りでもあり…最終確認でもある。

 そしてこれを口にすると、全員揃って悲しそうな表情を浮かべるのだ。

 理由は決まっている、


「三百年間の間、誰も勝利出来ずに殺されている。

ここ五十年は挑戦者さえもいない、なのに挑むと言うの?」


 誰も勝てない、生きて帰れないからだ。

 この戦いを勝ち抜いた強者、その人たちが全員揃って魔女の手にかかっている。

 本来は優勝者と前回優勝者が席を奪い合う催しだったのに、今は自殺行為とまで言われていた。

 

 だからもう挑む奴なんていない。

 だって、他の仕事を選べば楽しく暮らせるんだから。

 栄誉を持って美女と結婚するもよし、賞金で贅沢三昧するもよし、騎士となり仕えるも良し、いずれも順風満帆な生活が待っている。

 なのに、挑むなんて愚かな行為…誰も選択しない。

 

 そのため、こうやって会う人会う人に止められていた。

 でもこれは、俺にとってやらなければいけない事。


「ご心配いただきありがとうございます。

ただ、お言葉ですがラフラン様」


「うん…」


「勝算が無いのにも関わらず挑戦するほど愚かではありません」


 だから俺は、そんな言葉をかけた。

 もう不敬というラインは…超えてしまってるかもしれない。

 でも2人はそんなに悪印象を感じなかった様で…跪いた状態の俺の耳には、高笑いが聞こえてくる。


「ははっ、確かにそうだ!

お前はまだ、まともに傷を負ってないからな」


「なるほどねぇ…すごい自信。 だけども実力は確かか…」


 どうやらハッタリは上手くいったみたいだ。

 勝てるかどうか?

 …正直、全く分からない。

 

「前向きの様で良かったです」


「でも私達が力を貸さなかったら、どうなるのかなあ〜?」


 …それは、死んでしまいます…。


 でもこちらが死んだらそっちも任務失敗。

 だから…この体が人質だ。


「…ダンも言う様になったじゃん」


 静かに漏らされたルシェの声…もしかして怒らせた?

 流れるのは不穏な雰囲気…


「いやあ、成長したねっ!」


 いやっ、これで良いのかいっ!

 …なんか緊張して損した気分だ。


「まあ、異世界ならそれぐらい強気でないと付け込まれるでしょう」


 そっか…正直あんまりやりたくはないムーブだけども。

 実際王族にも好評?ではあるし。


「じゃあ、もしステラ様に勝てたら王都に来たらどう?

悪いようにはしないからさ!」


「ああ、それは良い提案だ!

お前の強さなら、騎士団長も行けるだろう」


「…身に余る光栄です」


 その言葉はありがたく受け取るも、深くは掘らない。

 戦いの先には約束を残さない様にする。


 そんな内心を感じ取っているのだろうか、


「…じゃあ、行ってこいダン!」


「…頑張ってね、ダン」


「ありがたき幸せッッ!」


 少し寂しそうに笑う王子と王女を残しその部屋を去る。



「ダン様ッ!」


「…ジュリエッタ様、それにクラーク家の皆さんも」


 闘技場で謁見を済ませた後、廊下を歩いているとそんな4人と出会った。

 一応昨日は屋敷でパーティーを、今日はもう見送りをしてくれたのに。

 

「荷物も持って行ったし、闘技場から直接行くんだろう?」


「ええ、そうです。 

用意していただいた馬車で送ってくれる様なので」


 魔女ステラとの対決、それは闘技場では行われない。

 誰も立会人のいない、ある森で行われるそうだ。

 場所は地図でざっくり教えられたものの、馬車で送ってもらえるという事でお言葉に甘えさせてもらう事にした。


「お兄ちゃん、頑張ってね!」


「…ダン、気をつけて…な」


「もしもの事があったら…全力で逃げましょう。

誰も貴方を攻めませんし、来年もありますから」


「ありがとうございます、命は大事に…戦ってきますね」


 無邪気なリーンの応援、それとは裏腹に親は2人ともこの挑戦の困難さを知っている。

 だから勝つことを…というより、死なないことを勧めてくる。

 …まあ本当に追い詰められたら、逃げるのもありなのかな?


「良いですよ、その時も魔女は場所を変えないでしょうし」


 そっか、じゃあ少しは気楽に出来るかもね。

 そんな3人と…今も静かなジュリエッタさん。

 あんまり、話したい気分ではないのかもしれない。


「…ではジュリエッタ様もどうかお元気で…」


 そう言い残して隣を通ろうとすると、ガシッと手が掴まれる。

 それは彼女…ジュリエッタさんだ。

 何かまだあったかな?とこちらが思っていると…その手がグイッと引かれる。

 何の力も借りていなくて油断した俺に抵抗する術はなく、体勢を崩しそのまま…


 唇が重なった。


『な!?』


「えっ…?」


「ダン様、絶対に生きて帰ってきてくださいね。

貴族の…それも未婚の女性のファーストキスを奪ったんですから…」


 重なった唇は一瞬で…ほんの少し触れ合うだけのもの。

 ほのかに甘い香りは今も残っている。

 

 俺にとってもファーストキス…といっても、それより彼女の方が遥かに価値が高いんだけどさ。

 そして、それが彼女が選んだ…俺を無謀な死に送らせないやり方。

 …結局、決闘都市ズィッペリンに来てからずっと彼女の世話になりっぱなしだったな。

 

「はい…ですが、生きて帰ってきても無事で済みますかね…」


 そうして目線を送った先には当主…ダイセン様がいた。

 

「ああ…その時は、じっくりと話そうではないか…じっくりとね?」


 …やっぱ、どっちにしろバッドエンドじゃないかな!?

 なんか、戦う前から胃が痛くなってきたかも…。


「ダン様にはこのネックレスを…」


 そうしてジュリエッタ様が取り出したのは、エメラルド?ぽい輝きの石がついたネックレス。

 これは…おしゃれなのかな?」


「これは、一度だけ致死攻撃を身代わりとして防御してくれる代物です。

ぜひ、身につけて行ってください」


「それは…ものすごく心強いです!」


 本当にすごいものだった。

 忘れない様にと、そのまま彼女がその手でつけてくれる。


「お似合いですよ」


「ありがとうございます、では…」


「はい、気をつけてくださいね!」




 そうして俺は、歩を進めていき…馬車へ乗る。

 今も道は人集りが多く、歩いた方が早いのでは?と思うほどのんびりとした進行。


 まあまだ戦いは起きないのだし…と背もたれに体を預けゆっくりしていると、


「あれ、ダンじゃないか?」


 なぜかバレた。

 …なんで!?窓のカーテンは閉めてたはずなんだけど…。

 

「ダンッ!頑張ってこいよッ!!」


 まあ、良いか。

 窓を開き身を乗り出すと、彼らへ向かって手を振る。

 

「本当に乗ってた!頑張ってくれ〜!」


「しっかり生きて帰ってこいよ!!」


「またあの宴やってくれッッ!!」


 そんな、再びお祭り騒ぎが始まった。

 でもその陰で、


「おい、道を開けろ!今から新王者が魔女ステラ様に挑みに行くんだぞ!」


 混雑した道には、馬車が通れるくらいの隙間ができる。

 そこからは結構スムーズに、壁外…街の外へと出て行けたのだ。

 手は振りっぱなしだったけども、これだけの応援に応えない訳にはいかない。



「疲れたでしょう、背もたれを倒して仮眠しては?」


「…そうするよ」


 とはいえ窓から頭を出すという中腰の姿勢を長く続けたから、結構疲れていた。

 まだ戦いの前なのにさ。


 目的地までは数時間ほどだから時間はある。

 そうして倒した背もたれに身を委ねると…時も経たずに睡魔へ連れて行かれるのだった…。




「起きてください、ダンさん。 着いたみたいですよ」


「ふわあ…ありがとう」


 そうして起き上がるのは俺と…隣のルシェ。

 彼女は睡眠はいらないはずだけどね、気分かな?


「ダン様、目的地に到着致しました」


「ありがとうございます」


 御者のおじさんへ礼を言いながら、地面へと降りる。

 

 サクサクと踏みしめた落ち葉が音を鳴らす季節。

 それでも森の最奥は、まだ葉を付けた木々に覆われここからだと見通すことは不可能だ。


「では、私はこれにて…ご武運を」


「はい、ありがとうございます!」


 そうして彼と馬車はこの地を去っていく。

 

 不穏な雰囲気は…まだ感じられない。

 今のところは何の変哲もない森に見える。

 草木もあんまり特徴的なものも無いしさ。


「それで…もう天魔融合する?」


 ここは魔女の根城、不意打ちであの世行きになるという可能性もある。

 ただ難しいのは、『天魔融合』の消費自体は激しいため、今使ってしまうと途中で力尽きる可能性があるのだ。

 

 話し合った結果…


「一旦は無しで行きましょう」


「そうだね〜、一応私たちはいつでも使える様に準備しておくからさ」


 今は通常状態で行くという事になった。

 一応ジュリエッタさんからもらったネックレスで一撃は耐えれるからね。

 

 そうして俺たち3人は森の中へと足を踏み入れていく。

 

 整備は一応されていた。

 時代を感じる石畳だけども、馬車でも通れなくはない程度に。

 苔むして、隙間からは雑草が生えているけども。

 この道を使って住んでいる魔女は生活しているんだろうか?

 

 空から降り注ぐ陽の光は木々で遮られ、頼りないものだ。

 明かりはないから、薄暗い中を進んでいくしかない。

 標識もなく、この石畳だけを頼りに。


「あっ…」


 石畳が行く先、そこは光で白く塗りつぶされた様に明るい。

 これは…森の木々がなくなり、開けた場所がある証だ。

 最初に異世界の地へ降り立った時の様な既視感を覚えながら俺は潜り抜け…


「来たみたいだな、300代目王者」


 魔女と出会った。

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