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天使と悪魔の言う通りに…ね?〜力を貰えず異世界へ…だから2人とも、俺に力を貸してくれないと死んじゃうんだけどッッ!?〜  作者: お汁粉パンチ
決闘都市ズィッペリン編

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第25話 悪意に身を委ねて…

「ぅグっっ!!」


 これで倒したのは10人目だろうか。

 漲る魔力が身体能力を底上げしてくれるお陰で体が軽い。

 

 ただ使っていた盾は結構傷だらけになってしまっていた。

 かなり酷使してしまったし、店売りでも無く無料のレンタル品だからしょうがないんだけどさ。


 実況も歓声もまだこちらには向けられていない。

 聞いている感じだと、今はランキングTop10同士で戦っているためそちらへ注目が集まっているみたいだ。

 じゃあそっちは戦ってるみたいだし、今はいいや。

 

 狙うべきは、今回最有力候補の1番人気…『破壊王』ラグナだ。



 軽やかな走りで彼の元へと向かう。

 道中で何人か轢いてしまったけども気には止めない。

 先ほどまで土煙でよく見えなかったのだけど…いた。

 試合中ではあるものの、周りで倒れて血を流す選手達が運営スタッフによって担架で運ばれていく。

 どうやら彼へ挑む勇気がある選手はもう、全員やられてしまったみたいだ。


 そんな圧倒的な力を見せる彼の前にはもう挑戦者はいない様だ。

 だから実況も他へ注目を移したんだろう。

 きっと彼はもう何もしなくても、他の選手が勝手にビビって挑むことすらせず予選を抜けるだろう。


 じゃあと、俺が自然体な動きで一歩一歩踏み出していく。

 そして彼の目が俺の姿を捉え、


「挑戦者か?」


「もちろん」


 出てきた問いは自分が王者だと信じきっている様な台詞。

 そして段々とこちらの脚の回転が速くなっていき…体が彼へと一直線に飛び出した。

 

 がきぃいんっっっ!!!


 彼の獲物と、こちらの盾が擦れ合い不愉快な金属音を鳴り響かせる。

 ブゥンッと衝撃波が俺達を中心としてフィールドを広がっていく。

 そして初めて彼の驚きの表情を引き出せた。


「…それはレンタルの盾じゃないのか?」


「もちろんレンタルですよ」


 そうお互いにいい勝負…いや、本来ならあり得ない。

 だってあちらは隆起した筋肉が服で隠し切れていないのにも関わらず、こちらは全く筋肉が感じられない体。

 そして彼の武器は常連組なのだからきっと上質な物だ。

 

 なのにただのレンタルの盾を削りきれない、力でも拮抗している。

 なんならあちらのハルバードは両手で、こちらは片手だから少し有利まであるかもしれない。


 もちろん、長い時間の戦いになったら俺の方がメリットは特大だ。

 でも早く畳みたいという気持ちからフリーの左手が出ていくと…彼は大袈裟なぐらいにバックステップで避けた。


「なるほど…効果は分からないが、あまり触られない方が良さそうだ」


 …大当たり、やっぱり露骨すぎたのは反省だ。

 とはいえ、それを口にすることはないけども。

 戦闘経験の浅さがモロに出てしまった。

 こんな序盤で初見殺し要素を一個消してしまったのは、ちょっと勿体無い。


 でも最初の交錯だけでまあまあ魔力が貰えた。

 彼も気づいてはいるだろう、体が不思議と重くなっている事に。

 そしてその魔力を盾へと注いでいく…


「それが、硬さのカラクリか」


 目の前でそんな事をやれば、流石にバレバレだ。

 この鉄に限らず、多分万物に魔力自体は込められる。

 でも適した素材じゃないと、込めたとしても魔力は霧散してしまうみたいだ。

 まるで穴の空いたバケツに水を入れる様に。

 ただ…あり得ないほどの魔力があるなら話は別だ。

 

「今度はこちらからいくぞ」


 そうして今度は振り下ろされた矛、それと盾がぶつかり…


 がきぃいいんっっ!!


 再度大きく音を鳴らす。

 若干地面に足がめり込んだものの、盾は…未だ健在。

 

「なんだその硬さは!?」


 流石の彼でも2度目は壊れると思っていたみたいだけど、そうはならなかった。

 そして脚へ魔力を込め…大振りの攻撃を放ち体勢を崩した体、そこへ体を潜り込ませる。

 そうして咄嗟に出した肘鉄は見事に…命中し、体を突き破らんとする勢いで衝突した。


「かはっっっ!!!」


 そうして相手が空気を吐き出した瞬間、もう体は接触していた。

 意識しなくても発動する能力の前に…彼は無力だった。

 全ての魔力を吸い取り…


「お前の…勝ち…だ」


 その体はダランと崩れ落ち、ずっと握られていたままのハルバードは持ち主の手から離れたのだった。


『わぁあああああ!!!』


 そんな1番人気の『破壊王』ラグナが倒れた瞬間、闘技場が壊れるかと思うぐらいの歓声が湧き上がった。

 

 あれ、他を見てたはずじゃないっけ?

 空を見ると、確かに映像でこちらが映されていた。

 とりあえず折角だし、右手を高らかに挙げてみる。


『うぉおおおお!!!』


 …するとそれに反応してか、更に歓声が強くなった。

 確かにこの全身を覆う充実感と快感は何にも変え難い。

 何年も出ている人がいるのも頷ける。

 これを味わうためにかは分からないけど…。


 でも今はそれより…この手に入れた魔力の味だ。

 全身に染み渡っていくパワーは戦う前と比べて段違い。

 多分それは、悪事を成し遂げたからボーナスを手に入れたんだろう。

 

 実際観客席には、悔しそうに頭を抱えて座り込む者も目に入る。

 …なんでここまで見えてるんだ?

 メガネでは無いけど、そこまで良いわけじゃないのに…これも魔力のお陰なのだろうか?


 とはいえ…これで満足は出来ない。

 そう『魔弓』のアンデルは、どこだ?


「……いた」


 先ほどと比べて段違いに軽い体、彼の驚く顔が見えたのは一瞬だった。

 そのまま正面から放たれた弓は盾を貫通する事なく、そのまま盾を突き出すシールドバッシュで吹き飛ばす。

 後は…魔力を吸い取るだけの簡単な作業だ。


『わぁあああ!!』


 先ほどよりも小さな歓声、盛り上がりが足りなかっただろうか?

 …でもドロリとした何かが、心へと侵入してくる。

 きっとこれが力の源の魔力…だから追い出す事もなく全て受け入れていく。

 

 受け入れて分かる…これが人間の絶望や不快感の味。

 それが今の俺には、力になるのだ。

 だからこれは…喜ばしい事だ、万歳。


「まだ…狩る?」


 その呟いただけの言葉は不思議と場内へ響いた。

 …なんだろう、映像だけじゃなくてマイクでも入ってたのか?

 まあ良いや、


「ランカー…まだ居るかな?」


 もっと…もっと強い人間を…。

 もう、誰も戦っていないから分からない。

 強さもなんとなくしか感じ取れないし、遠くにいればそれも不可能…


「こっちに6位…ガイテンがいるぞぉおお!!」


「…ありがとう」


 親切にも叫んで客が教えてくれた。

 そちらへ体の向きを変え…飛んでいく。


「ちょっ、まっt…」


 その男の首へ手をかけ…地面を滑っていく。

 魔力は完全に吸い取ったため、気絶して動かない。

 やっぱり参加者達は全員丈夫で、簡単には…死ななかった。

 

 でも良いのだ、魔力が吸えれば。

 そして更に力を増す体、限界なんてあるのだろうか?

 このままなら…天魔融合状態まで届くのも夢では無い。

 

 そんな有力者がバタバタと倒れていく状況、でも観客がついてきてくれたんだろうか、

 

『わぁああああ!!!』


「いいぞっ、ダン!もっと他の奴らも!」


「こっちに4番の……!!」


 再びの声援と共に、情報が集まってくる。

 そしてその方向へ向かい、街頭の選手と周りの選手を倒していく。

 

 闘技場の雰囲気は変わっていく。

 絶望などの悪意は今も変わらないのに声援…これは負の感情だ。

 俺が有力者を倒せば、他の奴らも不幸になる。

 そんなスパイラルの中心となる俺の力の上昇は止まることを知らない。


 でも…つまらない。

 有力者っぽい人たちも俺が向かうとリタイアして行ってしまうのだ。

 だから、今日のところはこの辺で終わり。


 未だ闘技場の旗は誰にも取られていない。

 そばまで寄り、ポールを盾を握っていない方の手で掴む。

 そして始まる60秒のカウントダウンは誰にも邪魔されず…


「いち、ゼロ…」


『うぉおおおおお!!!』


 俺は予選を抜けた。

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