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『完結』天使と悪魔の言う通りに…ね?〜力を貰えず異世界へ…だから2人とも、俺に力を貸してくれないと死んじゃうんだけどッッ!?〜  作者: お汁粉パンチ
決闘都市ズィッペリン編

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第21話 午前の部の観戦

 階段を登り切ったところで、そこに立つ警備兵へ参加証を見せるとその扉が開かれる。


「これが、コロシアム…」


『うぉぉぉおおおお!!!』


 誰かの歓声が…指笛が響き渡り続ける。

 どれだけ席があるんだろうか、多分10万はあると思う。

 野球観戦も好きでドームに足を運んでいたけど、その比にならない大きさだ。

 

 そんな巨大なもの作って耐久性は…あっ、この世界には魔法があるのか。

 それがこの熱狂に包まれる空間を生み出しているんだろう。

 でも選手はまだ出てきていないのに、何に熱狂しているのか…って思ってたら、


「それでは、次の注目選手はこちら!」


 マイク?で紹介される選手の情報だった。

 その度に選手の名前を叫ぶ声が会場中を襲う

 これが、300回行われた竜王祭の圧…思ってた以上だ。

 ふと後ろから聞こえる声に振り返ってみると


「あっ、そうか」


 そこにもう一つ理由があった。


「試合が始まったら終わりだよっ!

さあ、張った張った!!」


 この賭けが、源泉だったかもしれない。

 確かに言われてみれば、競馬のG1戦の時みたいな雰囲気でもある。

 あのピリピリとしていながらも、その勇姿を…歴史的瞬間を目に焼き付けるべく齧り付いて見る感じが。

 …あと、


「ハニバル!!お前に託したぞッッッ!!!」


 全財産賭けてそうな奴もいるみたいだし。

 だからあれだけの、1人倒すだけで銀貨10枚という破格の報酬が出てたのか。

 

 それに酒や軽食も、結構売れてるみたいだしさ。

 俺も立ち見席で、初代王者の好物らしいねぎまを齧りながら高みの見物だ。



「それでは選手の入場ですッッッ!!!」


『わあああああぁあ!!!』


 その瞬間、熱狂は更に爆発する。

 もう座っている人は視界に入らないほど、全員が立ち上がっていた。


 ついねぎまを口に持っていこうと動かした手も止まってしまう。

 そして中央の土でできたフィールドへ、壁の穴から選手が続々と出てくる。

 どうやら賭けていたり、推している選手を遠目でも見えているのか、


「ドルン、一位頼むぞぉお!!!」


「きゃああ!!ラナークさま、頑張って〜〜!!!」


「カインッ!俺はお前が一番強いって信じてるぞ〜〜〜!!!」


 人物名らしき単語が飛び交っていた。

 

 確かにこれだけの大舞台で300回も開催されているのだから、前回とかに活躍したところを見て応援しにくる人も少なくないだろう。

 あとは全国から集まるみたいだし、出身が同じとかね。

 でも大体の人は、賭けの印を握りしめて声援を送っていた。


「入場された選手の皆様は闘技場の壁へ手をついて下さい」


 その合図と共に、選手は壁へと向かい指示に従う。

 この状態から始まるのかな?

 

「それでは…この闘争の宴を竜王様へ捧げます。

第300回竜王祭、午前の部予選…スタートですッ!!」


 その言葉と共に、開始を告げる銅鑼の音が響き渡るのだった。


『うぉぉおおおお!!』


 観客席からの入り乱れる声援と共に選手達も動き出す。

 バラバラなスタート…だけど、一人抜けてるか?


「おっと最初に飛び出したのは56番、カイン選手だぁああ!!」


 あれがカイン…さっき応援で聞こえた人かな。

 でも確かに、他の人より明らかに速い。

 だってもう、


「カイン選手が旗へ触れた! さあ、60秒耐え切れるのか!?」


 中央まで辿り着いているのだから。

 2、300mぐらいはあると思うけど、それを3歩で駆け抜けた様に見える。

 脚力だけを魔法で強化するのに特化してるのかな?

 

 まだ他の参加者達は、半分の距離を超えたぐらい。

 でも装備がそもそも重いから、こんな短距離走みたいなことは不向きだ。

 カインと呼ばれている彼は、しっかりと魔法使いが着るような青色のローブのため身軽だった。

 そんないきなり走らされた結果、遠目から見ても明らかに減速した人も少なくない。

 かなりのスタミナを1人で削っただろう。

 …これ、最強戦法か?

 

「さあ、残り30秒を切りました。

カイン選手は5番人気でオッズは約8倍…ここで抜けてしまうのか!?」


 旗へ辿り着いた彼はただ時間が過ぎるのを待ってるだけではない。

 しっかりと魔法を撃ち、命中させていた。


 当たり前じゃんって思われるかもしれないけど、これが誰を倒しても銀貨10枚となると話が変わってくるのだ。

 正直中央に行っても止めれるか分からないし、その後勝ち抜けるかも分からない。

 だったら、魔法を喰らって態勢を崩したやつを倒してお金を手に入れた方が良くね?なんていう考え方もある。

 実際その思考が多数の様で、体勢を崩した男達は一瞬で群がられ……敗退していく。


「さあ、もう残り5秒しかないぞ!…ごお!よんっ!…」


 実況のカウントダウンが始まった。

 それに合わせて会場中から数字のコールが続く。


 旗を握る彼には、未だ刃は届いていない。

 

「いちっ、ぜろっ!…あれっ?」


 一人抜けた…という感じの盛り上がり方ではない。

 でも間違いなく、空中にカウントダウンがされていたのは1で止まっている。

 

「確かにいますね、もう1人」


 セフィの言葉と同時に実況も気づいたみたいだ。

 全身真っ黒のローブに身を包んだ人間。

 あれ、どこかで会ったような…


「なんとここで、横入りがっ!

名前は…え〜と、ライラ選手!

旗のルール的に、どちらかが手を離すまでカウントは進みません!」


 でも、そんな俺を置いて試合はどんどん進んでいく。

 両者片手を旗に握ったまま、戦っている様子がアップで空中に浮かぶ映像に表示されている。


「あの黒ローブの人、受付の時にいた人じゃない?」


「…ああ、あの時の!」


 ルシェのアシストで思い出した。

 確かにあの時強そうだなと思ったけど、ここで活躍してくるとは。

 

 カインも頑張ってはいるみたいだけど、前衛と後衛…流石にそんなに長くは持たなかった。

 黒ローブ…ライラ?っていうらしい人が思い切り突き出した右手の張り手、それはクリティカルヒットする。

 

「カイン選手、遂に旗を手放してしまいました!

もう一度旗で抜けるのを狙う場合、再度60からカウントを減らさないといけません!」


 そんな説明がされたけども…もう多分不可能だ。

 あの張り手は華奢な体格から放たれたとは思えない威力で、カインの体は土の地面を転がっていく。

 それで復帰…を許してくれるほど、甘くは無かった。

 続々と周りが囲まれていき、画面越しじゃなきゃ体が見えない。

 そして……程なく、リタイアしたみたいだ。


 ……南無、流石にトドメは刺されて無いと思うけど。


 あまりにも目立ちすぎたら、ああいう結末が待っているのか…怖過ぎる。

 いや、でも結構いい作戦だと思ったけどなあ。

 流石にこの光景を見せられたら、やる気は起きないけどさ。


 といっても目立ち過ぎたら、あの黒ローブのライラとやらも危ないはず……なんだけど?


「339番のライラ選手、人気として100番以下の圏外、オッズは…1000倍!?

賭けた方はいらっしゃるのでしょうか?物凄い活躍です!」


 凄い活躍…確かにそう言うしかない。

 だって彼女は旗を握り続けているため、片手はずっと塞がったまま。

 それは前衛にとって…しかも華奢で身軽な体格の選手からしたら、とんでもない枷。

 

 なのに、彼女より巨大な戦士も…放たれる魔法すらも通用しない。

 腰からチラリと剣の柄が見えたから剣士のはず、なのに徒手空拳だけで捌いていた。


「ライラ選手…5秒前です」


 今回は、会場から聞こえるカウントダウンの声は小さい。

 そう全員が息を呑んでいた、この一瞬を目に焼き付けるべく…。

 俺も例に漏れず、喋ることも出来ずに旗へ目線が釘付けだ。


 周りの選手達が360度全方向から、旗を目指して手を伸ばす。 

 だがカインと違って、近接も得意なライラには届かず…


「ゼロッ!! ライラ選手、予選突破です!

おめでとうございます!」


『わああああああ!!!』


 最後まで旗を守り切ったのだ。

 あれには流石の2人も、拍手していた。


「いやあ、凄い強者もいるものですね」


「面白かったねえ!ちなみにダンもやる?」


「…やりません」


 その要望にはNoで返す。

 流石にあれを捌き切るなら、『天魔合体』状態じゃないと無理だ。

 それに匹敵する…とはいわないけど、あれだけの武技はかなりの鍛錬を積まないと無理だろう。

 

 本当にいいものを見させてもらった…まあ、試合はまだ終わってないんだけどね。

 残りの4人の枠を争って、フィールドではまだバトロワが続いてる訳だし。

 でも…地味だ。

 

 だってあんまり派手に動いたりすると、多人数で襲い掛かられるかもしれないし。

 多分それが理由で固い動きを続けていつでも逃げれる様に。

 だから地味だと感じてしまうのだと思う。

 

 とはいえ、それも長く続かなさそうだ。

 だって、


「ここでドルン選手が、選手達を吹き飛ばしていきます。

これは決着は間近か!?」


 とんでもないサイズの矛、それを振り回している大男。

 ドルンと呼ばれた彼が、生き残るために時が過ぎるのを待つ人達を容赦なく吹き飛ばしていくのだ。

 まるで重戦車の様で、あれは止めれなさそうだ。

 だって一撃を喰らった人たちが、吹き飛び過ぎて10mはある客席まで飛んできてるし。

 

 止めれたとしても、その頃には残り人数が10人位かな?

 だから、もう満足したかな。

 

 そうして遅れない様に控え室へ戻ろうとしたところで、ふと足が止まる。

 ここって…賭けれるんだよね。


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