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悪魔と天使の言う通りに…ね?〜天使ト悪魔ノ囁キニ傾聴セヨ〜  作者: お汁粉パンチ
決闘都市ズィッペリン編

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第20話 控え室にて

「それでは、行って参ります」


「頑張ってくださいね!私達も応援に行きますから!」


「ふわあ…お兄ちゃん、頑張ってね」


「はい、頑張ってきます…では」


 まだ肌寒く、日の出より少し早いぐらいの時間。

 普段だったらまだ寝ている時間だけども、見送られながら少し早めに家を出る。

 バトロワ形式ということで遅刻は厳禁、そしてギリギリに行くと混雑しすぎて会場にそもそも辿り着けない可能性があるのだ。

 そのためこんな時間から家を出る事になった。


「自信はあるの?」


「…う〜ん、運次第?」


 そんな事をルシェに聞かれても、サントスさんと同じ事しか言えない。


「訓練も一応したじゃないですか」


「…2日間だけどね」


 そう、訓練もそんなに出来てはいなかった。

 クラーク家での初日と2日目はみっちりと、3日目は休息に力を入れ…4日目の今日が本番という形。

 でも対人は多少マシになったかもしれない。


 今までしょーもない喧嘩で手をあげたり、というのはあったけど傷つけようと思って拳を振るったこともない。

 それに武道系を習ってた訳でもないから、そもそもそういう行為に慣れていなかった。

 魔物だったらもう割り切って倒せるんだけどさ。

 そんな大会だと致命的な弱点は大丈夫…になったはずだ。

 抵抗はまだあるけど、魔物と違って殺さないといけないという訳でも無いし…。


「周りに参加者らしき人が増えてきましたね」


「うん、ピリピリしてる」


 今までは混んでいたけど、その人達は大体食べ歩きという感じ。」

 でも今日は違う、背中や腰に物騒な獲物を揃って携えていた。

 3mあるんじゃないかっていう巨体のものや、筋骨隆々とした人間に全身鉄の甲冑で覆った者も。

 そんな彼らからピリピリと張り詰めた緊張感が漂っている。

 そして全員、朝日が差し込むコロシアムへと吸い込まれていくのだ。


 あんなイカつい人達と剣を交えるのか…そう思うと、少し緊張してきた。

 普通に戦ったら、ボロ雑巾にされると思うし。


「ダン様…ですね。

こちらの第三闘技場午後の部では、2番ゲートから入場してもらいます。

試合までは看板に沿って歩いて頂ければ控え室がありますので、待機をお願いします。

それではご武運を!」


「ありがとうございます」

 

 受付証の木片を交換して、エントリーは問題なく出来た。

 選手が多くて、早く出たのに結構並ぶ事になったけども。

 そして選手の控え室がある方を手で示され、そちらへと歩を進めていく。

 

 ふと置かれた柵の向こう側に目を向けると、もう並んでいる人までいる。

 それも結構な人数がだ。

 こんな朝早くから…なんなら昨日から並んでいる人もいるかもしれない。

 確かに地球でもこんな行列に並ぶ人はいたけど、異世界にもいるのか。

 やっぱりこの都市に今いる人達のお目当ては竜王祭、その熱気が試合前からも感じられる。

 そうして関係者限定と思われるゲートを潜ると、


「これは…すごいな」


 今まで外壁しか見えてなかった場所が露わになる。

 石造りでここまで作れるのか…すごい高さの天井だ。

 掃除しきれてないのか煤けた部分も、時代を感じられるアクセントになっている。

 

 壁には動物の彫刻が延々と続いていく。

 ただ時間の流れとともに劣化してしまったのか、ウサギと鳥だけしか分からない。

 ちなみにゴブリンみたいな魔物も一緒に描かれていたりする。


「あそこが控え室かな」


 看板で示されたそこの入り口の前には、受付がある。

 そして選手というのを証明する板を見せ、


「どうぞ、お入りください」


 その中へと足を踏み入れた。

 ギロッッ…と入った瞬間から、部屋中の目がこちらへ向けられる。

 睨みつけると共に、値踏みされているのだろうか。

 そんな居心地の悪さを感じながら、部屋の隅っこのベンチに腰を下ろす。


「はあ…」


 この石を切り出した様なベンチは…長い間使われてるんだろうか。

 今回の舞台となるコロシアムと一緒に歴史を歩んできたのなら…ちょうど三百年目かな?

 第一回竜王祭と一緒に1から5の闘技場まで作られたらしいし。


 そんな歴戦の猛者が座ってきた場所に、俺も座っているというのは不思議な気持ちになる。

 スピリチュアルだけど、力をもらえる様な感覚も。

 

 いつの間にか向けられていた視線は霧散していた。

 あれかな、雑魚すぎてマークしなくて良いやって感じ?

 それは……本当にありがとう。

 

 襲ってくる人なんて少ない方がいいし、注目を集めない方がいい。

 これはゲームで学んだ、バトロワの基本?だ。

 ま戦場だったら全部そうかもしれないけどさ。


 真面目に考えると、隅っこを選んだからそうなったのかもしれない。

 多分自己評価が高い人は中央に近い場所へ座るだろう。

 今ど真ん中に座る角刈りの男は筋骨隆々とした体に無数の傷跡、そして体と同じサイズのハルバードを背負っている。

 気配から只者ではない雰囲気を出してるし、今回のバトロワの筆頭候補なのかな?

 彼はそんな視線を気にすることなく、目を瞑り精神を研ぎ澄ましていた。


「よっ!アンタ竜王祭は初めてかいっ?」


「うわっ」


 いきなり馴れ馴れしく、肩に腕を乗せられる。

 びくんっと体を震わせ、恐る恐るそちらへと顔を向ける。

 するとそこには、1人の髭面の男がニカッと笑っている姿が。


「え〜と…一応初めてです」


「ははっ、だろうな!肩の筋肉がカチコチだぜ?」


 男はこちらの肩をバンバンと叩いてくる。

 …確かに意識せず、硬くなってたかもしれない。

 あんまり縮こまってると舐められるし、始まった瞬間から狙われるかもしれないから気をつけないと…。


「ありがとうございます」


「いいって事よ!じゃあ、竜王祭を見たことはあるか?」


 その質問に対してもフルフルと顔を横に振る。

 そもそも異世界に来たのが最近だしね。


「そうか…なら見た方がいいぜ。

俺たちは運良く午後の部、午前の奴らを見てからやれるからよ」


 あっ、試合見ててもいいんだ。

 それは知らなかったから、素直にありがたい。

 流石にこの控え室で数時間待機はあまりにもキツすぎるしさ。

 だったら勉強も兼ねて、楽しく過ごせた方が精神衛生上良い。

 

『午前の部試合開始、30分前で〜す!』


「あっ、じゃあ見に行きますね。

ありがとうございました!」


 そうして俺はベンチから立ち上がり、出入り口へ体を向ける。

 するとバシッと手首を掴まれる。


「いやっ、俺はそんな話がしたかった訳じゃないんよ」


「…というと?」


 そうして聞き返すと、彼は立ち上がりまた腕を回してくる。

 そして2人の体の正面は壁に向かう。

 まるで秘密話をする様な体勢となり、


「俺たち……手を組まねえか?」


 持ちかけられた話は…ほぼイカサマだ。

 だってこれはゲームでいうチーミング行為、この異世界の大会でも…


「…それ、反則ですよね?」


 しっかりと規制されている。

 しかも禁止事項としては上から2番目…ちなみに1番は試合以外の私闘だ。

 

「いやいや、毎年やってる奴がいるけど出れてるんだぜ?

有名無実化ってやつさ」


 それは出場停止になってもおかしくないと思うけど…。

 分からないが、流石に俺がどんだけ弱くてもそれには手を出さない。

 というかそもそも、


「見にくる方もいるので、流石に出来ません。

それでは、失礼します」


 貴族が見てるのに、そんなことしたらどうなるか分からない。

 師匠のサントスさんにもボコボコにされそうだ。


 それになんかこちらに痛いほど視線を向けられていた気がする。

 煩くて…っていう感じではないかな。

 やっぱり、ああいう事を考えてる人は例年いるんだろう。

 だから牽制も込めて目線をやってきたのだろうか?


 とはいえ、ありがたく教えてもらった観戦はしよう。

 情報はあるだけ、嬉しいものだし。

 予選を抜けれたら、午前の部を抜けた人と当たるかもしれないしね。


「ちーみんぐ、とやらはやらないんですね?」

 

「いや、俺をなんだと思ってるのさ」


 試合を見るために階段で上がっていく最中、セフィに話しかけられる。

 おれ、そんな汚い手を使うと思われてる?

 それは侵害すぎるけど…でも、


「まあ、任務をクリアするだけならやった方が良かったかな?」


 というのはちょっと思う。

 でも、やっぱり優勝に傷が付くし、それが原因で魔女との対決の機会が奪われる方がキツイか。


「いえ、正解だと思いますよ。

それに…受けてたら、セフィポイントが5ポイント下がってました」


「その新しいポイントは何!?」

 

 ただでさえ慣れない場所にいるのに、新しい概念を持ち込んできて頭を混乱させないで欲しいんだけど…。

 

「…じゃあ今回の対応は?」


「セフィポイントが10ポイント上がりました」


「それは…ありがとう、で良いのかな?」


 よく分からないけど、好感度みたいな感じなのだろうか。

 なら人がチーミングしてるっていう嫌悪感の倍好きになったって事?

 ……結構好きって事じゃん、なんか照れるな。


「なら、予選で貸してくれる力に期待して良いのかな?」


「それはですね…」


「今回は私の担当だよ〜」


 そう言いながら、後頭部にルシェが抱きついてきた。

 彼女の身につけているのは露出度の高い服。

 だから彼女がフィギュアサイズでも、幸せな感触が感じられてしまう。


「……不潔です、20ポイント下がりました」


「それは下がりすぎじゃない!?」


 どんだけ嫌なのさ!

 ちょっと、ほんのちょっとだけ思っただけなのに…。

 目の前に浮く彼女はプンッと横を向き、怒ったアピールを強くしてくる。

 その膨らんだ頰…ちょっと突っついてみたくもなるけど、怖いのでやめておく。


「お堅いなあ、セフィは」


「…それで、今回は何を貸してくれるの?」


 2人の喧嘩は、良くないけど無視するに限る。

 それに今は、目の前の竜王祭に集中した方がいい。

 貸してくれる物…なんだろう、怨念銃は…ヤバすぎるか。

 流石にコロシアムを貫通して街までダメージを与えたら、失格間違いない。


「今まで貸したやつって、私の手持ちの中でもクセが無いやつなんだよねぇ。

大体他のは、呪いのアイテムだしさ」


 クセはない…か?

 でも初心者でも使えるのは確かだ。

 最初にゴブリンを撃ったのも怨念銃も引き金を引くだけだし、使うだけなら誰でもできる。

 

 怨念銃を使わないなら、最初の銃…はちょっと火力が足りなさそうだ。

 あのカラゴ市防衛戦で弓使いを見た時、そっちの方が火力が高そうだったし。

 このレベルだと実用に耐えないかもしれない。


「ダンも呪いのアイテムは嫌でしょ?」


「まあ、後遺症が残る様なものはちょっと…」


 どこまで行っても、これ予選だしね。

 本戦で何回も戦わないといけないし、変なペナルティは受けたくない。


「じゃあ今回はアイテムじゃなくて…権能を貸してあげよう」


「権能…って何?」


「う〜ん、超能力って言った方が伝わるかな?」


 …なるほど、それは…めちゃくちゃ面白そうだ。

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