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天使と悪魔の言う通りに…ね?〜力を貰えず異世界へ…だから2人とも、俺に力を貸してくれないと死んじゃうんだけどッッ!?〜  作者: お汁粉パンチ
決闘都市ズィッペリン編

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第18話 クラーク伯爵家

 少女を助けたお礼として屋敷内へ招かれ、俺は2人でお茶していた。

 割ったら金貨が何枚も飛んでいきそうなカップ、そこに普段飲んでいる物とは香りからして違う紅茶。

 砂糖が高いこの世界、こんなフワフワな焼き菓子はいくらするのやら…。

 ちなみにルシェは誰にもバレない様にクッキーや、俺の食べている焼き菓子なんかをムシャムシャと。

 …そんな平穏に時間が流れる中、


「リーン!」


「…ジュリ姉っ!!」


 バンッ!と大きな音を立てて、部屋の扉が開かれる。

 そして弾丸の様に飛び出てきた女性と、リーンが抱き合っていた。

 誰だろう…いや、この人が噂のクラーク伯爵家の長女…ジュリエッタさん、だろうか。

 確かに特徴的な銀髪がお揃いだ。


「ほんとうにっ、無事でっ…良かった…」


 そんな感動の再会に、彼女は涙さえも浮かべていた。


 …この空気の中、どうしようか。

 今紅茶を飲もうとしてカップを持ち上げたとこなのだけど、この光景を見ながら飲むというのは…アレだ。

 俺が貴族なら許されるかもしれないけど。

 行き場を失ったカップはそのまま机に置かれ、カチャンという音を鳴らす。

 そこで初めてこちらの存在に気付いたみたいだ。

 

「あなたは…」


「お初にお目にかかります、ジュリエッタ様。

私はダン、銀級の冒険者をしております。

そちらにいらっしゃる、リーン様をこちらまでお連れさせていただきました」


 俺は即座に椅子から降りその場に片膝をつくと、その口上を放つ。

 一応ただお茶していた訳ではなく、この文を考えていたのだ。


「……はい、本当にありがとうございました」


 …あれ、あんまり反応が良くない。

 何か無作法とか言葉遣いで良くなかったところがあった?

 とはいえ顔を勝手に上げるのも…


「魔法使いさん、お顔が見えてないよぉ」


「あっ」


 その言葉で完全に理解した…してしまった。

 そう、部屋の中央にテーブルが配置され、入り口側に彼女達2人がいる。

 だから俺が屈んだら、白いテーブルクロスによって完全に姿が消えてしまうのだ。


「あらら、やらかしちゃいましたね」


「あははっ!笑いは取れてるよ!」


 外野の声も相まって恥ずかしさは、頂点を超えていきそうな勢いだ。

 体から嫌な汗が浮き出て、顔が熱い。

 誰か俺を殺してくれ……


「もし死んだら生き返らせますよ」


「じゃあ、私が怨念銃で…」


 いや、あくまで比喩だから!まじで殺そうとしないでくれ…。

 というか怨念銃は、俺だけじゃ済まないから冗談でも使ってはいけない。

 てかそんな物当たったら体が消し飛んで、蘇生出来なさそうだ。


「その場合はその辺の人形にでも魂を入れますから、安心してください」


 …やっぱり怨念銃はダメです。

 そんなやり取りを心の中でしていると、


「ふふふっ、ご丁寧な挨拶ありがとうございます! 

私はジュリエッタ・クラーク、現在この館の主をさせていただいております。

まずはご着席下さい、お茶でも飲みながらゆっくりとお話ししましょう」


「あっはい、ご親切にどうも…」


 そうして彼女に促され、再度席へと座ることに。

 反対側の席で2人とも同じ様に…俺より年下なのにしっかりしている。

 一つ一つの動きが洗練されているのは、やはり幼い頃からしっかり教育を受けているからだろう。

 

 そうしてコトリと、ジュリエッタさんの前にカップが置かれたところで話が始まった。

 まずはこちらがリーンと出会って、どうやって泣き止ませたりとか、どういうルートで来たのかというものを話していく。

 その後に彼女達の話を聞くと、どうやら彼女達も竜王祭が目当てみたいだ。

 数多の原石達が集まるこの場でスカウトが、2人のお仕事らしい。

 リーンは、社会経験を積ませる為の付き添いという感じかもしれないけど。 


 やっぱり、この竜王祭でスカウトされる人も少なくないという話は本当みたいだ。

 彼女の話によれば、それを目的としてくる他の貴族もいるらしいし。

 それどころかこの国…ちなみにライラック王国というのだけど、王族も観に来るレベルらしい。

 流石に国王とまではいかないけど、今年は第二王子と第一王女が来るみたいだ。

 だから一目見ようと人が多かったりするのかな?

 この国の王族の人気度合いは、よくわからなけども。


「それで、お礼はどうしましょうか。

宝石や金貨の方が扱いやすくていいですかね?」


 そして話は雑談から報酬へと変わる。

 宝石や金貨…正直困ってはいない。

 多分何十年も働かなくて生きていけそうなぐらいには持っているし。

 だから今、お金だけでは解決できない問題…


「厚かましいことを承知で、一つお願いしてもよろしいでしょうか?」


「はい、大丈夫ですよ」


「私は竜王祭に出る予定なのですが、宿がありません。

ですのでクラーク家のツテをお借りさせていただき、どこかへ宿を用意して頂けないでしょうか?」


 そう、これが一番お願いしたいことだった。

 正直報酬を貰おうと思って動いた訳じゃないけども、貰えるなら利用させていただきたい。


「なるほど……ですが、今の時期は空いていないでしょうね。

貴族としての威光を使えば一部屋ぐらいは譲っていただけるかもしれませんが、追い出す形になってしまうかもしれないですし…」


「そう…ですか…」


 残念ながら、無理みたいだ。

 流石に人を追い出してまで宿に泊まろうとは思わない。

 しょうがないし、野宿かもっと粘り強くキャンセル待ちをするしかないか…


「ですから、この屋敷の一室に泊まっていってはいかがでしょう?」


「……え?」


 と思っていたのに、彼女から告げられたのはそんな予想外の言葉。

 

「いや…えっ?」


「ご不満でしょうか?出来る限り、おもてなしさせて頂ければと…」


「いやいやいや、そんな不満なんて全くないです。

ですが…よろしいのでしょうか?私の様な身分のはっきりしていない男を、屋敷に入れてしまって…」


「…なるほど、そういうことでしたか。

それでしたら、全責任を負っている私が良いと言ったのですから大丈夫ですよ!

しっかりと竜王祭が終わるまで、客間を用意させますからご安心ください」

 

 なんかこちらが言わせる様に仕向けたみたいで申し訳ない。

 …でもここまで言われてしまったら、むしろ断る方が失礼な気もする。

 そのため、


「それじゃあ、お世話になります」


 テーブル越しに頭を下げ、素直に受けることにしたのだった。

 でもこれで念願の寝床をゲットだ!

 

「野宿にならなくて良かったですね」


「貴族のベッド、きっとふかふかなんだろうなあ…待ちきれないや!」


 セフィもルシェも喜んでいるみたいだ。

 野宿だとコンディションを崩しやすいだろうし、こう最高の環境を手に入れれたのは魔女の討伐を待つ2人にとっても良いことなんだろう。

 それに彼女達に寝ずの番をしてもらう必要も無いしね。


「じゃあ私からも1つお願いしても良いですか?

別にこれを断ったとしても、追い出しませんが…」


「いえ、私にできることなら何でも!」


 そうして調子に乗って安請け合いしてしまう。

 すると彼女はパチンと体の前で手を叩くと、嬉しそうに顔を綻ばせる。

 そのお願いとは、


「ならぜひ庭で、戦っているところを見せてもらえませんか?」


 …うん、あんまりやりたくない奴だった。


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