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天使と悪魔の言う通りに…ね?〜力を貰えず異世界へ…だから2人とも、俺に力を貸してくれないと死んじゃうんだけどッッ!?〜  作者: お汁粉パンチ
決闘都市ズィッペリン編

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第17話 決闘都市ズィッペリン

 決闘都市ズィッペリン…人の往来が多すぎないか? 

 足を踏み入れた瞬間から分かった。

 人混みに流され…流され、ようやく一息つける場所へ。

 といっても、ただの路地裏なんだけどさ。

 

「すごい人集りですね」


「人がゴミの様だっ!なんてね」


 もうメインストリートを歩くのは辛い、辛い。

 祭りでもやっているのか?それは…正しかった。

 年に一度行われる、この国で一番強い人間を決める大会…竜王祭、それの開催が数日後に迫っているのだ。

 だから大会で活躍からの出世を狙う者や、その熱い戦いがお目当ての見物客が大勢集まっていた。

 実際この大会をきっかけに貴族お抱えの騎士団に招かれたり、婚姻関係が結ばれたりと人生を変えうる大会、とは御者のおじさんの情報である。


 後は、カラゴのギルマスからもらったメモ。

 ここに簡単な大会についての説明が載っており、これが貴重な情報源だった。

 確かにこれだけの人数が集まり、高順位を取ったのなら人生が変わるに違いない。


 俺はもう人生変わっちゃってるし、力を借りないと非力なのでパス。

 …といきたいところなんだけど、


「この中で1位ですか…魔族を倒すよりも大変そうですね」


「本当本当、あんまり力も見せれないしね〜」


 どうやら1位を取らないといけないらしい。

 俺たちの目的は魔女ステラの討伐、だけどもそこに挑むためにはこの竜王祭で一位になる事が必須条件。

 それをパスして暗殺…という裏ルートは、誰も顔を知らないので出来ない。

 あと、この人集りの中で市街地戦は被害が大きく、危なすぎる。

 誰よりも任務達成を望むセフィも、下界の人間を傷つけると天界スコアに響くため正々堂々の挑戦を推奨してきた。


 ルシェは…どっちでもいいらしい。

 一応旅の間は自由な訳だしすぐ倒さなくても、っていう考え方もある。

 そんな感じなのかな?


 俺も市街地戦はやりたくない、被害も大きいし。

 そしてあの悪魔は魔女を随分恨んでいる様子だった、なのに手を出していない。

 ということは、あの悪魔より格段に強いはず…だから全力の力を振るえる場所でないと多分勝てない。

 そのためもう、目立つ正攻法しか残されてないのだ。

 

 嫌だけどね…だって変身前に潰しにくる人がいるかもしれないしさ。

 それに相手は人間。

 拳を振り下ろさないと勝てないのに、力の差があったら手加減をしないといけない。

 ……もう悪魔を倒すよりもハードモード?


 何はともあれ、なる様になるしかないのだ。

 だから大会のエントリー…その前に、


「…宿、取れるかなあ?」


 0回戦が始まるゴングが鳴った。

 …きっと空耳だ。




 そうして宿屋を巡る俺達だったけど、


「申し訳ありませんが、現在満室でして…」


「そう、ですよね〜、お手数をおかけしました」


 0回戦敗退の危機だった……。


「今、空いてる場所ありますかね?壁外の街で探すか、それとも野宿か」


「まあ、開催までに宿を引き払う訳ないよねえ」


 セフィとルシェの言う通りすぎて、何も言い返せない。

 これで十数回目ぐらいの失敗だ。


 そう、俺たちは開催までの宿が欲しいのに、それは他の人たちも同じ気持ち。

 流石に開くことはなかった。

 ついさっき埋まったんですよ、みたいな心を的確に折ってくる事象もあったし…。


「とはいえ、どうしようか…」


 あの壁外の街で探す…う〜ん、別に壁内と同じ感じになりそうだ。

 じゃあ野宿、例えばこの路地裏とか…流石にキツい。

 季節的にはちょっと肌寒いから、火もなしに野宿はコンディションを崩しそうだ。

 風邪なんて引いたら竜王祭どころじゃない。

 しかも二つとも治安が不安だ。

  

 持ってる資産はかなりの物で、報奨金の金貨50枚に宝石の散りばめられた剣、それに元々持っていた額を足した感じ。

 賞金額的には、竜王祭でTop8になるとこれくらい貰える。

 そんなお金を、その辺の路地裏にいる奴が持っているのだ。

 倒しやすいけど金をいっぱい落とすタイプのレアエネミー、みたいな扱いで狩られてもおかしくない。

 

「う〜ん…お金を払って、民家を持ってる人に間借りさせて貰うとか……ん?」


 今俺がいるのは、大通りから路地裏へ行く入り口付近。

 だから大勢の人の往来が目に入る。

 そのためよく見えたのだ…反対側で泣く銀髪の少女が。


「びえええぇええん!!ひぐっ!!」


 でも誰も助けに行こうとはしない。

 かなりの人が行き交う中で放置されてるのは…なんだろう、探せないからかな?


「…助けに行こうか」


 彼女達と顔を合わせると、頷きを返され向かうことに。

 とはいえ、これだけの人の濁流の中探すのは至難の業だ。

 集合場所とか彼女の保護者が決めていないと、不可能かもしれない。

 といっても、


「どうかしましたか?誰かとはぐれてしまいましたか?」


 流石に見過ごすのも後味が悪い。

 どうせ今から宿を探しても、空きなんて無いだろうしね。

 膝を折り、少女と同じ目線の高さになる。


「ぐすっ…ぁっ、おねえ…びぇええええん!!!」


 どうにか、こちらの存在には気づいてもらえたみたいだけど、上手く喋れないみたいだ。

 それでまた泣き出してしまう。

 いやあ…背中に感じる視線が痛い。

 まるで風邪で倒れてる自転車を起こしている最中、持ち主と思われる人とばったり会ってしまった時の様な居心地の悪さを感じていた。


 そんな話はともかく、こちらには手がないんだよなあ…。

 子どもの相手をするのに慣れているならあれだけど、俺はそんな経験はあまりない。

 ましてや、迷子っぽくて泣いている子どもの相手は。

 何かいいアイデアは…あっ。


「セフィ、あのさちょっと耳貸して」


 ゴニョゴニョと彼女へ、その内容を話す。

 

「なるほど…じゃあ準備しますね」


 乗ってくれたセフィが準備を始めてくれる。

 そして俺は、目の前の迷子の少女と同じ目線で向き合う。

 少しだけ経ったところで、


「いつでもどうぞ」


「ここにタネも仕掛けもない、両手があります。

この手から私は、世にも美しい花を出して見せましょう!」


 そんな合図と共に、俺は両手の手のひらを少女へ見せる。

 今は何も持っておらず、それを隠せる様なシャツの袖は捲り上げていた。

 そして涙の溢れる目を擦る手の隙間から、少女の目線を感じたところで、拳を握り込む。


「それでは、この拳に魔法をかけていきますよ…トントントンっと」


 左手の握り拳に対して、右手の人差し指でノックをする様にトントントンとリズム良く叩く。

 反対側も同じリズムで叩いたところで、両手に作った拳を横にガッチャンコする。

 

 というか、日本のテレビ番組で見た流れでやってしまったけど、魔法って言ったらダメだったんじゃないか?

 だって、本当の魔法使いがいる世界なんだし。

 ……ま、いっか。


「魔法がかかったので、カウントダウンしていきましょう。

さ〜〜ん、にぃぃ〜〜…」


 拳から、光が漏れ始める。

 きっと少女にも見えているだろう。

 もう涙は止まったみたいで、手の動きはフリーズした様に…でも目線はこちらの手を掴んで離さない。


「いちっ…ゼロッッ!

それでは開いてみましょうか」


 手首を返していき、握った花を陽の光に当てる様に持ち上げる。


「っと、こんな綺麗な花が出てきました!」


「わぁあ!!」


 そうして開かれた拳の中から、一輪の花が姿を表す。

 それはまるで白いスイセンの様な形をした花。

 …こんな花が出てきてたんだ。


「セフィ、これあげても大丈夫?」


「ええ、有害ではありませんから」


「…それでは、お嬢さんにこちらの花をプレゼント致しましょう!」


 そうして両手を皿の様にして差し出すと、目の前の少女は恐る恐る手に取る。

 そんな少女に手に取られたスイセン?は、まじまじと見つめられていた。

 俺が触った時に、清浄な雰囲気を感じたのは気のせいかな?

 …有害なものじゃないらしいしいっか。

 確か地球のスイセンは、毒があった気もするけどさ。


「ありがとっ、魔法使いのお兄さん!」


「…どういたしまして、迷子ですか?」


 やっぱり魔法使いと思われたみたいだ…まあ、いいんだけどね。

 そしてそんな少女に質問してみると、急にどんよりとした表情になり…静かに一回頷く。

 そりゃあこの歳ぐらいだと、迷子になった時心細いだろう。


「では、私が探して見せましょう!」


「…ほんと?」


「ええ、だって私はマジ…魔法使いです。

この人が沢山いる中でも、探せると思いませんか?」


 そこでようやく少女から笑みが溢れる。

 そして何度も頷く様にして頭を動かしながら、


「思う!!」


「じゃあ、いきましょう!

背中に乗ってください、あっ…え〜と、お名前は?」


「リーン…リーン・クラーク!」


 ……貴族!?

 いや、苗字があるだけの可能性も…多分なさそうだ。

 今まで会った人達全員、苗字…というか家名が無かったし。

 苗字があったのは、あの戦勝記念パーティーに参加している様な上流階級の人達だけだった。

 

 というかそんな少女が迷子って、大丈夫なのか?

 普通に護衛の首がとんでもおかしくなさそうだけど…。

 うん、なるべく早めに見つけれる様に動こう。

 

「リーンさんは、どこに泊まってるんですか?」


「う〜んと、お家っ!」


「なるほど…ちなみにリーンさんは貴族なんですか?」


「うんっ、クラーク伯爵家の次女!」


 …伯爵家、おんぶだから引き攣った笑みがリーンに見られなくて良かった。

 この国での貴族の序列は分からない、でも上から数えたほうが多分早いだろう。

 誘拐犯扱いされないだろうか…ああ、胃が痛い。


 とはいえ、いい情報ではある。

 伯爵家の家、ということは多分屋敷が壁内にあるだろう。

 だから聞き込みをすれば、そんなに難しくはないかな?


 

 まずは近くの出店の人から、商品を買いがてら話してみるけど知らないと言われてしまう。

 でも粘り強く話を聞いていると、


「貴族の屋敷だぁ?こっから北に行けばいっぱいあるだろ?そこにあんじゃねえか?」


 そんな有力な話を聞くことが出来た。

 

「これなら、屋敷まで行けそうですね」


「うんっ!!」


 そうして人の流れを掻き分けて行き、北へと歩を進めていく。

 どこもかしこも、人人人…屋台屋台屋台だ。

 

 そんな中でも、街中に大きなコロシアムが何個も点在している。

 外からみる限りでは、プロ野球が行われるドームサイズだろうか。

 それが何個も壁内にあるって、この都市どんだけデカいんだか…そりゃあ迷子にもなる。

 じゃあなんで、こんなに混んでるんだよ!って叫びたくなるけどさ。


 そうして人の流れに身を任せながら移動していると、少しずつすれ違う人が少なくなっていっていく。

 方角的には北で合っているはずだけど…あっ。

 確かにあの屋台のおじさんのいう通りだった。

 左右には到底俺の稼ぎでは住めなそうな巨大な屋敷が立ち並び、街の喧騒から離れた様子な静けさ。

 

 これは…屋台の人達が知らないというのも分かる。

 だってこんなところ、場違い感が凄すぎてあんまり居たくないし。

 

 そんな訳で早速探して行きたいのだけど、あんまりウロウロするのも良くないと思う。

 だって各屋敷の前には門番と思われる男が立っているから、そんなことをしていると衛兵に不審者として突き出されるかもしれない。

 だから、


「すみません、お聞きしたいことがありまして…」


 一番近くにいた門番へ話しかけることにした。


「なんだ?観光するなら来た道を戻ればいいだろう。

ここはクォーク男爵家の邸宅前である、早急に要件を申す様に」


「えっとですね、こちらの背中にいるお嬢様が迷子の様でして。

名前はリーン・クラーク、貴族の一員の様なのですが…」


「リーン・クラーク、クラーク……クラーク伯爵家!?あのっ!?」


 あのって…どの!?

 よく分からないけど、反応的には結構有名な家らしい。

 多分貴族の門番という都合上、その辺の事情に詳しいということもあるのかな?

 そうして門番のおじさんは、ジィッとおんぶしたままの少女と睨めっこする様に見つめ合い、時が過ぎていく。


「リーン様か、確かに姉君と同じ髪色だが…う〜ん。 

ジュリエッタ様ならお顔が分かるのだが…」


「先輩!俺は分かりますよ、一緒にいるところも見ましたし。

それに、この腰のベルト…家紋が入ってます」


「…確かに、これはクラーク家の家紋で間違いないな」


 そして話にはいってきたのは同じ家を守る門番、どうやら話しかけた人とは先輩後輩の関係みたいだ。

 どうやらベルトに重要な証拠があったらしい。

 少女はワンピースを腰の辺りのベルトで締めるという格好をしていた。

 貴族の家紋なんてカラゴ家ぐらいしか見た事ないし、俺が見ても模様なのかなぐらいしか思わないだろうけど。

 

 そこからはトントン拍子で話が進んでいく。

 一応身分証明のために銀級の冒険者のタグを見せ、邸宅の場所も口頭で教えて貰えた。

 流石に門番だし、ついてきてもらうのは残念ながら不可能だ。

 あと借りを作りすぎると、貴族家同士で困ったことになるかも…という話もちょっとだけ。


「親切にありがとうございました」


「いや、礼には及ばない。

もしまた分からなかったら、その辺の門番に聞くといい。

リーン様の家紋を見せれば、邪険には扱われないはずだ」


 彼らへぺこりと頭を下げ、教えてもらった方向へと進んでいく。

 これで邸宅に、行けるはずだ。

 ここから左の邸宅6つ、そこで左へ曲がり…5軒いったところ…。


「…あそこか?」


 まだ曲がり角を曲がったところ。

 それで邸宅の数を数えようと思ったのだけど、道を見るだけでなんとなく分かった。

 なんか家の前で集合しているのだ、使用人?の格好をした男女が。

 

 カラゴ家にいた執事やメイドと同じ格好に見えるし、多分間違いない。

 流石に平常時であんな事は起きないはず。

 だからあれは…背中にいる少女、リーン・クラークの捜索隊だろう。

 このまま散られてしまうと、大変かもしれない。

 そんな訳で、


「少し急ぎますよ」


「うんっ!……あっ、エリス!!」


「リーン様ッ!?」


 少女の許可を貰って、少しだけ早歩きにする。

 そしてどうやら、本当にあの輪の中に知り合いが居たらしい。

 そんな会話が行われた瞬間、グリンとその場の全員がこちらへと視線を向けてきた。

 なんか…変な緊張するからやめて欲しい。


 あちらから使用人たちが駆け寄ってくるので、こちらもその場にしゃがみ、リーンを下ろす。

 そうすると、先ほどエリスと呼んで反応した女性のメイドとリーンは抱き合う。

 いやあ、感動の再会で良かった…ん?

 

 なんか、ものすごい視線を感じるのだけど…。

 まさか、薄汚い下民がウチのリーン様に触りやがってって感じなのか!?

 そうして執事と思われる男達や、庭木を手入れしてそうな格好の男たちがにじり寄ってくる。

 それは本当に勘弁してくれッッ……


「ありがとう! リーン様を探してきてくれたんだろ!」


「この人だかり、流石に簡単には見つからないだろうと思ってんだ…まさか連れて来てくれるとは!」


 …あれ?

 思ったより、普通の反応だった。

ここから決闘都市ズィッペリン編が始まります!

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