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悪魔と天使の言う通りに…ね?〜天使ト悪魔ノ囁キニ傾聴セヨ〜  作者: お汁粉パンチ
カラゴ市編

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第13話 絶体絶命…

「こっちかな?」


 人の手が入っているのか、歩きやすい森の中。

 もしかしたらいつもは静かな森の中で小鳥の囀りが聞こえたりする場所なのかもしれない。

 ただ放った一撃…二撃によって、随分と混沌とした状況を引き起こしていた。


 魔物と戦う剣戟の音が響き渡り、悲鳴も鳴り響いている。

 それは魔物だけ…でもない、人間側からも悲鳴は上がっていた。

 別に優しかったり、一刀で斬り捨てれる様な魔物だらけでも無い…だからしょうがないのだ。

 そして多分後方に主力と思われる力自慢のオーガが控えてたせいでもある。

 出来れば巻き込めると良かったのだけど、それが叶わなかったせいでこうやって出てきていた。


 背中を見せて逃げる中、追いかける人間をオーガが狩る流れ…あんまり良くないな。

 これが敵の作戦なら、早くボスを仕留めないとまずいか?

 そんな親玉の位置は…手元にあるこのコンパスが捉えていた。


 だから出来るだけ急ぐために速く…としたいんだけど、逆に速すぎたら目立ってしまう。

 それでバレて逃げられたら最悪だ。

 そのため出来るだけ姿勢を低く、それを意識した結果四足歩行で走っていた。

 

「あのですね…これ、英雄の姿には見えませんよ。

翼も土で汚れちゃってますし…」


「あっはっは、良いね。 大丈夫だってセフィ…見る様な人間、誰もいないしさ」

 

 …好き勝手言ってるのは、聞こえてるんだけど!

 確かに翼を持ってるのに、四足歩行してる生物は見た事ない…いやあるわ。

 そう、虫だ………最悪。

 これは気づかない方が幸せだったかもしれない…。

 

 そんなことを考えていると…腕時計の様につけたコンパスの針が激しく揺れる。

 咄嗟にキキーっとブレーキをかけ、少し立ち上がり先を覗いてみる。

 これは、首謀者の位置を表していると思われる場所が近いとこうなる、と事前にルシェから言われていた。

 敵がいるかは分からないけども、何か広場っぽい空間は見えた。


 そんな最中に他の敵に見つかると面倒だ…例えゴブリンでも声をあげられると困る状況。

 ただ、もう敗走の流れになっているのか、その広場も通って逃げていく感じだ。

 …親玉もそろそろ逃げに転じてもおかしくない。

 気持ち早めに…だけど慎重に距離を詰めて行く。

 そうして地面にうつ伏せの状態で草を掻き分けると、その光景が目に入った。


「くそっ!くそっ…なんで、失敗してやがる」


 何かが積み重なった山、その頂上から神経質そうな男の声が聞こえる。

 どうやら今の状態だと、視力も強化されているみたいでその状態がよく見えた。

 

 不満を漏らす彼は苛立たしげに親指の爪を噛んでいる。

 そして頭からは…立派な一本角が生えており、先ほどの怨念の様なドス黒いカラーの翼が…尻尾がユラユラと揺れていた。

 その姿を見れば敵の首領がどんな存在かぐらい分かってしまう。


「悪魔…」


 それ以外の何者でもない。

 彼?が腰掛けている何かが積み重なった山、それは元を辿ると生物だったものだ。

 一番土台の部分には道中で出会いもした体の大きなオーガが、そしてハーピィらしき翼やナーガの尻尾…ゴブリンの緑色の部位が見え隠れしている。

 そして……それだけでは無かった。


 先に…数が少なくも、辿り着いていた人間もいたのかもしれない。

 元は人間が装備していたものだろう、折れた剣や槍がその山へと乱雑に突き刺さっている。

 まるで登るものへ見せつけているみたいだ、もし挑んだ際の末路を…。

 

「…ぐっ」


「うるさいな…」


「がはっっ!!」


「ガンメイッッ!!」


 まさか、生き残りがいるのか…あの頂上に。

 確かに目を凝らすと見えた。

 今殴られたのだろうヘルメットの様な被り物を落とした男…そして褐色の女戦士の姿が。

 そんな2人は何かに使われるのだろうか、魔物とは違って生かされたままタワーの素材にされている。

 …なら、救助をすべきだと思う。


「良いですよ、あそこまでなら……一歩で行けます」


「さあ、やっちゃおうよ…悪魔狩り」


 心を読んだのだろう2人の後押し、うつ伏せからしゃがみへと体勢を変える。

 そして剣を片手に脚へ力を込め……踏み切った。

 

「なっ!!!」


 弾丸の様に射出された体、その魔物たちの積み重なった山なんて容易に頂上まで辿り着ける。

 驚愕の表情を浮かべる悪魔へ、横一文字を描く様に握りしめた剣を振るう。

 それを咄嗟に悪魔はガードしようと片腕を構えるが、それも容易に骨まで断ち切り…その体へまで剣先は届いた。

 だが手応えはあまりない。

 切れ味が良すぎるというのもあるけど、少しこっちがチキってしまって早く振り過ぎたかもしれない。

 だから多分、表面の肌を斬り裂いたぐらいだった。



 俺たちは胸から青色の血を流す悪魔と共に、落下していく。

 ただ衝撃でか一緒に落ちてきた2人を途中で抱き抱えたため、追撃は叶わない。

 そうして着地の際に脚へと伝わる衝撃…多分この状態じゃなかったら、普通に骨が粉々だ。

 でも今は何ともなく、手に抱えた2人を地面へと優しく寝かせ、敵へと体を向けた。


「何だ…お前は!」


 開口一番叫んできたのは、問いだろうか?

 切り裂いた腕が元々あった部分からは、致死量の血液がドバドバと垂れ流しのままだ。

 胸からも浅くはあると思うけど、無視できない量が。

 

 このままだと…こっちが待ってるだけで死んでしまいそうだけども。

 でもやっぱり、名乗るのがこういう戦場なら礼儀なのかな?

 戦国時代もちゃんと名乗ってから戦うらしいし、


「名前はダン、見習い冒険者です」


「それだけの獲物、見習い冒険者が持っているはずがないだろうがああ!」


 …むしろ怒らせてしまった。

 いや、さっき冒険者になって、嵌められたみたいな感じでここにいるんだなんだけど…。

 でも結果オーライなのか、血はブシャアッと更に勢いよく吹き出して、体の寿命を縮めていく。


「フンッ、まあ貴様が何者だろうと関係ない」


「じゃあ、何で聞いたのさ」


「……腕を治せば、それも関係n……ん?」


 流暢に話していたはずの悪魔の動きが止まる。

 話の流れ的に…治せるはずの腕が治せなかった?


「ええ、もちろん切れ味がいいだけじゃないですよ。

魔のモノを斬れば、その部分は再生しませんから」


「…それ言ってたっけ?」


「…………普段使わないので」


 隠されし効果?があったらしい。

 でもこの状況だとクリティカル過ぎた。

 治せないなら…いよいよヤバそうだけど。

 


 あっ、そういえば魔女って悪魔の仲間だったりするのだろうか

 翻訳がわかりやすい様にしてるだけかもしれないけど、魔ってつく存在って少ないはず。

 魔物は喋れないし、こうやって会話できる存在は貴重だと思う。

 じゃあ死ぬ前に…


「あの…もしかして、貴方達の仲間に魔女って居ます?」


「魔女?あやつらが………仲間?

魔王様の死後、その力を啜り…本能のままに生きる売女が?」



「そんな訳…ないだろうがああああ!!!」


 軽い質問だったはずがそこにとんでもない地雷が埋まっていたらしい。

 急に消えてしまいそうだったはずの、存在感?が跳ね上がる。

 細身で痩せこけていた悪魔の体から筋肉がボコッ、ボコっと隆起していき、その姿はまるで…オーガレベルだ。

 

 顔は人間基準で小顔といえるサイズのまま、それとはアンバランスに筋肉が隆起した体は戦闘に特化したモノだろう。

 今は表情もイメージしていた悪魔らしく、ニタリとイヤらしい表情を浮かべている。

 再生していない腕の痛みなんて、多分忘れているほどに。

 これから俺を潰せるのが、そんなに嬉しいことなんだろうか。

 

 だからこっちも死にかけの存在に止めを刺すだけ…なんて油断した心持ちではいけない。

 もしかしたらこの剣が折れたら、再生できる様になるのかもしれないし。

 今の身体能力で一撃で死ぬことはないかもしれないけど、1ダメージでもこちらに入ったなら死ぬ可能性もある。

 …それに痛みを感じた時、慣れてない俺はそっちに意識がいき過ぎて戦闘出来なくなるかもしれないしさ。

 

 そんな思考を巡らせている俺を前に、悪魔は地面へと手を伸ばす。

 それはまるで陸上のクラウチングスタートや、相撲の仕切り前の土俵の床を触る様にも見える。

 見た瞬間からパッと思い浮かんだ姿…どちらも共通するのは、


「があああああ!!!」


 一直線の突撃だ。

 足にも更についた悪魔の筋肉、凄まじい速度でこちらへと迫ってくる。

 でも目はしっかりと捉えれている、横に避ければ一旦は大丈夫。

 

 闘牛士になった様な気分で横に避けると、思った通りに攻撃はヒットしなかった。

 そして悪魔は曲がることはできず、そのまま山へと突っ込んでいったのだ

 走った際に舞い上がった土煙で状況は確認できない、だが山が崩れていくのは見える。

 いつ相手がまた突っ込んでくるかも分からない、だから悪魔がいると思われる方向に剣を構え続けていた。


ビュンッッ!


 そんな視界不良の場所から飛んできた剣は、体を傾けて避ける。

 とんでもない速度だけども、今はちゃんと見えている。

 そして土煙が収まっていき、視界が晴れたそこには…


「ぐぅぅ…はなっ…せ」


 先ほど地面に下ろしたはずの女戦士が、悪魔に捕まえられていた。

 隆起し、残り一本しかない腕がギリギリと彼女の首を締め上げている。

 斬らないと…


「おっと、動くなよ…人間は弱っちいからな。

ちょいと力入れるだけで、簡単に首が折れちまうからよ」


 その言葉で踏み出そうとして、前傾姿勢になっていた体が止まる。

 そんな俺を見てかニタニタと悪魔は、笑い始めた。


「はは、お優しいこって。

一生そこで、じっとしてろよ!」


「私は…気に…しないで…」


 そのやるせない気持ち、それをぶつける様に剣を強く握るしか今は出来ない。

 そして悪魔は腕で彼女を締め上げた状態で、手のひらをこちらへとかざしてくる。

 魔法!?じゃあ逃げないと…いや、それも出来ない。

 一瞬光り、それはすぐに消えた。

 何も起き…なかった?

 

「おうおう、何されたか分かんねえって顔だな。

…冥土の土産に教えてやるよ」


「何…したんですか?」


「やっぱ、教えな〜い!」


 そうして悪魔はケタケタと笑い始める。

 何だ…なんか少しずつ、力が抜けていってる…のか?

 

「段さん、魔力があの悪魔に吸い取られてます!

このままだと、その形態を維持できません!」


 横から叫ぶ様なセフィの分析で理解した。

 でもこのまま待ってたら先にアイツが死ぬんじゃ…


「いや、血液を段の魔力で作ってるんじゃない?

だったら、先に段が死ぬと思うけど?」


 まじか……じゃあどうする?

 セフィやルシェにアイテムを作ってもらうにしても、光の粒子は……他人にも見えるかもしれない。

 そしたら間違いなく彼女は死んでしまう、かといって待ち続けたら俺も一緒に死んでしまうし…。

 

 もう一か八か突っ込むしか……ん?


『ねえ、今吸い取られてるのが魔力?』


「ええ、そうですね。

それが何か?」


 …なるほど。

 もしかしたらこの状況、打開…出来るかもしれない。

 視線を落とすと、そこには今も握られたままの剣が答えるように光るのだった。

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