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悪魔と天使の言う通りに…ね?〜天使ト悪魔ノ囁キニ傾聴セヨ〜  作者: お汁粉パンチ
カラゴ市編

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第12話 スパルタ天使

 剣を握って踏み出した一歩は軽く…いや、軽すぎない?

 数百メートルはあったと思うんだけど、それを一歩で踏み抜けて行く。

 というか目の前にっ、ゴブリンが…


「あ…」


 つい振ってしまった刃、それは全く手に抵抗感も与えず斬り裂いていった。

 ゴブリンも流石に骨ぐらいはあるだろう、なのにここまで簡単に斬れるなんて思わなかった。

 それにこの剣は、プラスチックのオモチャかと思うぐらいに軽い。

 

 もしかしたら、持ち主は重さを感じずに振れたりするのか?

 それともこれは普通の重さだけど、強化された体だとそれぐらいの重さしか感じ取れないのか。

 実際昔お土産に買った木刀の方が重いぐらいだと思うし…。

 

 いずれにせよ、とんでもない業物だとは思う。

 でも、


「なんか、地味だな…」


「売られた喧嘩は買いますよ」


「ひぃっ」


 そんなことを呟いたら、まるで背後霊が囁いてきた様なトーンで声がかけられた。

 もう…怖いし、振り返らないでおこう、声だけで誰か分かるし。

 ということをしたら、彼女はわざわざ正面へと回ってくる。


 そうして目に入った彼女の顔、プクーッと頰を膨らませて怒っていた。

 まるで普通の少女みたいだけど、中身はかなり偉い天使だ。

 でも地味なのは事実…いや、あれ以上派手にやられても困るんだけどさ。


「というか人間から翼が生えてるんですし、地味では無いのでは?」


「それは…そうかも」


 今も多分首を後ろへ向けたら見えるぐらいの大きな翼。

 もしかしたら、これのお陰でとんでもない推進力が生まれたのかな?

 でも天使や悪魔はこれで飛んでるという感じでもない、だって目の前にいる彼女は普通に浮いてるし。

 じゃあ犬や猫の尻尾や耳みたいに、感情によってピコピコ動く部分?

 分からないし、一応聞いてみる。


「…ちなみにこの翼って飾り?」


「いえ、段さんのは身体能力向上効果がありますよ」


 どうやらこの翼のお陰で、今も生きているらしい…原理は全く分からないけど。

 だからこうやって話しながらでも、近寄ってきたゴブリンを頭と体がサヨナラした姿へと変えていける。

 というか、段さんのは…ってじゃあセフィ達のは飾り説、は本当なのか…。


「いや、一応飛ぶのに使いますよ。

ただそれは下級の天使の時だけで、今は使いませんが」


「…ナチュラルに心の中読まないで」


 …こうやっていきなり読まれると、今でも心臓が跳ねるぐらいびっくりするからやめて欲しい。

 ルシェはこういう事やらないけど、セフィは容赦無いのだ。


 というか…これも読まれてる?

 恐る恐るセフィの方へと視線を向ける。

 すると、さっきよりも真っ赤になった頰を更に膨らまし、こちらを睨んでいた。

 …つい突っついてしまいたくなるが、それをやったら多分指を折られる…で済んだらいい方だ。

 後が怖いし、やめておく。


「その剣にもあるんですよ、切り札が」


「切り札?」


 セフィが言い出したら言葉は意外…ではない。

 正直あの馬鹿火力銃と比べて、ただ切れ味のいい剣ですというのは少し見劣りしてしまうし。

 さっきから比べられ、ルシェより下に見られるとムッとする彼女がこれを渡すのか?というのはある。

 でも何も言ってこなかったから、そういうものなのかなという感じで思っていた。

 

 どうやらその考察は合っていたらしい。

 そうして最後にゴブリンを斬ると、周囲から一旦は敵の影は消える。


「それはですね…剣に魔力を込めると」


「魔力を込めると?」


「剣先から…魔力で出来た刃が伸びます!理論上は無限大で、使用者のイメージ次第で鞭みたいにしならせる事も!」


 …なるほど。

 剣先から、魔力で出来たビームソードが出る感じかな?

 確かに剣を自在に伸ばせたり、それを動かせたらかなり強いかもしれない。

 達人はギリギリで攻撃を避けると聞いたことがあるし、そこを狙い撃ちなんて事も?

 地味ではあるけどもデメリットにはならないし、困らない。

 でも、


「魔力って、どうやって入れるの?」


「……え?」


 ……そもそも魔力ってなんだ?

 いやだって、俺の住んでいた地球には無かったはず。

 だって魔法はフィクションの中だけで、使った事ももちろん無い…この世界でも。

 今まで感じた事のないものを込めろなんて言われても、


「剣を握って思いっきり念じてください」


「分かった……ん゛ん゛ん゛ぅぅぅ………伸びた?」


「……いえ、全然です」


 両手で剣の柄部分を強く握り、念を送った。

 そしてチラリと片目を開いて見ると、セフィは無情にも結果を告げてくる。

 正確に測った訳じゃないし、実は1センチぐらい伸びてたりしないかな、そんな淡い期待は儚くも散った。

 

「魔力…魔力ってなんだ?」


 なんか良く分からなくなってきた。

 でも今そんな事考えてもしょうがない、別に俺は哲学者じゃないのだから。

 そういうのは、この世界に住む学者にお願いしよう。

 この問題は迷宮入りという事で、

 

「えっと…今日は、使わなくていい?」


「そ……それ…じゃあ……」


 そんな問いを彼女へ投げると、下を向いてプルプルと震え始めた。

 もしかして、泣かせちゃった?

 それは…不味くね?

 彼女の力が無いと、この先の旅も進められないのだから。

 どうすればいい?食べ物…は無いし、一発芸なんて出来ない。

 やばいどうしよう…1人でワタワタしていると、


「それじゃあ、私がルシェに負けちゃうじゃないですか!」


「……ん?」


「悪魔に天使が負ける…それは、天界スコアをものすごく下げるんですよ!

もし、これが負け判定になったらどうするんですか!?」


「ええ…」


「そしたらアタシは笑ってあげるけd…イタタタッ!」


 彼女は通常運転で、一周回って安心した。

 そうしてセフィは高みの見物を決め込んでいたルシェの言葉に怒ったのか、その頰を引っ張り始める。

 もう…メチャクチャだよ、どうするんだこれ…。


 最初は俺がキャリーしてもらう旅で、2人は余裕風を吹かせていた。

 なのに今は…どういう事?

 こっちがキャリーどころか、御守をさせられている気分だ。


 でも2人とも俺より年齢は……いえ、何でもないです。

 そんな事を考えた瞬間、南極にでも来たのかと思うレベルの寒さが背筋を駆け上がっていった。

 どっちが発生源かも分からない。

 なのでこれは考えないことにする。



 今は、もう木々は倒れてしまっているが一応森の中。

 だけども前衛組、そして後衛も合流したのかな?話し声が聞こえる。

 加えて倒されているだろうモンスターの声も。

 怨念銃で結構な数を倒したと思うけど、まだまだいるらしい。

 

 にしてもこんな色んな種族、なのに一つにまとまって都市を襲撃するとは…凄いな。

 人間という同じ種でも、手を組めない事も全然あるのに。

 ファンタジー世界で生きているやつは逞しい……いや、違う?

 もしかしてこれは…4種の連合軍は表向きの姿で、


「ねえ、セフィ。もしかして…今回の戦い、敵側に首謀者がいる?」


「そう…でひょうね。ひょうでなひゃ、こんな連合軍…組みまへんひょ。

……ルヒェ!!」


 どうやら、もうルシェも手を出してしまったらしい。

 お互いに顔へと、手をかける取っ組み合いを空中でしている。

 …今の姿を見せても、誰も高位の天使と、高位?の悪魔とは思わないだろう。


 それは置いておいて…別に連合という形ではなく、上に立っている奴がいるだけ?

 だったら、俺のさっきの尊敬の気持ちは返して欲しいし、ソイツはぶっ倒そう。

 でもそんな八つ当たりの対象を見つけるのは……いや、出来る…多分。

 まあ、俺の力じゃ無いんだけどさ。


 どうやって説得すればいいか、少し考えたところで手を伸ばす。

 そこは2人の体の間で、


「一旦2人とも離れて」


 その言葉をかけると、素直に相手へとやっていた手を離してくれる。

 前までは巻き込まれるのが嫌でやらない選択肢を取っていたけど、今回はそれをあえてする。

 2人は攻撃…というのはしていないし…それに、多分禁則事項とかになっていると思う。

 今回の様な旅の契約者に対して危害を加える様な行為が。

 

 セフィが俺とゴブリンが戦っているのを助けず傍観していたのは…除くけど。

 あれは解釈次第で何とでもなりそうだし、何より直接的ではないし。

 とはいえ、別に仲裁して終わりというわけでは無い。


「セフィは…あの剣が活躍しないせいで、天界スコアが下がるのが嫌なんだよね?」


「ふぅ……そうですね」


「じゃあさ、その首謀者をこの剣で斬れば…全部解決だよね?」


 少し不満げな表情を浮かべていた彼女、でもその話をしていると段々とそれも晴れていく。

 そして彼女はパチンと手を叩いて鳴らすと、


「それは…いいアイデアです!

きっと天界スコアは減らない…どころかプラスかもしれません」


 首を傾けながら、ニッコリと笑顔になる。

 どうやら、提案は彼女のお気に召すものだったらしい。

 でもこれだけでは足りない…


「ルシェ」


「……なに?」


 彼女にとっては、少し面白く無いかもしれない。

 だってあれだけ高威力で貴重な物を貸してくれたのに、第一功がセフィのモノになるかもしれないし。

 だけど、これからも力を借りなければやっていけない。

 

「じゃあ段、セフィには天界スコアを…アタシには何をしてくれるの?」


「それは、今日出来なかったのをしようか……出店巡り」


 その交換条件に対して、彼女は少し頰を膨らませる。

 …セフィとそっくりな態度だ。


「…ねえ、アタシだけ安くない?」


「でもさ、行きたがってたんじゃない?

目線がまだ名残惜しそうに、そっちに向いてたしさ」


 そして口を尖らせながら、不満を漏らす。

 確かに天界スコアはお金に変えれないけど、出店はお金に変えられる。

 しかもセフィまではいかなくても、ルシェも自分の財産を持っているだろうし。

 でも冒険者ギルドへ向かう最中、名残惜しげに後ろへ視線を送っていたのは見えていた。

 だから…交換条件?として出したのだ。


「本ッ当に、アタシがそんな安い女に見えると思う?」


「「………」」


 俺もセフィもその問いに対して沈黙を貫く。

 それについては心の中にも思い浮かべない様に、蓋をする。

 すると彼女は、はあと溜息を一つ溢し…


「…よく分かってんじゃない。

良いよ…その条件で乗ってあげる」


 どうやら説得は成功したらしい。

 正直、セフィとは釣り合ってない気がすごいするけども…。

 2人と新しい契約を結んだ記念の握手をしたところで、ルシェはこちらへと飛んでくる。


 まさか…実は不満が?

 確かにまだ釣り合ってない感も否めない…だから少しビビりながら待っていると、静かにこちらの肩へ乗ってくる。

 そしてそのまま顔を左の耳元へと寄せてきて、


「今回は、これで説得されてあげる…」


 そんな囁きと共に、


カプリッ…


 耳が優しく甘噛みされる。


 …やっぱり彼女には結構折れて貰ってたみたいだ。

 少し湿った耳を手で触りながら、敵の首領を探す作戦を話すのだった。

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