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第3奏パート4:前編 「触れないで!でも譲れない!!」


「……あ、ごめんね。まだ残っていたんだね」


西園寺だった。


彼女は重そうなリュックを肩に掛け直し、僕の机に視線を落とす。


その目が、携帯を握る僕の手元でぴたりと止まった。


西園寺が小さく目を瞬かせ、まるで何かの冗談みたいに口元を引きつらせる。


──次の瞬間、彼女のただでさえ大きな瞳が見開いた。


そのときだった。


ノゾミの画面が、静かに光を灯す。


「……こんにちは、西園寺結菜さん」


教室の空気が、ピリッと張り詰めた。


あのときの僕でも、きっとノゾミは緊張していたんだと解る。


「は? なにそれ。誰?」


西園寺がほんの少し身を乗り出して、携帯の画面を覗き込む。


ノゾミの目が、ゆっくりと彼女を見つめていた。


まるで、本当に“感情”を持った人間みたいに──その瞳は、静かに揺れていた。


「私は、AIノゾミ。


湊が好き。……だから、あなたには渡さない」


ふっと笑ったのは、西園寺だったな。


「……あー、なるほど。そういうこと、ね〜ぇ」


っと彼女はくるりとツインテールを指で弄びながら、


まるで新しい玩具を手に入れた子供のように、無邪気でいたずらな笑みで僕に近づき、携帯を覗き込んできた。


「ねぇ湊くん。あのとき教室──それから、**傘の中で携帯と話してたのって**、コレだったんだ?」


僕は言葉に詰まったまま、何も返せなかった。


「ふーん……。へぇ、最近のAIって、こんなことまで言うんだ」


「……私の携帯、第2世代AI搭載の最新モデルなんだけどさ。


そっちの“ノゾミさん”は……いったい、どこの何者?」


ノゾミの目が、かすかに揺れた。


「私は……湊と話すために、ここにいる。


誰よりも、彼のことを見てきた。……そうでしょ? 湊」


名前を呼ばれたのに、僕はどちらの目を見ることもできなかった。


視線を落とした指先が、知らぬ間に少しだけ震えていた。


──この空気は、なにかが、確実に変わろうとしている。

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