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ステータスを覗き見るスキルで魔王の真実を知ってしまったので、裏切り者キャラな俺が救う事にした

作者: 仲仁へび



「なんでこのキャラクターに転生してんだよおおおおお!」


 俺は自分が置かれている状況を理解するなり、声の限りにそう叫んだ。


 人の迷惑になるとか考えている場合じゃない。


 俺に待ち受けている運命を考えたなら、そう叫ばずにはいられなかったのだ……。






「純粋魔王と正義の勇者」


 前世生きていた俺の世界には、そんな名前のファンタジーゲームがあった。


 内容は冒険者の主人公が、魔王に目をつけられたため、仲間を集めてから倒すといったものだ。


 世界観はざっくりいうと冒険者が多くいる感じで、その中で魔王が大暴れしているといった感じだろうか。


 いくつもの国を滅茶苦茶にしたり、魔物を操って人を襲わせたり、あとは強者に戦いを挑んでいたりする。


 俺はそんなゲームを10周やりこんだ猛者だ。


 最初は1周100時間くらいかかったが、次の周からは少しずつ短縮できるようになって、累計にすると800時間くらいプレイしたかな。


 かなり難易度が高かったが、ゲーマーとして様々なゲームをこなしていた俺は、そういうゲームほど燃える性格だったため、やりこみプライができたのだ。


 そのため、イベントやアイテム収集、レベリングなど、様々な要素をやりつくしながらゲームをプレイした。


 誰も知らないイベントを起こしたり、バグを見つけたり、アイテムの収集方向を発見するのは楽しかったな。


 その結果なのか知らないが、気が付いたら俺は「純粋魔王と正義の勇者」の世界に転生してしまったのだ。


 え?


 なんで死んだのかって?


 それは教えなーい。


 ちょっと人に言いたくない感じの間抜けな最後だったもんで。


 お口にチャックするしかないんだわ。





 とりあえずそれは横においといてっと。


 転生した先が、モブだとか、ちょろっと出てくるお助けNPCだったら良かったんだけど。


 そ う じゃ な かっ た。


 主人公やその仲間でも、まだ大変だろうがマシだっただろう。


 むしろ敵役でも良かった。


 主人公の味方について願えれば良いだけなのだから。


 で も そ う じゃ な かっ た。


 何の因果なのか「そのキャラクター」に転生してしまったのだ。


 冒険ファンタジーものの世界で、主人公に助言する感じの妖精に。


 最初にチュートリアルを進める役の妖精に。


 そこから主人公の一番付き合いの長い仲間として行動を共にしていくキャラに。


 これだけ見ると無害っぽく見えるが、そんな事はない。


 このキャラクターには、とんでもない爆弾が隠されているのだ。






 転生っていったら、色々あるだろうに。


 なんでよりによってナビ妖精なんだ。


 転生先って誰がどうやって決めてんの?


 暇を持て余した神様がルーレットでもしながらやってんの?


 もしくは厳正に考えた末に、俺の人間性が駄目過ぎって判断下されちゃったの?


 なんでこのキャラクターにしちゃうかなぁ。


 裏切り者の、キャラクターなんかに。


 俺が転生したキャラは、親切な顔して主人公を騙し、彼らを掌の上で躍らせるという腹黒妖精だ。


 序盤で中ボスにやられ、しばらくストーリーから退場するのだが、ラスボス戦前に出てきて、「僕は実は裏切りものだったんだよ」と驚愕の事実を暴露。


 主人公を精神攻撃してくる嫌な奴だ。


 主人公は「そんな! 仲間だと思っていたのに!」と、精神的ショックを受ける。


 けれど、ラスボス戦前に主人公が仲間をたくさんパーティーに加えていれば、皆で支えあいながらその精神攻撃をのりこえ、最高の状態でラスボス戦ができるのだ。


 だが、そうでないと精神を病んで負け確定のラスボス戦に突入してしまう。


 他のプレイヤーのプレイ動画でその場面見たけど、ほんと胸糞だったわ。


 落ち込む主人公を煽る妖精。

 戦闘中も追い打ちかける腹黒。

 さらに敗北イベントの後も、嘲笑する裏切り者。


 ほんっとーに嫌な奴だと思うよ。


 それでなくても、総ての真実を知ってから最初からやり直すとね。


 初見でプレイしたときは、何度こいつの罠にはまって、大変な目に遭ったか。


 どじっこ属性とか説明書に書いてあったけど、よく見てるとわざとらしいし、無邪気で無知なフリしてるのんだよなこれが。


 思い出すと滅茶苦茶腹が立ってくるぜ。


 そこまで聞いた皆さんはこうお思いじゃないですか?


 そういう事情なら、主人公を裏切らなければ良いだけじゃん?


 と。


 いいや、そうはいかない。


 黒幕の魔王の意に反した行動をとると、妖精の体に刻まれた呪いが発動してしまい、命を落としてしまうのだ。


 それなら妖精可哀想と思うが、あいつノリノリで裏切ってたから割とギルティだと思うんだよね。


 俺が10周したプレイの中では、ラスボス戦に勝利した後、そんなような事言ってたし。


「人間の苦しむ顔を見るのが好きなんだ」とかなんとか。


 きっと生まれたときから、裏切り者として生きる定めだったんだよ。


 俺の第二の人生、でなくて妖精生、困ったもんだぜ、まったく。


 まあ、転生特典なのか、他人のステータスを見るってスキルがあるのが救いだろうか。





 そんな裏切りの妖精になっちまった俺。


 名前はピピだ。


 前世の俺は、男らしいそこそこいかつい名前だっただけに、今世では可愛らしい名前をつけられたもんだと思うぜ。


 前世の友人や家族が知ったら爆笑される事まちがいなしだな。


 妖精たちは皆こういった同じ言葉二文字の名前を付けられるらしいから、悪気はないんだろうけど、複雑だ。


 で、そんなシンプルネームな妖精たちは、みんな揃って妖精の里で暮らしているのだが、妖精だけでやっていけるわけじゃない。


 他の種族と協力しながら、必要なものを取引したり、他の種族から守ってもらったりしている。


 妖精族とかエルフとかと交流が多いが、一番協力しているのは人間だな。


 俺達妖精はナビゲーション役として冒険者に、色々な事を教えているんだ。


 妖精族は生き物の潜在能力を開花させる特殊能力が備わっているみたいだから、それが理由だろうな。


 この世界の人間たちは今、なんか大冒険時代に突入していてて、世界各地を冒険したろうというロマンにあふれている。


 だから妖精の助力が必要みたいで、ウィンウィンな関係なのだ。







 そういわけで、俺達はナビゲーション妖精として仕事に励む。


「初めまして冒険者さん、僕はナビゲーション役の妖精ピピ。これから冒険者さんが身に着けていかなくちゃいけない、知識やスキルについて教えていくよ」


 おっと誤解しないでほしいんだが、俺は前世でこんな喋り方はしていなかった。


 でも今世では妖精だから、親しみやすい喋り方を心がけているんだよ。


 妖精が「まじだりー」とか「ぱねえっすわー」言ってたら嫌だろ?


 ブレイクしちゃいけないものが、ブレイクしちゃわないか?


 俺は夢のない人間だったが、他人の夢を壊そうとは思わないからな。


 この世界の常識にあわせてやるぜ。


 ちなみに他の妖精は皆メルヘンな喋り方をしてる。


 うーん。


 何というか、子供と話してる気分になるんだよな。


 悪気はないんだろうけど、俺としては人間と話してた方が落ち着くな。


 で、そんなやっさしい俺はというと……。


 人間が運営している冒険者ギルドに住み込み、冒険者たちと交流しながら、彼らをアシストしていくのだ。


 大抵の冒険者は素直に俺達の言葉に耳を傾けてくれるもんだが、そうじゃない人間も中にはいる。


 かけだし冒険者が、運よく何度も強敵討伐に成功したり、お宝を見つけたりすると、調子に乗って大冒険(※比喩)してしまうのだ。


 それで、尻ぬぐいをするはめになるのはいつも俺たちさ。


 こういった場合、へたこいて屍になった冒険者の身分証を回収して、ギルドまでもっていくのも仕事だ。


 なに?


 俺達は危険な目に遭わないのかって?


 まあ、ほぼ合わないな。


 妖精はエネルギーの塊で、物体がないから、普通じゃ命を落としようがないんだ。


 モンスターに襲われる事がないってメリットはかなりでかいな。


 あ、魔王は例外だぞ。


 あいつは常識で測れない奴で、エネルギーの塊も攻撃できる奴だから。






 そんな中、身分証を回収している時に、出会ってしまった。


 何と?


 ラスボスとだよ。


 いつ出会うのか、出会わないならもう出会わない方が良いやと思っていたところ、


 ばったり遭遇。


 やらかした冒険者の身分証を回収してすぐあとだ。


 その姿を見た俺は、はわわわわって感じ。


 とうとうこの時がやってきちまったか。


 なんてブルブル震えちまったよ。


 とかなんとか考えつつも、俺は冷静にスキルを使用。


 後のために、少しでも生存の可能性を上げようというわけだ。


 で、そのスキルを見た俺は、


 ん?


 となった。


 思ったのと違ったって感じ。


 詳しくは後日公開するが、これはまた「悪、滅ぶべし!」とするには、難があるというか。


 色々計画を修正しなくちゃならないかもな。


 ここは俺が前世やってたゲームの世界だし、ゲームをクリアした俺からするとそこそこ未来を知っている過去の世界でもあるわけなんだが、これは予想外だったぜ。


 そういや俺、あのゲームやってたけど、裏設定とか開発者さんのインタビューとか、そういうのは調べてなかったな。


 あ、魔王さん、俺を雇用するんなら福利厚生はきちんとするもんだぜ。


 有給って概念知ってる?


 労災とかも。


 それと、一か月後に旅行行ってくるから、その間はお仕事なしの方向でよろぴこ。






 さて、時間をちゃっちゃか進めて主人公との初遭遇のシーンだ。


「僕の名前はピピ、今日から君の冒険をアシスタントする事になったんだ」


 俺はさっそくスキルを使用するぜ!


 名前 マックス・スケールブレイブ

 年齢 16歳

 武器 剣

 スキル 不屈の闘志

 武器スキルレベル 7

 魔法スキルレベル 3

 性格 正直、熱血、純粋

 生い立ち 小さな村で育ち、幼馴染と共に村に魔物を退治しながら育つ。

 成長してからは自警団で働くが、村人たちから応援され、夢を叶えるために冒険者になった。


 名前とか年齢とか、スキルらへんは分かるけど、生い立ちらへんまで知れるとなると「プライバシー侵害じゃね?」ってなるよね。


 情報はある方が良いんだけどさ。


「そうか、俺はマックス・スケールブレイブだ。気楽にマックスって呼んでくれよな!」


「うん、マックスだね。これからよろしくね!」


 俺は精一杯愛嬌を振りまいてフレンドリーモード。


 裏切り発覚後も、殺さないでほしいから、愛嬌ふりまくのは本気。迫真の演技中だぜ。


 だって、何が原因で、バッドエンドになるか分からないからなあ。


 たまにこういう物語で何かを改変しようとすると、歴史の修正力が働くってパターンがあるけど。


 どうなんだろうな。


 俺一人の力なんてたかが知れてるから、そういうの困るぜほんと。


 で、俺のフレンドリー挨拶を聞いた主人公はと言うと。


「おう、俺の方こそこれからよろしくだぜ!」


 一片の曇りもなく俺に挨拶を返してくれたぜ!


 ふんふん出だしは順調っと。






 あ、ちなみにほぼ同時期に、かわいい妖精さんとも出会った。


 俺の好みドストライクなんだよな~。


 名前はミミ。


 お姉さん系で、見た目が可憐なんだ。


 とりあえず全力でアピールして、デートに誘ったり、贈り物をしたりした。


 でも、育児書片手に「子供は何人ほしい?」なんて言ったら、引かれちまったよ。


 うーん、残念。


 妖精ってバックで飛べるんだな。


 あんな一瞬で3メートルくらいすっ飛んでいけるとは。


 まあ、ビンタされなかっただけマシだと考えよう。


 主人公がドン引いてたけど、そんなにあかんかったかな。


 純粋な性格で、女性キャラクターに言い寄られても鈍感だと言われる主人公からそんな風にされると地味に傷つくんだが。


 あっ、メルヘンの権化が子供作るとかそんな事言うのは、夢壊れるか。


 失敗失敗。

 てへぺろ。


 理科の授業で、前世で女の子とグループ活動している時に、どんな生物もつきつめて言えばただの元素とか小さい塊なんだな、じゃあ脂肪がたくさんある人は燃えやすいんだなって発言した時みたいな空気だ。


 え?


 サイコパス?


 やだなあそんなわけないじゃないか。


 それが原因で人間関係に亀裂が入って、友達がいなくなって、ゲームに依存するようになっただなんて、HAHAHA。






 やっかいごとは~、たまに次から次へと~、お~とずれ~る~。


 狙いすましたかのように~、忙しいときに~、お~とずれる~。


「うおおおおおお、死ぬ死ぬ死ぬ!」


 へいっ!


 もう俺のメルヘンモードはとけてるぜ!


 前世みたいな口調でパーティーメンバーの前では、普通に話してる。


「いやああああ、たんま。待ってこれねぇ待ってええええ!」


 おかげで妖精らしくない妖精だなって言われたよ。


 まあ、猫かぶるの面倒くさかったから良いけどさ!


 細かいことは気にしない!気にしない!


 切り替え完了。





「あの世が見えるって、むりむりむりむり!」


 ほいっ、毎度!


 妖精に転生した俺だ!


 ただ今、どこかの洞窟の中で転がりくる大岩から逃げてる最中だ。


 背中から死の気配が追いかけてくるぜ!


 地響きこわー。


 まあ、俺は妖精だから本来なら死なないんだけど!


 ちょっと前にトラッブにかかって、物質化したままだから、このまま追い付かれると潰れたトマト確定だぜ!


「いやあ、トマトになっちゃうぅー!」


 汗を掻きながら全力飛行。


 妖精さんの羽でパタパタしてる。


 転がる大岩から逃げまくってるとこ。


 どうしてこうなったかというと。


 1時間前から説明しなくちゃいけないな。






 ちょっとはしょるけど、無事(×惨事確定)裏切り者になっている俺。


 定期的に魔王と連絡とりながら、罠計画を練っているぜ。


 といっても向こうから秘密の手段で一方的に手紙を送りつけてくるだけだからな。


 途中で大人しく受け取るのに飽きたから、こっちからあっちにヌイグルミとかお菓子とか送りつけてるぜ!


 で、そんな二人?の努力の結晶がつい最近実り始めてる。


 食べ物をちょっと辛くしたり、ちょっと足元にこけやすい石を置いたりして、あれこれ細かい罠を発動させているんだ。


 ちょいちょいドジのふりして、主人公を危ない目に遭うように誘導してる。


 おかげで俺は、初対面の女の子に変態トークを噛ます上に、ナビゲーションもロクにできないドジっ子だ。


 こんな俺と付き合い続けてくれる主人公、やっさしい。


 ありがとナス!


 今も大岩に追いかけられるという罠をはった直後だ。


 見え見えのところにある凸凹に向かって「おっと手がすべったー」をやるのはなかなか緊張したぜ。


 だけど、あれだな。


 原作と違って、俺が転生した影響なのか、その場に第三者が居合わせるとは思わなかった。


 今、地下に広がるダンジョンで、転がる大岩トラップしてるんだけどー。


 主人公が、小さな奴隷の女の子を背負って、走ってるんだよねーえ。


 なんで奴隷の女の子がいるんだろうね?


 君、原作にはいなかったでしょうよ。


 バタフライエフェクトってやつなんだろうか。


 ともかく、主人公一人ならそいつが持っている武器の剣で、大岩をずばっとできるんだけど、女の子抱えているから両手ふさがってるんだよね。


 だから現状、逃げるしかないってわけ。


 おらおら、逃げろ逃げろ逃げろ。


 つぶされっぞー。


 走り始めてからかなり時間が経過してるけど、だいじょび?


「あんまり大声で叫ばれると、気が散るんだが」


 めんご。


 まだもうちょっと余裕ありそうだな主人公様。


 さすがボスキャラに、「将来敵になるかもしれない奴」、「見張りの妖精つけとこ」と思われる男だ。


 体力かなりあるな。


 しかし、悠長にしていられるのも今の内。


 この先は、行き止まりだ!


 今通ったとこ、さっき通った道だから分かるんだよ。


 こりゃ、やばい。


 仕方ない。


 こういった時のために、用意していた奥の手の出番だ。


 原作知識をフル活用して、ゲットしたアイテムのやつ。


 有給使って旅行、という名のレアアイテム探しをした苦労が報われたぜ!


 魔王さん、ありがとうどん。


 奥の手使う時期、早くないかって?


 それはごもっとも。


 俺、計画性ないみたいだね。


 小学生の時からそうだったんだよねー。


 先生に書かれた通知表でも、「もうちょっと後の事を考えて行動しましょう。お池で捕まえた生き物をすべて同じ水槽に入れてはいけませんよ」って書かれてたし。


 後日生き物の数が減ってて「ん?」ってなったんだけど、食べられちゃってたんだよね。


 真面目にごめん。


 ほいほい、それはともかく。

 目の前の大事故を予防せねば。


「対象の時間をとめる魔法、発動!」


 アイテム発動したった。


 転がってくる大岩の時間をとめてやったぜ。


 その間に主人公は、奴隷の女の子を下ろして、武器をかまえて、大岩切断。


 ふう。


 なんとかなった。


 あ?


 そんな魔法使えるのなら、もっと早くやれ?


 ごめんちゃい。


 裏切りムーブかました後、逃げる時のためにとっておいたんだよ。


 でもそんな事言えないから、ドジっ子設定でごまかす。


 ちなみに奴隷の女の子は、ご主人の元から逃げ出してダンジョンに迷い込んでしまったそうだ。


 そのご主人がヤな奴でな。


 人格攻撃したり、ミスしてもいないのにお仕置きしてくるんだと。


 だから数日後に主人公が、がんばって稼いだお金で買い取ってやったぜ。


 というわけで、新メンバー加入。


 でも、原作にいない子だけど、大丈夫なんかな。







 序盤からこんな感じだから嫌な予感はしていたんだよな。


 その予感、はい的中。


 その後、なぜか罠をはるたびにイレギュラーが発生して、なんやかんやあって原作とは違うイベントになってしまうのだ。


 原作キャラはきちんと加入してくれているし、ゲットするはずのアイテムもしっかりゲットできてるんだけど。


 なぜか原作にいないキャラが3人くらい余分に仲間になってるし、アイテムも結構ゲットしちゃってる。


 戦力増強なら良いことづくしなんじゃね?


 って、普通は思うだろうけど。


 そうはいかない。


 このゲームのボスは、主人公達の総戦力に合わせて強さが決まるタイプなのだ。


 だから、強けりゃいいってもんじゃないんだよな。


 うう、後が怖ぇよ。


 俺からも色々送りつけるようになって以来、たまに会うようになったラスボスのステータスもぐんぐん上がってるよお。ふええ。







 なんて戦々恐々としつつも、舞台は中盤。


 シナリオは、中ボス戦に突入するぜ。


 俺は裏切りの妖精として一仕事。


 前日、うまいこといいくるめて主人公達に呪いの腕輪を嵌めておいたんだ。


 ステータス数値が変化して、フルの値の半分になってしまう呪いだ。


 ちな、成り行きは「このあたりで有名な、幸運のアイテム見つけたぞ。おらぁ! 受け取れ!」って具合に罠にはめた。


 適当な演技過ぎて涙が出てくるぜ。


 うまいこと思いつかなかったんだよ。


 でも、そんな俺の杜撰な罠にかかってくれる主人公達、良い人すぎん?


 俺は君たちの将来が心配だよ。






 そういうわけで、ステータス半減状態で、ラスボス戦へ。


 見た目の厳つい巨大な真っ黒な塊がボスとして立ちふさがるぜ!


 主人公が戦闘で、剣で戦いながら、その後方で弓使いやら、攻撃魔法使いやら、回復魔法使いやらが頑張ってる。


 いやぁ、ゲームでは中ボス戦は苦労したな。


 普通のステータスのままだったら中ボスなんて簡単に、倒せるのにって。


 あの戦闘、いつもの3倍時間がかかったんだよな。


 周回する度に多少は短縮できたけど、1時間は切れなかったぜ。


 でも今回は心配いらねぇ。


 なんせ、超特訓で終盤くらいのレベルに上げといたから。


 いま、100レベル中の90レベルくらいかな。


 こんなこともあろうかと、「自分達のレベルは人に言わずに秘密にしよう」って、主人公たちに言っておいてよかった。


 魔王にも言ってないからな。


 俺達倒してこいって魔王に頼まれたはずの中ボスは、「そんな馬鹿な」って顔で退場してったぜ。







 ふぃー。


 二重生活は疲れるぜ。


 この間魔王に呼び出されて、色々腹を探られたんだよな。


 のらりくらりやり過ごしたけど、疑われてるかも。


 でもまあ、何とかなるだろ。


 最初はどうなるもんかと思ったけど。


 意外とちょろいもんだ。


 まあ、魔王の真の正体があれなら、仕方ないのかもなー。


 俺、前世ではトゥルーエンドいかず、ずっとノーマルエンドだったから、あの事実を知った時は驚いたぜ。


 きっと裏設定とかで明かされるんだろうな。







 そしてなんやかんやの最終決戦。


 俺は裏切りの妖精として、主人公達に秘密を暴露するぜ。


「実は俺は魔王の味方になって罠をはっていたんだ!」

「そ、そんな! 俺達を裏切っていたのか!?」


 マックスは原作通り、動揺。

 純粋だからやっぱり騙されてたようだな。

 他のやつはちょっと怪しんでいたみたいで、ショックは少なそうだけど。


 マックスは愕然とした表情で裏切りの事実に胸を痛めた。


 俺って、冒険のほぼ始まりからずっと一緒にやってきたキャラクターだもんな。

 ショックを受けないわけにはいかないよな。


 でも主人公はすぐに、心を持ち直した。


 原作よりパーティー人数多いからその影響だろうな。


「しっかりして。今は魔王を倒さないと!」

「そうです。やるべき事を見失ってはいけません」

「心を強く持ちなさい、この冒険の最後を勝利で締めくくるために!」


 だいたい内容はこんな感じだ。


 そんでもって戦う気力を取り戻した主人公が魔王と戦闘。


 シームレスにラスボス戦開始だ。


 原作と違ってかなりレベルを上げているとはいえ。相手は魔王。


 ちょくりょく繰り出される、大規模範囲攻撃に苦戦させられたぜ。


 けれど、さすが主人公。


 見事に勝利をつかみ取ったった!


 そしてノーマルエンドじゃなくて、トゥルーエンドに突入。


 安心安心。


 原作情報知らんから、何をやったらトゥルーエンドに行けるのか分かんなかったんだよな。


 ここは、ほんとずいぶん困らされたぜ。


 最終的には、俺は俺ができることをやるしかない。


 って開き直ったけど。


 というわけでさくさくやるべき事を消化しましょうね!


 俺は自分のスキルを主人公達に明かして、そのスキルで得た情報を伝えるぜ!



 名前 マコ

 年齢 6歳

 武器 杖

 スキル 純粋悪

 武器スキルレベル 99

 魔法スキルレベル 99

 性格 正直、無邪気、活発

 生い立ち 生まれたから一人孤独に育った少女。彼女の生みの親は力の強さを脅威に感じ、彼女を路地裏に捨て去った。弱肉強食のルールで成り立つ裏社会で育った彼女は、力こそが全てだと思い込み、自分が楽しく遊んで生きるため、力を振るいはじめる。




 


 主人公達は魔王が子供だと知ってびっくり。


 本来の見た目に戻った魔王を見て、お口をあんぐり。目ん玉飛び出し注意状態だ。


 そう魔王は、たまたま強い力を持って生まれてしまった子供なんだ。


 でも、常識を教えてくれたり、面倒を見てくれる大人がいなかったから、常識や考え方が歪んでしまったらしい。


 しかも見た目が真っ黒で巨大だし、分厚い鎧を着こんでるから、顔とか体格が分からなかったんだよな。


 なんか闇色の靄がそこにいるって感じで。


 そういうわけで、魔王の生い立ちを知った俺は何とかするために育児書を買ったり、主人公達を強くしたり、お友達として仲良くするルートを模索したりしていたんだよ。


 手紙のやり取りは、ちゃんと効果あったのかな?


 たまに会う時に贈り物の感想言ってくれたから、たぶんあったと思いたい。


 でも、俺の呪いは解除してくれなかったんだよね(とほほ)。


 だれだよ、いたいけな少女に「自分の物はなくさないように、しるしをつけておくもんだ」って教えたのは。


 育ってきた環境が裏社会なのに、そんなとこだけ親切イベント発生しなくても良いだろうに、助言主さん。恨むぜ。


 ま、ともかく、そういうわけだから。


 妖精の女の子に気があったように見せかけてたのは、育児書を買うためのカモフラージュしてたんだ。


 ははは、まさか本気であんな変態トークするわけないじゃないか。


 子供のつくり方だなんて。


 はっはっは。


 ちなみに幼稚園の時、先生に「てんてーどうやったら子供って生まれてくるの? あいびき? ちじょうのもつれ? ひるどら?」とか言ってた事もあったけど、なんで今思い出したんだろうな(あ、俺の座右の銘は「変態で何が悪い」です)。


 それはともかく、俺は、その他にも四苦八苦してたんだ。


 お友達作りのノウハウを勉強して、ラスボスに「人とコミュニケーションをとりましょうって」教えたり。


 その影響で、原作にいない仲間が増えたのかな?


 主人公が「その人の選択を尊重しよう」っていって仲間にしないフラグが立った時に、魔王ちゃんを連れてきて触れ合わせ、どうせこの人たちこれから会わないんだったらコミュニケーションの実験台になってもらおうって、余計な茶々いれたからかも。


 魔王しゃまと後の勇者パーティー―が、呑気にお喋りだなんて、今考えるとちょっとあれかもな。


 で、魔王たんと未加入メンバーと俺とで「借金を減らす理由」を一緒に考えたり、「病気の家族の病を治す方法」を一緒に考えている内に、知らない間にそいつらが仲間になってたんだよね。


 原作にいないはずの連中が。


 でも、そんなこんなな努力をしても、最大の関門が待ち受けていたんだ。


 魔王、無力化計画という俺の方の。


 だって、魔王ったらやっぱり、対等な人とじゃないと言う事聞かないっていうから。


 こりゃ、主人公達に倒してもらうしかない。


 結局原作通りにするしかないなーって。


 それから、レベル上げ苦労したんだよなー。






 そういう苦労があったわけだが、戦いを経て魔王は主人公を対等な存在だと認めたらしい。


 お友達になるチャンス到来だ。


 ここで、なれ合いなんかできるかってなったら、大変だけど、主人公は良い奴だった。


 最後に握手して、大団円。


 ふぅ、これにて一件落着だな。


 今まで命のやり取りしていた仲だから、多少のぎくしゃくはあるかもだけど、君たちなら何とかできるって信じてる!


 命の授業とか常識の講義とか待ってるけど、がんば!


 あ、忘れるところだった。


 魔王ー、俺にかけた呪いちゃんと解いてくれー。



 


 さてはて、重荷が取れたことだし、俺は第二の人生ならぬ妖精生を満喫しますかね。


「へい! そこの可愛い妖精の君! 俺とデートしない! ちなみに結婚したら新天地に家立てる派? それとも俺か君がどっちかの家に嫁ぐ派? 子供は何人欲しい?」






 名前 ピピ

 年齢 10歳

 武器 なし

 スキル スキル閲覧

 スキルレベル 80

 性格 お調子もの、空気が読めない、恋愛下手

 座右の銘(ではないよな?) 「変態で何が悪い」

 生い立ち ごくごく一般家庭に生まれ育った人。町で見かけた美人(やっていたゲーム関係でできた友人の恋人)に声をかけようとして道路に飛び出したところ、車にひかれて死亡する。お葬式で友人は「俺の彼女に手を出そうとするなんて、この裏切り者め!」と罵倒した。友達関係築いてたけど、なかったことにされた。転生前に神様の好意で葬式場面見せられて、本人泣いた。当人に寝取りなどのつもりはなく、美人の交友関係については知らなかった。転生後は妖精としてナビゲーションの仕事をこなすが、恋愛面では恵まれていない。これからも恵まれないかもしれない。



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