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15.潜伏と急襲

タンゴとラウルは事情聴取が終わったあとリッツとザックに心配されたが、それをなだめて部屋に戻って寛いでいた。


「あんなに喋って良かったのか? これで女とゼーレが同一人物だとバレたら俺達も危うくなったぞ」


「ゼーレが捕まって素顔を暴かれるようなことがあれば、そうだね」


「奴は捕まらないと? 随分奴を信用しているんだな」


「直接やり合ったからね。そもそも、ゼーレの本領はタイマンじゃない。ラウルなら普通に勝てるだろうし。それに、俺が相手した時も、色々あったとはいえ最後は結局逃げられてる」


「確かに、お前から逃げたと聞いた時は耳を疑ったな。それほど奴の逃げ足がはやかったのか」


「逃げ足がはやいというよりは、環境を利用するのがうまい。森みたいな所だと特にね」








軍が捜査を行う中、ゼーレはタンゴ達と接触後、すぐに人知れず街を出ていた。

巡回警備の網をくぐりぬけ、森の中に潜んでいた。


メルザースは東西南北全て道が伸びている。

それぞれ南に進めば草原と深い森があり、東は森を越えた先に国境砦と山脈がある。


西と北はそれぞれ、街道に沿って進めば他の大きな街へと通じる。


東と南の2つの森を分かつように大きな川が流れその川はいくつも分岐し小川となって広がっている。


「さて、そろそろ行こうかな」


ゼーレは気楽に歩き出す。

実際ゼーレからしてみればこの包囲を抜けることだけなら容易かった。

いくら辺境伯軍の総数が3万とはいえ、メルザースの兵数はせいぜい3000。

そのうえ、隊が分けられ夜間の巡回兵は1000もいない。


そして大した灯りも無い中で森を捜索し3日目。

いくら訓練を積んだ兵と言えど疲労も溜まる頃だろう。


そして実際に、その兵達の捜索範囲を把握し森に潜伏している。

抜けることも当然、可能だった。



軽い足取りで進むゼーレは樹上へと跳ぶ。

そして木から木へと移って目的地へと向かう。


ゼーレが目指すのは国境。

ミルトシアと帝国を別つ山脈。

国境目前といえる場所まで2日かけて進んできている。

当然、国境の警備は厳しくなっている。

砦を拠点にした巡回兵の数も多い。


だが敢えてそこを目指す。

ゼーレは帝国への逃亡を図っていた。





メルザース東部にある砦のは、小高い丘の上にある。

国境を広く監視するため山脈に沿うような形で横長に伸びている。



砦の見張り台で警備をする兵──ミックは現状に辟易していた。

丘の周りには森があり、現在捜索のために国境警備兵とは別に巡回兵が出ている。

眼下に映る周囲を捜索する兵達が持つ灯りを見ながら、近くにいた仲間──サミュエルに話しかける。


「なぁ、お前どう思う? 」

「何が? 」

「何って、そりゃあ1個しかねぇだろ。あいつらが捜してる奴、まだいると思うか?」


「普通に考えたら、いねぇだろ」

「だよなぁ。こんだけ捜しても見つからねぇってことは、とっくに帝国に出てるって事だよな」

「相手は裏で名が売れてる殺し屋だって話だぜ。俺達国境警備にバレずに抜けるルートでも持ってるんじゃねぇか? 」


「俺もそう思ったんだけどよ、だとしたらヤバいんじゃねえか? そんなの機密情報抜いた奴がいるってことだろ」


「それが今回殺された農夫を装ってた諜報員なんだろ。なんでも、ここらに来る前に裏でどっかから盗んだもんを奪い返しに殺し屋が殺したって話らしいぞ」


「マジかよ。てか、よくそんな話まで知ってんな。メルザースから来た巡回兵に聞いたのか? 」

「あぁ……ん? おい、今あそこなんか動かなかったか? 」


唐突に男が森の方向を指差し、それを確認する。


「は? 風のせいじゃねぇのか? 今日曇ってるし風もそれなりに出てるぞ」

「いや、ここは上の方だから風が強いけど、森の方はそんなだろ」

「あぁ、そうか。んー、んん? 暗くてよくわかんねぇな」

「もっとよく見ろって、あの辺だよ」



2人がそんなやり取りをしていると、1人の国境警備兵が駆け上がってきた。


「おいお前ら、すぐに来い! サミュエルが殺されて……は?」


伝令に来た兵士とミックが硬直する。

サミュエルが、ころされて?

何を言ってる?

サミュエルならここにいるじゃないか。


そう思って振り返ろうとしたミックの喉が切り裂かれ、次の瞬間には伝令の喉にナイフが突き刺さった。

出そうとした声は湿った塊に邪魔されて音にならず風に消える。


「ガボッ……」


「これで《糸切り》からの依頼は達成。後はお手並み拝見、と言ったところですね」


そう呟いたサミュエル──を騙っていた者は見張り台からヒラリと飛び降り夜闇の中に消える。

残されたのは事切れたミックと伝令だけだった。





砦から狼煙が上がり、鐘が鳴る。


その音を聞いたゼーレは勢いよく駆け出す。

国境山脈へ、ではない。

離れた場所から砦に向かう兵の一団の方へ向かう。


木々の隙間から微かに覗く灯りを頼りに駆け抜ける。

そして兵の行く手を阻むように目の前に降り立った。


「こんばんは」


「……!? 黒いローブに仮面……! 《糸切り》か!! 正面から来るとは、舐められたものだな!! 」


隊長らしき男が気付いて声を上げると同時に後方にいた兵が伝令に走る。

それを見て闇に紛れるゼーレ。


「消えた!? 固まって全方位警戒!! 散らばれば奴の思う壺だぞ!! 」


隊長からの命令に兵達は剣を構え、円になって固まる。

周囲を高速で動いているのか、鳴り響く警鐘に紛れ木々が擦れるザワザワとしたような音が聞こえる。


魔法士は身体を魔力で強化することで超人的な力を得る。

肉体強化と呼ばれる“技術”である。


高速で動き続けているため、攻撃がどこから来るのかがわからない。

その恐怖に緊張感が高まっていく。


影が兵達の頭上に躍り出た。


「上だ!! 」


誰かが叫ぶ。


「構えろ!! 」


反応した隊長の指示がとぶ。


「残念、君たちの負けだよ」


それと同時に周囲から収束するように糸が迫る。

ズンと剣にかかる重さが増える。

隊長の指示に反応出来たおかげで、何とか剣で受け止めることに成功したが、抑えるのでやっとだった。


「……糸を強化する魔法では無かったのか……!? なぜ予兆が見えん……! 」


この中で唯一魔法が使える隊長は発動の予兆が起きないか警戒していた。

それなのにも関わらず予兆が見えない


木と木の間に張られた糸の上に立ち状況を観察する。

そして一言。


「『収束』」


ここにきて初めて聞く詠唱。

そして感じる魔力の予兆。


それは魔法士達だけが感じとる魔法発動のための魔力の動きのようなもの。


瞬間、手に持つ剣から感じるが急激に重くなった。

魔力で肉体強化を施して尚、重いと感じた。

受け止めていた剣は耐えているが、体は別の話だ。


ゼーレの魔法によって収縮された糸は全員を捕らえて離さない。

そしてそれは、驚くほど呆気なく、全員を圧殺した。



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