第2話混血たちの会議
すいません、少し遅れました。
古く老朽化が進んでいる校舎の廊下。月日の重さによって黒ずんだ木材は歩くだけでぎしぎしと音を立てる。
そこを進むのはこの場に似つかわしくも違和感を持つ少女だった。
年齢は高校生くらいだろうか。
廊下をスキップしながら歩いている。人によっては呼び止め、軽い注意をすることがあるかもしれないが、それを含めての学校のよくある日常の一幕と言っても過言ではない。
問題はその服装だった。
量販店で売っていそうな、どこにでもありそうなありふれたワンピース。
しかし、その至る所に穴が開き、ところどころに血の跡が残っている。
それままるで、殺人犯がそのまま事件現場から戻ってきたかのようだ。
しかも、その異様な少女を見ても、誰も疑問すら持たないことが、この場の異常性を引き上げていた。
少女はついに目的の部屋にたどり着いた。
学校特有の簡素な標識には校長室と書かれている。
ノックをすれば「どうぞ」と入室を許可する声が返ってきた。
校長室なのだから、中にいるのは当然好調なのだろうが、中から聞こえた声は非常に若いものだった。具体的にはこのノックをした少女と同じくらいの、若木を思わせる瑞々しさがその返答にはあった。
そして扉の先にいたのは予想の通り、若い女だった。
まだ少女というべき年齢の女が校長室に備え付けられたソファーの上で行儀悪く寝そべっている。
もしや、悪戯か!
と考えるには、それを否定する状況証拠が数多く存在する。
部屋の右側を見れば、殺風景な資料室、見るにおぞましい生物の標本、おどろおどろしい兵器類。
おおよそ学生であっても、それこそ社会人であっても一生手に触れることのないような血と鉄そしてお香の匂いがその場所には充満していた。
対して左側。そこにあるのは、犬や猫の餌、女性向けの洋服類、漫画やゲームといった玩具。あまりにも生活感に満ちた作り。
そして、右も左も。部屋全体が一つの色を持っていた。
その色は実際にこの部屋に住まい、長い時間を過ごさなければ写ることがないある種独自のものである。
そして、同じ色をこの部屋でだらけ切っている白い少女、黒樹白夜から感じ取れる。
論理ではなく、直感でこの部屋は彼女のものだと納得させるものがある。
実際、このもはや学校と言っていいのかどうかすら分からない建物のトップは白夜であり、一華ももし、彼女を学校のどのポジションに置くかと言われれば理事長、もしくは校長としただろう。
「スキップでここに訪れるなんて、何かいいことでもあったのかい」
どうしてそれがという一華の疑問は、床を歩くたびに響く音によって解消した。
「廊下くらい修理したらどうですか」
「君も知ってるだろう。お金がない。そんなものに金をかけるより、先にやらないといけないことが山積みだからね」
「だったら、ここを無料で修理してくれる人を探してはどうです。ここに押し込められている人間の中には元大工くらいいるでしょうし」
富士の樹海。
異界からやって着た怪物たちの拡散を防ぐために結界とコンクリートの防壁で区切られたここは、人を寄せ付ける秘境であると同時に、混血たちにとっては最後の楽園でもあり、牢獄でもあった。
何せ混血たちが実質自治しているのだ。
外で行われるような差別も迫害もここでは存在しない。
ならば、ここにいるのは混血だけかと言えばそうでもない。
時としてその家族も送り込まれるのだ。
同じ血を引いているのだから、お前にも人外の血が流れているに違いないというのが政府の言い分だった。
「音がするっていうのは意外と便利だよ。人を見逃すことがないしさ。私たちには敵が多いんだ。
二条城の鴬張り棟にあやかるのも悪くないと思うわけだけど。それに、ただ古いものを新しいものに入れ替えるだけというのは、芸がないじゃないか。
改造するにしたって、私たち流のリフォームをするべきだ。
例えばそう、古いものには魂が宿る。
その方面から付喪神。
あるいは学校という伝承から七不思議の再現も面白いかもしれない」
思い付きを適当に口走って、これを形にすれば素晴らしい何かが生み出せるかもしれないと、白夜は目の前に自分が呼びつけた部下がいるにもかかわらず、スケッチブックに、ああでもないこうでもないと校舎の改造案を描いていく。
「それでいったい何の用ですか」
ここで一華は、わざとらしく自分の傷ついた服装を見せびらかす。
ついでに言えば白樺の木のように滑らかな肌の下には何枚もシップが並んでいる。
昨日色々とあって、樹海の中をさ迷い歩いて後遺症がそこにはあった傷口からはいまだに鈍い痛みが沸き上がると一華は抗議する。
そう、彼女は筋肉痛に苦しんでいた。
「そんなに大変な仕事なら、応援くらい呼んだらどうだい。人手不足とはいえ、暇な奴なんて少なくないんだから。それとも、何か隠しておきたいことでもあるのかな」
そのまま自分の趣味に没頭してくれるならよし、自分のコンディションの悪さを見て、仕事を誰かに回してくれてもよし。そんな浅ましい一華の企てを、白夜は、そもそも、コンディションが悪いのはそっちの勝手の都合だよねと、一刀両断した。
見透かしているように嫌味を言ってくる白夜に、それが図星だから一華は結局何も言い返せない。
しかし、そのことについて攻めるつもりがないのか、あるいはただ日常会話の延長でなんとなしに口にしたのか。申し訳なさそうに口を閉ざした一華を気にも留めずに、スケッチブックのほうを見て、結局お気に召すものが作れなかったのか、ノートをくしゃくしゃと丸めゴミ箱のほうへと投げ捨てた。
そのまま、さっきまで一緒に遊んでいたのだろう、どこか陰のある少女からコントローラーを受けとって遊び始めた。
「元来、学校ではゲームの持ち込みが禁止されていた。学校に不要なものを持ちこむなっていう至極まっとうな意見だね。
親御さんたちもこんなことに時間を取られたら頭が悪くなると言い張ったそうだ。
俗にいうゲーム脳。
でも、実際は逆だった。細かな手先の動かし方、瞬間的な決断による認知力の強化、そのほかにも……」
ピコピコとゲーム機に熱中すること数十秒。ようやくゴールテープを切り、WINという祝福の文字が映し出されるまで、白夜の役に立つのか立たないのか分からないうんちくが流される。
「あの、どんなに理由を並び立てても仕事中に遊んでいた事実は消えませんよ」
その姿を一華はジト目で非難した。
このままだと、昨日密猟者だか暗殺者だか、訳の分からない連中に引っ掻き回され、疲れ切った状態で仕事に出なければならないのだから、一華もまた必死だった。必死で、上司の行動を非難する。
「仕事をしたくないがために大げさにシップをアピールするよりはましだと思うけど」
「さて、何の話しやら」
アハハ、ウフフと楽しいおしゃべり。それぞれがそれぞれの主張を見逃すことに決めた。
「で、真面目な話に戻りますが、今日の私は筋肉痛で。できればほかの人に仕事を回していただけませんか」
でも、改まってする話は仕事したくないですというあんまりにもあんまりなアピールだった。
「それは無理、この依頼はあなたにしかできないものだから」
そこまで聞いて、一華はもしかしたら今回の依頼は植物の育成かも知れないと思った。
人格面はどぶのように濁りきっているとはいえ、傭兵行を専門にしている奴らは一華よりも数段実力が上だ。
なら、専門分野で頼むとすれば、植物関係だと思ったのである。
しかし、その予想はすぐに裏切られる。もちろん、悪いほうで。
見てもらったほうが速いと、紙吹雪が舞う画面が一転。
二次元世界のキャラクターではなく、現実世界にいる人間が悲痛な顔でニュースを読み上げていた。
そこには『悲劇』があった。
逃げ惑う人々と救助に駆け付けた人間が交差し、乗り捨てられた車や火の手が双方の行き来を妨害する。
この惨劇を引き起こしたであろう人型の植物たちをニュースの画面の中で大きく映し出され警告の声を発する。
あまりの惨状に絶句する貴船波子三をしり目に、この業界に長く身を置いてきた二人はまるで天気予報でも見ているようだった。
「あなたたちにはこれを解決して欲しいんだ」
「植物ですか。なるほど、これは私向けの案件ですね。なにせ植物系の魔物の第一人者ですから」
これは誇張ではない。
魔術とはいまだ未発達な学問である。
何もかもが未知。かろうじて古代世界においては学問として体系づけられていたが、今では遠い昔。時という忘却の呪いにむしばまれていた。
それをどうにかこうにか掘り出している。
現在はいわばルネサンス。失われた古代の知見を現代に呼び戻し、今風にアレンジしている最中だった。
そんな中、かろうじて先に進んでいるのが混血だった。
そもそもの話、科学と魔術の相性が悪いのだ。
科学が理系として明確な単位を用いた計算をするのであれば、魔術というのは文系であり人の体感による測定を行う。面倒なのがその体感が実際に物理現象に影響を与えることだった。
この世界という明確な数式で定められた世界の計算式に大きいだの小さいだのと言った体感による文字列を紛れ込ませれば数式そのものが破綻してしまう。
魔術とはそういった、まったく異なる世界の物理現象をこの世界に引っ張て来る技術である。
そのせいで今現在最も信用できる観測方法が肉眼であり、もとから魔術という別世界を視認することができる視力を持つ混血たちが魔術という学問の最先端を走るのはある意味では必然ですらあった。
その中において花妖の血を引く一華は植物系統の怪異の第一人者であり、その功績はマンドレイクの養殖の成功など他とは一線を画する。
「え! こんな危機的な状況で遊んでたの私たち」
経験と実績を積み、何事にも動じない胆力を培った不たちとは裏腹に、出動の指令を受けて、最も衝撃を受けたのは今の今まで白夜と遊んでいた波子三だった。
所詮自分は新入りと、難しい話にはあえて首を突っ込んでこなかったが、それももはやここまで。
事情を説明してくださいと、ある種、当然の要求を口にした。
というよりも、どうして教えてくれなかったと非難の目を向ける。
「仕方ないだろ。依頼が来たのはまだ三十分前だよ。
つまりはこれがあなたの初任務。初の実戦。こまごまとした業務連絡と装備についての確認ね。
それが終わればヘリで現地に向かってもらうけど、いい」
「ヘリ!? どうしてそんな面倒な移動手段を使うの」
実際めんどうだよねと白夜は虚空に手をかざし、出現した異次元へと続く門から茶菓子を並べた。
「今は夜ではないので、あなたの力を使えば一瞬で到着できるのではなかった。あなたならすぐさま助けに行けるでしょ。さっさと門を開いてください」
今しがた茶菓子を取り出すなどという、くだらないことで使用されたのは、言わば門にして鍵。
空間操作系統の能力の最高峰であり、これを使えば、今被害に遭っている人間のところまで一華らを一瞬で移動させることも可能だった。
「残念だけど、銀の鍵は使えないよ。国からの許可が下りなかったしね」
「は!?」
心底から意味が分からないと波子三はまぬけ面をさらした。
何せ、白夜の空間転移能力を使えば、一華らを現地に送り届けるなどというせこい使い方ではなくここにいる全ての戦闘員を1時間かけずに送り出せるのだから。
「逃走防止ですよ、逃走防止。白夜さんのゲートを使えば追跡装置が壊れますから」
一方で、場数を踏み理不尽にも慣れた一華はすぐ国の思惑を理解した。
「まったく嫌ですね。身内を恐れるあまり敵に向ける牙を鈍らせるなんて」
「国なんてどこでも同じよ、同じ。あるいは生物か。いかなる生物であろうと最大の競争相手というのは同種だっていうね」
「今、人が襲われてるんですよ。私たちにはすぐに現地に向かう手段がある。だったら、それを使わないなんて選択はないのでは」
冷淡な二人に、いまだここにきて日が浅く、世界にある数々の理不尽を経験することなくここに来た波子三がかみついた。
「国からすれば、画面の外で暴れまわっているあの化け物も私たちも同じ扱いなのですよ。まったく、度し難い」
「で、でも」
なおも否定の言葉を口にする波子三を一華は優しく見つめる。
それは一華がかつて通過し、そして今も答えを出すことができない疑問であった。正直、波子三の意見に全面賛成したうえで、政治家連中には全員死んでくれないかなとすら思っている。
だが、今の彼女たちにはどうすることもできない問題だった。
思い悩む波子三の口に白夜はイチゴタルトを押し込んだ。
どこまでも甘く甘美な刺激。
ネットリとした舌触りに咀嚼するごとに溶け出す真っ赤ないちごジャム。
人肌のようなタルトとまじりあい、それはどこか……。
「これだけは絶対に忘れないで。政府からしたら、一番都合がいいのが私たちと画面の向こうの化け物。その双方が共倒れしてくれることが一番都合がいいことを」
「うるさい!!」
言い聞かせるような忠告に、波子三の感情が沸騰した。
細く華奢な腕に無数の血管が浮かびあがり、人という皮を押しのけるように膨張した。
そのまま感情の赴くままに、目の前の生意気を口にした女へと拳を向け……。
「私は大丈夫だよ、ほら、殺気を解いて」
結果として、彼女らの間を引き裂くような風が波子三の腕を切断した。
「え! 何これ! え! え!」
腕が切断された。しかし痛みがないというありえない状況に、波子三はひたすらに困惑した。
「いや、そいつ殺しても死なないやつだしさあ。そこまでやる必要があるっしょ」
「確かに、目の前の嫌味女を殴りたい気持ちは共感しますが、それは仲間に向けていいものではないはずです」
そこに追い打ちをかけるように、周囲が動きを見せた。
一華は、波子三の背後に回り込み、生物の急所というべき首筋に、そっと手を添える。
さらに、たった今入室したばかりの小柄で一見して女の子と間違えてしまいそうな少年大木井筒がその手から風を吹き上がらせている。
「というか、ここ私の部屋。暴れないでよね。片づけるのは私なんだからさ。
ああ、もうイチゴムースどころかプリンまで机から落ちてるじゃない」
「そんなことより、私の手、私の手は!!」
「落ち着きなよ。私の空間切断と同じ。その手は切れているようで切れていない。引っ付ければ自然に接合されるさ」
混乱の極致にあった波子三も、実際に自分の手が元に戻ったのを見て、落ち着きを取り戻した。それとともに、頭に上っていた血も収まったのか、冷静さを取り戻し周囲に謝罪をした後に自分が散らかしたお菓子類を私がやりますと掃除していく。
もともと、ここにきて日が浅い連中というのは情緒不安定な存在が多い。実際、井筒と一華は波子三の暴走を気にも留めていなかった。
なので焦った様子もなく、いつも通りに話が進んでいく。
「それで、井筒君」
「説明なら結構ですよ。俺こう見えても耳はいいもんで、ちょっと離れた会話くらいなら聞こえますんで」
「なんだろう、それはそれでプライバシー面が不安になるんだけど」
やれやれと文句を口にする白夜をその場にいた二人がお前が言うなと言う不満抱いたが、それを胸の内に押し込んだ。
空間そのものへと干渉できる彼女のほうが、その盗聴の完成度と発見のしにくさは数段上だからだ。
「で、こっちの話しなんだが。この新入りを今回の任務に連れていくのか」
そう言ってうんざりした調子でまだ新入りでしかない波子三を見つめた。
「確かに私は今取り乱した。だけど、画面の向こうには確かに今苦しんでいる人がいるんだよ。助けられるなら助けたい」
「まってくれ。そもそもの話まだ俺は新人を連れていくことに納得してないわけなんだが」
行く気満々の波子三に井筒がストップをかけた。
「そこは仕方ないよ。 人がいないんだから」
その不満を、リーダーである白夜は伝家の宝刀とでもいうべき常套句で説得する。
混血の中でもすべてが戦闘ができるわけでもない。それでいて戦闘ができる存在は一人一人が戦術レベルの力を持った存在であり、国家はそんな危険物を野放しにできないので確実に管理できる人数しか外に出さない。
その二つの枷が彼女らをがんじがらめに縛り付けている。
だからこそ、新人の初実践であっても最低限の人数で回さなければならず、時折回ってくるこの大凶をベテランであろうとも恐れていた。
「そら、新人を虐めないでよ。ここにいる一華も初任務は泣きわめいていたし、君だって、初任務のときはかすり傷で逃げまどいチームに面倒をかけた。
今度は自分自身に面倒をかけられる番がやってきたと思えばいいさ」
それは昔あった苦い記憶だ。
だからこそ問題を理解しても嫌なものは嫌なのだというのを彼は飲み込んだ。
どんなに議論しようとも、絶対に誰かがしなければならないことだからである。
そこからは、仕事に関するミーティング。
仕事に関するこまごまとした決定が行われた。
今回の一件で役に立つだろう装備、できれば、植物人間を持ち帰れというお願いなどなど。
最後に、事務報告として一華が何かの資料を渡したところで、今回の会合はお開きとなった。
そして、これから大仕事に出かける彼らを待ち構えるように、中年の男が姿をあらわした。
「やぁ、きいたぞ。今ニュースでやっているあの植物人間を捕まえに行くんだってな」
「えっと、確か彭衣さんよね」
まだ新人で、顔と名前の記憶の朧気な波子三だが、それでも彼の名前は知っていた。混血の集まりであり警備会社八葉。その中で純粋な人間でありながら幹部に名を連ねている彼は良い意味でも悪い意味でも有名人だからだ。
「ええ、よくわかりませんが死体の一部をサンプルに……」
その井戸端会議を両脇にいた二人が無理やり封じ込めた。
「無理です、もともと検疫が厳しいのに」
「そうだな、検疫は国の管轄だしな」
「そうか、少しくらいなら運べるわけだな」
二人の否定の言葉など一切耳に入ってませんという風に、唯一色よい返事をした波子三の手を握り、男は熱く語り始めた。
「あの植物人間、素晴らしいとは思わないか。完全な植物でありながらも動物のように動いている」
熱のある言葉に、変な人だなと波子三は考えていた。
「きっと、マンドレイクみたいな存在だ。食べてみたら一体どんな味がするんだろう」
衝撃的ななカミングアウトに波子三はこの人は狂人だと確信した。
「地上にに露出し動いていることから葉にも見えるが、あの頑丈そうな体色。間違いなく根野菜だ。
味噌汁みたいな汁もの、かき上げもいいかもしれない。もし持って帰ってきたらみんなで祝勝会もかねてごちそうだ」
「「「はぁ!!!」」」
腕がなるぞと袖をまくり上げ、ご機嫌な鼻歌を口ずさむ彼を止めることができる存在は残念ながらこの場所にはいなかった。
「なぁ、植物人間だけど、持ち帰るのやめね」
「残念だけど、お見上げは絶対条件だよ」
恐怖から逃れるために、お願いの放棄を提案した井筒に、その話を盗み聞きしていた白夜はすぐさまそのたくらみを却下した。
「俺に盗み聞き注意してこれかよ」
囁くようにこぼれたその言葉は、今度こそ、誰にも聞かれることはなかった。




