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第1話電話

 ここから第一章を開始します。

 

「おい、お前武器はどうした」


 軽口一番、軽いジャブが来るという予想は、悪い意味で外れた。初手に右ストレートを決めてきたのだから。もはやノックアウト寸前。ではあるが、諦めるよりも困惑が俺には先に来ていた。



「どうしたって、一体どういうことだ」


 秘儀、しばらっくれ。

 内心は汗だらだら、手が震え、口が乾き、今にも罪の告白をしたいのだが、ない袖は振れない。少なくとも借金への対策を仲間内で取り決めるまでは隠したいというのが本音だった。

 なのでここでは、はて、一体それはどんなことかなって、煙に巻く。

 こちとら帰ってきたばかり。武器をなくしたなんて誰も知らないはず、という打算もあった。しかし、この自信。もしかしたら武器に発信機がつけられているかもしれないな。

 だが、それなら向こうもまだ、ただ発信機が故障しただけと考えているかもしれない。

 考えろ考えるんだ、どうやってごまかす。



「白を切るならそれでいい、いいか三日だ。三日以内に金返せ!!

 おませみたいな役立たずなんていくらでもいるんだぞ!!」


 脅しの声が上がるとともに、向こうは乱暴に電話を切ってきた。


「いや、これなんでばれたのよ。だれも失敗を知らないはずなのに」


 互いが互いに疑心を向けるも、ここに返ってくるまでずっと一緒にいたのだ。

 それに加えて、俺以外のメンツは電話の向こうの男の声を聞いただけで顔も知らないかもしれない。つまり、裏切りは客観的に見てあり得ないのである。


「お金については問題ないのよね」

「俺の持ち金で九割は払える」

「もう、夜逃げするのも一つの手じゃないか」


 3日以内に払えと期限を切られた。

 事前に仲間とともに困難に立ち向かおうと覚悟を決めたけれども、やはり、大人に借金について詰められればきつい。使い古して光量が落ちている電球の下で、俺たちは膝を突き合わせて会議をしていた。


 ああでもない、こうでもないという、ただ時間を浪費するだけの会議を延々と繰り返しながら、最終的に俺たちが至った意見というのは、相手に誠意を見せた上で、コツコツ働いて借金を返すというものだった。

 結局第一案が通った形だ。会議をした意味があるのかないのか分からない、だが、会議とはそういう者なのだろう。



 よし、腹は決まった。これから交渉しよう。

 向こうだって、払えないと夜逃げされるよりはしっかりと誠意を見せ、働いて金を返すという選択を取られるほうがありがたいという確信があったからこそ、この話し合いでの勝利を俺は半ば確信していた。


 しかし、向こうの心持ち次第では、自分たちは崖っぷちに立たされる。大丈夫だと自分に言い聞かせ、不安に揺れる心を律する。

 確かな覚悟を持って、番号を押そうとしたまさにその時だった。


 電話が鳴る。しかも、まったく同じ番号からだ。



「これは」

「借金返せって脅迫」

「いや、もしくは交渉かも、最初に無茶な条件、次に優しい条件っていうのが、交渉ごとの鉄則だし」


 さっき連絡があったばかり、どうして再び連絡があったのかを、皆が不思議に思えど、今から再度の交渉をしようとしていた。

 向こうから連絡が来たのは意外だが、しかし、元からこちらから動くつもりだったからだ。むしろ、好都合だ。



「お前ら、ニュース見たか、ニュース!! 大変なことになってるぞ。

 お前ら、まだ武器は持ってるだろう。無いっていうなら、何か質にいれれば貸してやる」

「残念だが、俺たちが持っているのは夢と希望だけだ」

「なんだ、それ。まぁ、最後の金目のものだろう。それを置いてけ。

 それで今回武器を壊したのは水に流してやる。

 ニュースで出ている物品を持ち帰ればボーナスだってやる」



 こうして俺たちは、夢と希望を担保に、金と武器を手に入れたのだった。

今回は短め。

これから物語が加速していきます。

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