「優越」がある衆議院のほうが選挙制度に「欠陥」がある
◇裏金議員に対して「重複立候補禁止」を行ったことについて
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は「優越」が認められている衆議院が実は「欠陥の多い選挙制度」で行われていることについて個人的な意見を語っていこうと思います。
特に比例との「重複立候補」と「ゾンビ議員」について今回は焦点を当てていこうと思います。
質問者:
毎日新聞の10月6日の記事によりますと
『現職国会議員・支部長計43人(引退を表明した議員をのぞく)について、次期衆院選(15日公示、27日投開票予定)で比例代表への重複立候補を認めないと表明した。他に萩生田光一元政調会長ら6議員については、4月に決めた党内処分が続いているなどとして、小選挙区での公認もしない』
と自民党は発表したようなのですが……。
筆者:
本題に入る前にこの決定について僕の視点で一つ述べることがあります。
この一件は石破首相が森山幹事長と小泉選対委員長と協議をした結果のようなのですが――このお二人はちなみに裏金議員を処分するために作られた「政治刷新本部」の森山氏は本部長代理、小泉氏は幹事を務めていたんですね。
僕は甘々処分であるとは思っていましたが、どうして処分をするときに反発することが出来なかったのか?
そこが疑問でなりませんね。
質問者:
この追加決定はただの国民の怒りを収めるための選挙対策の一つである可能性が濃厚ということですか?
筆者:
そうなりますね。
僕としてはこの処分レベルは当然で、当初からするべきであります。
むしろ「裏金分」は「脱税」なのです。
そのために一般国民同様の追徴課税まで行うべきだと思いますので「まだ甘い」とも言えるのです。
21年に解散した旧石破派も不記載があったようですが、これも脱税である可能性が高いのにもかかわらず「修正」のみで終わってしまうようです。
この「政治資金規正法の欠陥」がそれ以前の問題だとは思いますけどね。
これは与党のみならず野党も実践するべきことであり、できていない政党は「自民党と同じ穴の狢」ということになります。
まぁ、それはまた別の機会に置いておいて、
今回はこの「比例復活を認めない」ことについて「そもそも衆院選挙に構造上の欠陥」があることについて話していこうと思います。
◇衆議院特有の「ゾンビ議員」
質問者:
この公認で無くなることや比例との重複が出来ないという事は効果があるんでしょうか?
そもそも「比例復活」や「ゾンビ議員」と言われていることはどうして起きるんでしょうか……。
筆者:
これは選挙制度の問題です。
衆議院の比例代表制度では“ドント方式”と言う各政党の総得票数を割っていき、その数が多い順番に当選者数が割り振られます。
下の選挙ドットコムの図が分かりやすいのでご覧ください。
この様に各政党に当選数が割り振られた後、各選挙地区の定数(この例の場合は6)が当選することになります。
1 政党に所属しており、小選挙区と比例代表に重複立候補している
2 小選挙区で有効投票の10%を獲得している
3 比例順位が上の人から当選するが、同順位の場合は“惜敗率(得票数/選挙区当選者票)”で当選が決まる
この3つを満たしていれば、比例復活が出来るのです。
ちなみに、前回2021年の衆議院選挙の各地区の比例代表で当選した全176人のうち7割以上の130人が重複立候補による当選です。
つまり選挙区で「NO!」を突き付けられた130人もの方が、
ゾンビのようにヨロヨロと立ち上がり、
国会議員バッチを付けているという本当に恐ろしい現象が起きているわけです。
選挙でロクでもない現職議員に対して「審判を下す」とか「落選させる」とかいう言葉がありますけど、
衆議院の重複の候補者ではそれすらも難しいというのが現実としてあるのです。
これで良い政治が出来るはずが無いです。
質問者:
なるほど、だから今回の処分は尚更「大きい」と言う声があるのですか……。
筆者:
でも、そもそもの話、理論的にはその選挙区で10%しか得票していない方も比例名簿順が上なら当選可能性があるというのは“異常”と言えることですからね。
(特に小さい政党だと重複している人が少ないので起こりうる)
衆議院は小選挙区制度も党の公認の影響が強すぎるので、衆議院選挙全体の選挙制度改革が必要だという事です。
◇参議院の方が「選挙制度」の要素だけ幾分マシ
質問者:
参議院ではどうしてそう言った「ゾンビ議員」みたいなことって無いんですか?
筆者:
参議院では小選挙区74人と比例代表50人が任期6年で3年ごとに半数ずつの改選します。
参議院の比例代表は全国1ブロックの比例代表で政党名か候補者名を記入し、
先ほどと同じドント方式で政党ごとに割り振った後、候補者の得票数の多い順番で当選していきます。
衆議院との一番の違いは選挙区との重複立候補はできず、人口が多い都道府県は中選挙区なので、参議院の方がまともな選挙方式と言えます。
質問者
よく、「参議院は衆議院の劣化で意味が無い」とか言われることあるんですけど、
「選挙制度」で見た場合は幾分マシであり、「まだ民主的」だと言えるんですね……。
でもなんか参議院の方も問題がある方が多いような……
筆者:
参議院は「優越」が無い上に、内閣総理大臣はこれまで衆議院議員からしか指名されたことが無いために、政治家として「2軍」と言える方が多く立候補されている傾向にあるためですね。
優越に関しては憲法59条などで規定されているために、中々変えることが出来ません。
そのために公職選挙法の改正で済む衆議院を参議院と似た方式の選挙にする方が無難だと僕は考えます。
◇“比例代表のみ“もまた危険
質問者:
選挙区制度はお金がかかるというお話も聞くのですが、「比例代表のみ」の選挙ではダメなのでしょうか?
そうすれば立候補の供託金だけで済むような……。
筆者:
確かに、全てが比例代表による選出であれば、より国民の声が細かく反映される可能性はあります。そして供託金だけで済むのも事実です。
ただ、比例代表オンリーにすると党が公認するかどうかの裁量については国民が選べる余地が薄いです。
と言うのも党上層部しか党公認の選択権が無いわけですから、その方式や順位付けが民主的でなければ、いくら選挙方式が民主的でも全く無意味になるという事です。
仮に公認候補者を党員が選べたとしても、投票している中で政党の党員である方はかなり少ないので微妙なところになります。
国民の意思が政治に反映されないことが最大の問題であるために、
お金がかからないことはいいことですが、「人気投票」「知名度選挙」度合いが加速し、全てを比例代表にすることも危険であると僕は考えます。
質問者:
塩梅が難しいという事なんですね……。
筆者:
政党の内部規律についてまで細かく法律で規定するとなればそれこそ民主主義に反することになりかねませんので、現在の参議院の選挙方式ぐらいが無難であり、国民にも受け入れやすい方法かなと思います。
◇やはり選挙に行くしかない
質問者:
最後に、重複立候補者を落選させるのは困難と言うお話でしたが、どうすればいいんでしょうか?
筆者:
結局のところその候補者に投票しない(対立候補に投票する)ことが重要になります。
大政党であればあるほど、比例代表で同じ順位の重複候補者が乱立します。
惜敗率が低ければ低いほど落選率が高くなりますからね。
また、自民党は比例復活をした議員に対しては役職から遠ざかる傾向にあります。
前回の衆議院選挙で落選した甘利明氏が最たるものです。
甘利氏は当時幹事長でありながら小選挙区で落選して比例代表で復活したので、幹事長を辞任しその後も3年間は重要ポストに就けていません。
この様に比例復活で議員になれたとしても、党内の影響力は大幅に低下するので、全く無意味でも無いのです。
質問者:
なるほど、兎に角選挙に行くことが大事になるわけなんですね……。
筆者:
選挙に行くことは日本国民として「大前提」だと僕は考えます。
石破内閣は特に「日和る」傾向も強そうなので、ドンドン声をSNSでもいいので上げていくことが非常に重要だと僕は思いますね。
という事で今回は「比例復活」や「ゾンビ議員」が130人もいる危険な選挙制度であり、衆議院も参議院と同じ選挙制度にすることが無難な落としどころではないか? という事を書かせていただきました。
今後もこのような政治・経済について個人的意見を発信していきますのでどうぞご覧ください。