8.警告
僕――モクモクは、オーディンたちに取り押さえられ、アテナの前に転がっていた。
「アテナ、ごめ〜ん」
「モクモクって、なんでそんなにアテナをよく怒らせるんですかにゃ?」
「……タルタロスさんに頼んでみますか。【神の牢獄】で悔い改めなさい」
アテナは眉間にシワを寄せた。
「アテナ、他の神ならともかく、モクモクにはタルタロスちゃんの権能は通じないにゃ」
「……そうだったわね。腐ってもコイツ、私たちより格上の神だもの」
「おい、"腐っても"は余計だろ」
「ルシファー、何かいい案はないの? どうにかしてコイツを懲らしめるための」
「ない! だって、モクモク強いんだもん!」
「だよね」
「ところで……空八から変な匂いがしたんだけど、モクモク、お前何か知ってるんじゃないか?」
「急に"サタン"モードかよ。驚かせるなって」
ルシファーの黒い目が赤く染まり、黒い角も赤に変化していた。
「それで、何を知ってるって?」
モクモクが問い返す。
「空八から……俺たちと同じ匂いがしたんだ」
「「「⁉」」」
「お前の鼻は犬かよ」
アテナ、ディアーナ、バステトは驚愕していた。
「サタンよ、それは上層部でも極秘の情報だ。あまり広めないでくれ」
オーディンが低く答える。
「どうしてだ、オーディン」 ルシファー――いや、サタンが問い詰める。
「……空八のステータスを見た時、"ハズレ称号"があっただろ」
モクモクが静かに口を開く。
「ハズレ称号? でも、モクモクは前に、空八くんのステータスに『チート』を仕込んだって言ってたよね……」
ステータスを見なかったアテナが疑念を浮かべる。しかし、モクモクの一言でその場は静まり返った。
「――第三者によって改ざんされた。 …………『■■に嫌われる者』の■■の部分が、それだ。改ざんしたのはヤツについて、これからオーディンたちと話し合うつもりだ」
「恐らく、空八を殺そうとしたんだろう。あのステータスで、あの世界にいたら、いつ死んでもおかしくなかった」
オーディンは頷いた。 ちなみに、空八が住む世界の死亡率は、地球の100倍。その原因は、モンスターやテロの多発によるものだ。
「……なんのために、空八の人生を歪めたの?」
ディアーナの声には怒りがこもっている。
「それはな……空八の前世が関係してる」
モクモクが静かに言った。
「前世って、地球の?」
「違う。地球の何億回前の話だ。これ以上は言えない」
「わかった。じゃあ、■■のヤツは誰なんだ?」
「……危険だぞ。そいつらには出すな」
「警告なのかにゃ?」
「そうだ。お前らじゃ、手に負えない。でも大丈夫。
万が一のために、最強の僕のところに直接連絡が来る腕時計を渡したんだ」
「……相手の名前を教えて」
「俺の話し聞いてましたか?」
アテナが静かに言った。
「私にも教えて」
「俺にも教えろ」
モクモクは長い溜息を吐く。
「言うと思ったよ。相手は絞れている。
これが唯一の警告だ。ソイツらは俺達の先祖にして、我々新神を滅ぼそうとした」
――旧神だ。