7.神の権能
2024/9/11
改変が終わりました。
「ミス?」
「ああ。君にはこの世界で楽しんでもらいたかったから、チートを授けるつもりだったんだが……逆のことをしてしまったみたいだ」
「これって、モクモク達が作った称号なのか?」
「ああ。……ごめん」
「いや、別に謝ることじゃないけど」
「何か欲しいものはないか?」
「え、いいよ、別に」
俺は手を横に振った。
「いやいや、こちらの不手際で君の人生に大きく干渉してしまったんだ。何か報いを受け取ってくれ」
そう言って、モクモクは頭を下げた。
「ちょ、そんな、頭を上げてよ。大丈夫だから!」
思わず身を乗り出して言うと、モクモクは申し訳なさそうに顔を上げたが、そのまま少し考え込んだ。
「……そうか。すまない。……しかし、どうしようか」
困った様子で再び考え込むモクモクの横で、オーディンが彼に耳打ちする。
「モクモク、お前と同じ階位の誰かが関わっているかもしれない。だから、有祐に強力なジョブを……」
「そうだな。しかし、最悪の場合……」
「やはり……」
神々は困惑した様子で話を続けていた。なんの話だ?
不安になりかけたところで、アテナが口を開いた。
「なら、私達の権能を与えたら良いんじゃない?」
「「「「「それだ!」」」」」
と神様たちの声が一斉に重なる。
「えっと、神の権能って?」
俺はアレスに尋ねる。
「神の力だよ。司るものによって力の効果は違うけど、どれも強力だ。……有祐、手を出してくれ」
「?」
疑問に思いながらも、俺は言われた通り手を出す。すると、アレスは俺の手を握り――
『満永空八は軍神アレスの権能【神算戦艦】(劣化版)を獲得しました』
と、謎のアナウンスが頭に響いた。
「「「「え?」」」」
「お、やっぱり。思ったとおりだぜ。よろしくな、空八。これで俺とお前は家族だ。お兄ちゃんと呼べ」
え? なにこれ? 【軍神アレス】の権能【神算戦艦】を獲得した?
「おい弟、ステータスを見てみろ」
「え? 俺、いつからお前の弟になったんだ?」
戸惑いながらも、言われた通りにステータスを開く。
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《ステータス》
【名前】満永 空八
【年齢】15歳
【レベル】10Lv
【称号】
神に愛される者
*《■■に嫌われる者(呪い)》は上書きされました。
【体力】13/15
【魔力】14/14
【筋力】5
【敏捷】5
【器用】5
【耐久】5
【賢慮】5
【幸運】1
【神力】8000
【〈ユニーク〉ジョブ】神の使徒(軍神)
*《奴隷》は上書きされました。
【SKP】
10ポイント
【スキル】
なし
【 権能 】
《神算戦艦》
【状態】 青あざ治りかけ(複数)
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「え? 称号とジョブが上書きされてる……」
「よかったな! 有祐」
「「「「「アレスゥゥウウ!!」」」」」
「え?」
突然、他の神たちがアレスに怒鳴り声をあげた。
「お前、何横取りしてるんだよ!」
「私が最初だったのに……殺す」
「殺す殺す殺す殺す……」
「……俺、逃げるわ! 有祐、またな!」
アレスは笑いながらドアの向こうに全速力で走り去っていった。
「「「「「逃げんなぁぁぁあああああ!」」」」」
怒りに満ちた神々がその後を追いかけ、辺りは一気に静かになった。
今、ここにいるのは【アテナ】【オーディン】【モクモク】【バステト】【ルシファー】【ディアーナ】と俺だけになった。
「……じゃあ、今いる私達で儀式を始めますか」
とアテナが冷静に言い出す。
「えっと、今何をしたんですか?」
「さっき、あの馬鹿と手を握ったでしょう。それが〈祝福の儀〉と呼ばれる儀式で、神の権能が与えられたのよ。劣化版のものだと思うけど」
「馬鹿……?」
俺は思わず呟いた。
手を繋ぐだけで儀式が終わるって?
それに、俺がそんなものもらっていいのか?
「神の権能って……絶対チートじゃん」
「まぁ、そうね。しかも、あの馬鹿の権能だし」
どうやらアレスはアテナに嫌われているらしい。
だが、そんな簡単に信用してくれるのか?
「……そんなに俺を信用して良いんですか?」
俺はついに尋ねてしまった。もっと慎重になるべきじゃないのか?
アテナは微笑んで言った。
「ふふ。チート能力を持つ人はね、自分の信条を持った正義と悪しか持ってはいけないのよ。神の仕事って、時にこうしてチート能力を授けることもあるけど、必ずそれなりの信条を持った人にしか渡さないの。だから安心して」
なんかすごいことを言われている気がするけど、俺はただの陰キャなんだが……。
「それじゃあ、手、出して」
アテナが右手を差し出す。俺は戸惑いながらもその手を握った。……女性の手を握るなんて、運動会以来かもな。
「……空八くん、そろそろ離してくれない?」
「え、あ、ごめんなさい!」
慌てて手を離す。しまった、変に長く握りすぎた。
「べ、別に良いわよ」
そう言いながらも、アテナは少しうつむいた。顔が赤く見えたのは気のせいか?
その時、頭の中に声が響いた。
『満永空八は【英雄の女神 アテナ】の【創乱神製】(劣化版)を獲得しました』
――またアナウンスが聞こえた。まるでゲームみたいだな。
「それじゃあ、俺もしようかの」
とオーディンが立ち上がり、続いてバステトや他の神々も準備を整える。
次々と手を差し出してくる神々。俺は戸惑いながらも、それぞれの手を握る。
『満永空八は【戦争と死の神 オーディン】の【王狩章典】(劣化版)を獲得しました』
『【猫神 バステト】の【軍生黄金】、【生命の女神 ディアーナ】の【寒月回満】、【傲慢の大魔 ルシファー】の【堕天双神】(劣化版)を獲得しました』
……なんだこれ? まるで中二が考えたような四文字熟語ばかりだし、どれも異常に強そうだ。
「ん? あの……神力って何ですか? ステータスに新しい項目が増えてるんですけど」
「神力は、神の権能を使うための燃料みたいなものさ。君たちがスキルを使う時に魔力を消費するだろ? それと同じように、神は神力を消費して権能を発動するんだよ」
モクモクが答えた。
アテナがモクモクに視線を向ける。
「モクモク、あなたは空八くんと祝福の儀をしないの?」
「いや、僕はいらないだろう。もう、有祐はチートでいっぱいだしさ」
「……そうね」
とアテナが頷く。
「そうそう、配信の道具を渡さないと」
モクモクが両手を広げると、空中に茶色い袋が現れた。
「ほい、これどうぞ。一応、空八の仮面も袋に入れたから」
「仮面?」
と俺は疑問を口にした。
「うん、顔バレ防止用。神の中にも、ちょっかいかけてくる奴がいるからさ」
「ああ、なるほど」
そこにバステトが興味津々に聞いてきた。
「ねぇ、モクモクにゃ。空八くんは何を配信するのにゃ?」
モクモクは少し考えた後、
「『世界の頂点を目指してみた』とかで良いんじゃないかな?」
と言った。
……こいつ、何言ってんだ?
「モクモク、お前は何を言ってるんじゃ?」
オーディンも眉をひそめる。当然だ。こんな馬鹿っぽいタイトルに俺は賛成できない。
「もっと普通のでいいんだよ……ゲーム実況とかさ」
「『最強を目指してみた!』でいけるじゃろ!」
「なんでや」
俺はオーディンさんに静かに突っ込んだ。
だって、オーディンさんって戦争と死の神だよ。そんな神に勢いよく突っ込めるかよ。
「え〜、そうか? わしは良いと思うが」
「……まぁ、そのタイトルでいいんじゃないかな。空八くんもそれでやってみなさい」
アテナさんが言った。
え、何この流れ?
「悔しくないの?」
「え?」
急にアテナが真剣な表情で問いかけてきた。
「青あざだらけね。虐められて悔しくないの?」
「っ!」
俺は喉に詰まった。
どうやら、青あざに気付いていたらし。
「……悔しいですよ。でも……」
虐められて、世界中から笑われて――そのトラウマが、俺の中に深く刻まれていた。
アテナは冷静に言う。
「私だったら、そいつらを半殺しにするわ」
「は、半殺し?」
アテナさんの第一印象が崩れるのですが。
「あなたには自信を持って欲しい。満永空八、力を使って奴らを見返しなさい。
あなたなら、きっと出来るわ」
「お〜アテにゃも良いこと言うのにゃ」(バステト)
「あれ? アテナさんって、男嫌いで有名じゃなかったっけ?」(ディアーナ)
「そうだよね! そういえば、アテナって気に入ってる人の前でカッコイイことを言う癖あるよね!」
(ルシファー)
「アテナにも異性の友達が出来たのか。良い瞬間を見たの〜」(オーディン)
「タイトル『アテナがデレた件』……配信でいけるかもな」(モクモク)
「――モクモク、あなたは後で半殺しの2倍にしてあげる。みんな、私に半殺しされたくなかったらコイツを取り押さえて」
「「「「イェス マム(にゃ)!!」」」」
「は⁉ なんで俺だけ! ちょ、お前ら来んな! 半殺しの二倍って殺す気か!」
「……っぷ、アハハハ!」
逃げ回ってるモクモクを見て、俺は笑ってしまった。
ブックマーク、評価よろしくお願いします。
2024年9月20日
【権能】、【神力】にステータスを新たに加えました。
ストーリーを一部改変しました。