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「俺と神々のラグナロク 」〜黒歴史から始まる最終戦争〜  作者: ライオンの書
壱章 黒伶騎士(クロレキシ)の爆誕
3/13

3.モクモク


「……誰ですか?」

ある日の朝、俺はいつものように一人で朝食を食べ、学校へ行く準備をしていた。

通学路を歩いていると、突然、まばゆい光が僕を包み込んだ。

直後、耳をつんざくような衝撃音が響き、激しい痛みが体を貫いた。

俺は何が起こったのか理解する間もなく、意識を失った。

次に気がついたとき、四方を白い壁に囲まれた部屋に立っていた。


『こんにちは』


目の前には僕と同じくらいの背丈の少年がにこにこしながら現れ、僕の肩を軽く叩いてきた。彼のTシャツには、ピカピカと金色に輝く一文字―― 神 と書かれていた。


「僕の名前はモクモク。地球の元管理神だ。よろしく御影有祐くん。」

「……夢か」

「いや、現実だって。まぁ無理もないけどね。とりあえず、信じてくれる?」


僕は頬を抓った。痛い。もしかしたら、夢ではないのかもしれない。


「……分かりました。信じます」

「よし、じゃあ話そうか。ここは神々が住んでいる『天界』だ。そして、君がここに呼ばれた理由はただ一つ。君にプレゼントを用意したんだ」

「プレゼント?」

「とりあえず、そうなった経緯について話そう。人間には、中二病っていう時期があるだろう?」

「なんで、そこで中二病の話が出てくるんですか?」

「これが大いに関係ある話なんだ。実は、僕たち神にも君たち人間と同じように、そういう時期があるんだ。僕にもその時期があった。そんなある日、僕が人間界を観察していたときのことだ。君が中二病魂を込めて書いたノートに出会ったんだ」


僕は無言で話を聞いた。


「君たちの世界では黒歴史ノートと呼ばれるものだ。それを、僕はこっそり盗んで、天国に広めちゃったんだ」

「ちょっと待ったぁあぁあああぁあぁぁあああ!!」


『盗んで、天国に広めちゃったんだ』だと!

どうしてそうなったんだ⁉


僕は中学1年生から中二病に目覚めた。

そして、その妄想をすべてノートに書き込んだ。

それは、今となってはなかったことにしたいほど恥ずかしい内容が詰まったノートだ。

中二病を卒業してから読み返すと、顔から火が出るような内容ばかり。


それが、黒歴史ノート。

それが『My Ragnarok』。

これは僕が書いた物語だ。


物語をざっくりまとめると、主人公は魔界の怪物から人々を守るという話だ。

魔界には邪神や魔族、魔物などが住んでいる。その怪物から身を守るために、人々には生まれつき《ジョブ》というものがあり、それぞれの人に一つ与えられた。

そのジョブによって、取得可能スキルやステータスの伸びが変化したり…………。


なんで俺は自分の黒歴史ノートを説明してるんだ。急に恥ずかしくなってきた。

とりあえず全部で20巻あり、世界観の設定も細かく書いてある。


「本当にごめんな。ちょっとした好奇心だったのよ。あ、そうそう、何やかんやあって、君のノートが本になったんだ」


「何やかんやで、黒歴史ノートが本になるわけないだろ!」


モクモクは口を止めずに話し続ける。


「これがまた大好評でね。悪魔語や天使語にまで翻訳されてるよ。天国にいる死者も読んでるし、地獄に落ちた罪人たちも、ひとつの娯楽として楽しんでるんだ。子供から大人まで、みんなに大人気なんだよ」

「こ、殺してくれ!! 死にたい!」

「もう死んでるよ。大丈夫、僕が盗んだ君のノートはちゃんと元の箱に入れておいたから」

「そういう問題じゃないよ!」


恥ずかしい! 社会の窓を全開のままレッドカーペットを歩くよりも恥ずかしい! そう思った。


「それでね、ファンたちが作者に最高のプレゼントを贈りたいって考えたんだ。ということで、『My Ragnarok』を書いた御影 有祐、君にご褒美をあげる! 感謝しなさい!」

「なんで上から目線――」





「僕たちファンは、『My Ragnarok』の世界を創ったんだ」




……は?

「は?」


今、こいつ、何て言った?


「そして、君を『My Ragnarok』の世界に『満永空八』として転生させます。

ちなみに、ここでの記憶はなくさないようにするつもりだからね。それと」


「――待て待て待て! おかしいだろ! 世界を創れるなんて」


「いや、俺たち、神だよ? エリートの神なら、60分で世界1つ創れるんだぞ?」


……いや、確かに神様なら世界を創れるかもしれない。

でも、中二病が妄想した世界を本当に創るなんて――


(何か裏がありそう)


モクモクは顎に手を当てて、フムフムと頷いた。

「なるほど、裏がありそうね」



「心読まれてる!」

「いや、だって僕、神だし。まぁ、君の思ったとおりで合ってるよ」

「え?」

「転生する代わりに条件が2つあるんだよ。一つは動画配信。二つ目は人間界の動画を天界に送ってもらう」

「動画配信?」

「そう。君が天界と繋がっているカメラに向かって動画配信をするんだ。一応、天界のネットはあるからね。ゲーム実況とか雑談でも良いよ。二つ目は、ネットに上がってる動画を片っ端から天界へと送ってもらうこと」

「なんで、そんなことをするの?」

「実はな、今の天界はいろんな世界の娯楽が流行ってるのよ。特に、人間が存在する人間界と分類される世界の娯楽がね。君の黒歴史ノートもそうだけど、漫画、小説とか」


モクモクは少し得意げに話し始めた。


「へぇー、珍しいのか?」


意外だな、と思いながら問いかける。


「珍しいね。神の世界ではそういう娯楽を作る神が少ないからね。世界に漫画家が数人しかいないっいう感じかな」

「それが今回の話と関係あるの?」


ふと疑問が湧く。


「あぁ、神の世界で今度は、人間界の「配信」、「動画」が見たいという声が上がってるのよ。特に若い世代から。それが、今、問題になってるんだ」


モクモクは深刻そうに言った。


「? 何が、問題なんだ?」


まだ全貌が掴めず、問い返す。


「『天変地異』。これのせいで、動画や配信が見れないんだよ」

「天変地異?」

「世界に神が色々と干渉すると、未来や過去が矛盾したりして、周囲に悪影響が及ぶ。そして、『秩序』が『混沌』へと変貌し、世界が崩壊する。これが、『天変地異』と呼ばれるものだ」


天変地異って、実際にあるのか?でも――


「俺のノートを盗んだり、読んだりしてるし……それって干渉してるのでは?」


疑問が浮かんで問いかける。


「盗んだりって……人聞きが悪いな。それは「天変地異」の原因に繋がらないからだよ。

僕たちは、漫画や黒歴史ノート、他にはお金や資源に干渉しても、天変地異には繋がらないと分かっているんだ。でも、人間界のネットや動画を勝手に干渉すると天変地異が起きてしまうことが分かったんだよね〜」


モクモクの言い訳じみた説明に、僕は納得しかねる。


「でもね、若者たちもそうだけど、僕たち大人も見たいのよ」


お前って、大人か?

俺と同じくらいの身長だぞ。……いや、神様は寿命がないのか?


「……実際に天変地異が起きたらどうなるの?」


恐る恐る尋ねた。


「う〜ん、これは教えられないんだ。ごめん」

と、手を合わせるモクモク。


……まぁ、知らなくて良いことはあるからね。


「人間界側から動画を送ったら、天変地異にならないか?」

「『天界から人間界に干渉』だと天変地異が起きるけど、その逆は起きないことが分かってる。つまり、『人間界から天界に干渉』だと問題ない」

「……人間界側から天界に動画を送れば神様が見ても問題は無いってこと?」

「そういうこと」

「へぇ〜。……俺が動画配信で雑談、ゲームをする理由は?」


ネットの動画を天界に送るのは、若い世代の神が人間界の動画を見たいから、というのは分かった。でも、俺が動画配信をする理由がイマイチ分からない。


モクモクは三文字で答えた。


「おまけ」


「言い方ひど!」



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