表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「俺と神々のラグナロク 」〜黒歴史から始まる最終戦争〜  作者: ライオンの書
壱章 黒伶騎士(クロレキシ)の爆誕
2/13

2.脱退


入院生活も1週間が過ぎた。

幸い、肋骨が数本折れただけで済んだが、体中がまだ鈍い痛みを訴えている。

世界初の変異種ゴーレムを倒したことで【風の祠】の名は瞬く間に広まった。

配信がバズり、登録者数はとうとう100万人を突破したらしい。


「お邪魔するよ、奴隷」


不意に病室の扉が開いた。

入ってきたのは、黒を先頭にした【風の祠】のメンバーたち。


「黒、お前の口から伝えてやれ」


「え〜俺? 分かったよ」

竜が黒に目配せし、黒は面倒くさそうにため息をつくと、冷たい言葉を吐いた。


「奴隷、お前にはこのパーティーから脱退してもらう」


「は?」


脱退?


「どうして」


「だって、お前の【ジョブ】は《奴隷》じゃん」


その言葉が突き刺さる。

俺の心臓が痛みを感じたのは、肉体的なものではなく、精神的なものだ。


「っ!」


思わず言葉を失った。


「俺達は変異種ゴーレムーを倒した。このことから俺達はダンジョン協会に力を認められ、B級からA級に昇格することができるだろう。俺たちの活躍が、前回よりも大勢の人間たちに視聴される。

そうなればお前のようなゴミ【ジョブ】は、この【風の祠】のパーティーに相応しくない。それがお前をクビにする理由だ」


「そ、そんな……」

「私達の動画がトレンド入りしてるのは知ってる?」


四音が静かに言葉を投げかける。

俺は反射的に答える。


「ああ」

「……その様子だと知らないのね」

「何がだ?」

「炎上したんだ」

「え?」


それを聞いた瞬間、全身が固まる。

四音が差し出したタブレットには、無数の非難が書き込まれていた。

コメント欄は怒りで溢れていた。


“かわいそう”

“メンバーは道徳心が無い”

”これは酷い”


「奴隷のせいで炎上してるの。だから、脱退して」

「……いや、そっちの不手際だろ。なんで俺が脱退しないといけないんだよ!」


だが、彼らは冷淡に見下ろし、笑みを浮かべるだけだった。


「え〜《奴隷》のお前が何言ってるのよ」


ノノが冷笑を浮かべながら、さらに俺の心を踏みにじる。

ふざけんじゃねえぞ。


「仕方ねぇだろ。視聴者が脱退させろって言うから」


竜は鼻で笑いながら言う。


「決めるのは俺だろ!」


そう叫んだが、その言葉は虚しく響くだけだった。


「俺達は世界で有名になったんだ。お前のようなゴミは、もうこのパーティーにはお荷物なんだよ……黒」


竜が黒に視線を送る。


「うん。もし、奴隷が脱退しないなら……奴隷を学園から退学させる」

「はあ!?」


黒は【ダンジョン神楽学園】の理事長の息子だ。そんな奴に退学をちらつかされたら、俺に選択肢なんてない。


「脱退は嫌なんだろ。じゃあ、退学だ」


黒の言葉は冷たく、響く。まるで、俺の運命を握りしめたかのように。頭がぐるぐると回り、まともな判断ができない。

選ばされる――いや、選ばされているとしか思えない。


「選ばせてるんだ。感謝したほうがいいよ〜」


ノノが歪んだ笑みで言う。四音もニヤニヤと笑っていた。


「脱退するか、退学するか。選びんでよ、早く」


こいつら……。

奴らの声が耳を突き刺す。脳内で痛みを伴い、響いてくる。


「……わかった。脱退する」


それが、俺にとって唯一の選択肢だった。どうしても中学校の退学だけは避けなければならない。

俺には金が必要なんだ――父さんの治療費を稼ぐために。


「決定だな」


その瞬間、目の前に半透明のウィンドウがふわりと浮かび上がった。


【『風の祠』から脱退しますか?】


淡々とした問いかけに、俺は深く息を吸い込んだ。


「……はい」

【満永空八はパーティーを脱退しました】


ウィンドウは消え、元メンバーの嘲笑が響いた。



____________________________________



入院生活が終わり、家に帰宅した。

リビングの扉を開けると、そこには自分より背が低い妹――満永 亜友がソファーでスマホを触っていた。

そして、部屋の中央にある机の上に、一枚のメモ用紙が置かれていた。


『空八へ。

ごめん。今日、夜まで仕事があるから、私の代わりに亜友の晩ごはんを作ってね。

11時までには戻るから。 by 母』


(お母さん、働きすぎなんだよ。……クソ。俺のせいでまた負担を掛けた)


「お兄。怪我、大丈夫?」


後ろを振り向くと、亜友はスマホから目線を外し、俺を見ていた。


「ああ、大丈夫だ。お腹すいてるだろ? 何が食べたい?」


「う〜ん、ハンバーグ」


「よし、分かった。今作るから」


「私も手伝う!」


「ありがとう」


その夜、お母さんは帰ってこなかった。




風呂に入り、歯磨きを済ませたあと、俺は自室のベッドの上に倒れ込んだ。


「……はぁ」


やっぱり、俺は何をやってもダメだ。


「ステータスオープン……」


俺の正面に半透明のウィンドウが出現した。


________________________________


《ステータス》

【名前】満永 空八

【年齢】15歳


【レベル】10Lv/10Lv 

(上昇すると、ステータスが上がる。1Lv上昇によってSKP(スキルポイント)が加算)


【称号】■■に嫌われる者(呪い)

 (世界から認められた特別な人に与えられるもの)


【体力】13/15    (疲労状態)

【魔力】14/14     (体内にある魔力量。スキルが発動すると減少する) 

【筋力】5       (攻撃力)

【敏捷】5       (移動速度、攻撃速度)

【器用】5       (命中率)

【耐久】5       (防御力)

【賢慮】5       (賢さ)

【幸運】1〈固定〉    (運、クリティカル率)


【ジョブ】奴隷

(ジョブによって、取得可能スキルやステータスの伸びが変化する)


SKP(スキルポイント)】10

 (スキルのレベルを上げる為のポイント。1Lv上昇によってポイント加算)


【スキル】〈封印されています〉

(様々な効果のあるモノ。発動は念じるだけ)


【状態】 疲労、青あざ(複数)、【■■に嫌われる者】(呪い)


________________________________


「なんだよ、この称号にジョブ……」


『だって、お前の【ジョブ】は《奴隷》じゃん』

『お前のようなゴミ【ジョブ】は、この【風の祠】のパーティーに相応しくない』


あいつらの言葉が脳内に反響する。


「……奴隷ってなんだよ」

俺はそのまま眠りについた。


____________________________________________


【称号】■■に嫌われる者(呪い)

・この称号を持っている者は、何をやってもダメになる。

・【ジョブ】が《奴隷》となる。

・【レベル】に上限が設定され、レベルが10になるとそれ以上は上がらない。

・【幸運】が「1」に固定される


 【ジョブ】《奴隷》

・不幸せな運命に束縛された者。何をしてもダメ、何の取り柄もない。

・《スキル》を獲得出来ない、使用できない。


____________________________________________



「……誰ですか?」


ある日の朝、俺はいつものように一人で朝食を食べ、学校へ行く準備をしていた。

通学路を歩いていると、突然、まばゆい光が僕を包み込んだ。

直後、耳をつんざくような衝撃音が響き、激しい痛みが体を貫いた。

俺は何が起こったのか理解する間もなく、意識を失った。

次に気がついたとき、四方を白い壁に囲まれた部屋に立っていた。


「こんにちは」


目の前には僕と同じくらいの背丈の青年がにこにこしながら現れ、僕の肩を軽く叩いてきた。彼のTシャツには、ピカピカと金色に輝く一文字―― 神 と書かれていた。


「僕の名前はモクモク。地球の元管理神だ。よろしくね、()()()()くん」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ