18. 神界基礎講座~!!
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僕とモクモク、そしてアテナさんの三人は、バーのカウンターテーブルに並んで座っていた。
戦の女神を前に、僕の背筋は勝手に伸びていた。
「はぁ~~……なるほどね」
ため息交じりに言葉をこぼしたのはアテナさんだ。
その手には、見た目だけはおしゃれなカクテルグラス――中身は多分、神様専用のアルコール。
戦闘が終わり、ルシファーさんたちをアテナさんが叱り飛ばし、
僕たちが事情を説明し終わるまで……時計を見ると、一時間は経っていた。
ちなみに、そのうち五十分が説教タイムである。
地獄より静かだった。いや、静かすぎて逆に怖かった。
「……まったく、こいつらは」
アテナさんが視線を横に向ける。
その先には――
燃え尽きた三人の影。
ルシファーさん、ギャル天使のメタトロンさん、黒髪天使のガブリエルさん。
三人仲良く、テーブルの隅で真っ白に灰化していた。
「あの……ルシファーさん、生きてる?」
「…………フフ……お説教、こわいよ……」
「メタトロンさん、白目むいてるよ!? え、呼吸してる?!」
「……生きてるわ有祐様。死にたい気分なだけ」
ガチで何があったんだ、あの五十分。
今ならきっと、地獄の業火でもあの人たち笑って突っ込める。
アテナさんはグラスをくるくる回しながら、僕に視線を戻した。
「で、有祐くんは――なんで天界に来たの?」
「モクモクに『来て』って言われて」
「あ、そうだった」
おい、忘れんなよ。
モクモクが軽く笑う。
「有祐はまだ、こっちの世界のこと詳しく知らないだろ? だから、少しずつ教えようと思って」
「へぇ……そういうことね」
アテナさんは頷くと、すっと立ち上がった。
グラスを置く音が、カラン、と小さく響く。
「じゃあ私は、この店の修理をするためにヘパイストスくんへ電話してくる」
「ヘパ……?鍛冶の?」
「そう。腕は確かだけど口は悪い職人気質。あ、あと爆発音がしても気にしないでね」
いやいや気にするわ!
ていうか、さらっと“爆発”を日常会話に混ぜないでほしい。
扉の奥へ消えていくアテナさんの背中を見送りながら、僕はため息をついた。
「……なあ、モクモク」
「ん?」
「俺、天界に来てからずっと胃が痛いんだけど」
「気のせいだよ。慣れだ、慣れ」
「それで慣れたら、俺もう人間やめてるって……!」
モクモクが笑いながらコーヒーを一口。
その笑顔が、妙に頼もしく見えた。
「大丈夫。有祐、意外とこっち側向いてるから」
「向いてねぇよ!!」
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カウンターの上には湯気の立つ紅茶と、謎に豪華なクッキー(たぶん神界製)。
その隣では、モクモクがいつの間にか丸眼鏡をかけていた。
「……先生モードかよ」
「うむ。ではここからは“モクモク先生の!神界基礎講座~!!”」
「軽っ!」
店の奥から、どこからともなくスポットライトが点灯した。
いや、誰が照明係なんだよ。
モクモクが指で天井を指すと、そこに光の魔法陣が浮かび上がった。
ホログラムのように、いくつかの世界が映し出される。
■神界とは
「まず最初に――この“神界”ってのは、一つの世界の名前じゃない。
いくつかの階層や次元が束ねられてできてる、“多層宇宙”みたいなもんだ」
「へぇ……マルチバース的な?」
「お、話早いじゃん。さすが元オタク勇者」
「勇者じゃねぇし!」
「まぁまぁ。で、神界は主に4つの世界に分かれてる」
■1.天界
「まず、ここ“天界”」
光のホログラムに映るのは、美しい空中都市と雲の上に浮かぶ大聖堂。
「ここは、神々・天使・精霊・神話の英雄たちが暮らす世界。
秩序と法、そして“奇跡”が支配する場所だ。
まぁ……平和そうに見えて、今日みたいにバカ騒ぎも多いけどな」
「……平和ではないな(物理的に)」
「うむ。あと、天界は“理想”のエネルギーを司ってる。
ここで祈りが集まると、それが力になる。いわば“信仰エンジン”みたいなもんだな」
「信仰エンジン……燃費悪そう」
「悪いよ。だって人間が祈らなくなったら燃料切れだから」
「うわぁ、リアルな社会問題みたいな構造」
■2.魔界
モクモクが指を鳴らすと、赤黒い渦が現れた。
そこには火山と溶岩、そして巨大な影がうごめく。
「次に、“魔界”」
「うわ、なんかもう名前からして不穏!」
「ここは神話の怪物、堕天した悪魔、破壊と混沌を司る存在たちの世界。
理よりも“欲”が力になる場所だ。
生まれ持った力より、“どれだけ願うか”で化け物になる世界」
「……つまり、強欲が正義?」
「そう。“欲”こそ進化の原動力、っていうのがあいつらの哲学」
「わぁ……ブラック企業みたい」
「確かにな。でも、アイツらは面白いし、意外と良識的な人たちが多い。交流しておいても損はないと思うよ」
■3.獄界
画面が一気に暗転し、重苦しい鎖の音が響いた。
無限の牢獄、黒い塔、そして地平線まで続く赤い監獄。
「そして、“獄界”」
モクモクの声が一段低くなる。
「ここは罪を犯した神、あるいは存在そのものが危険視された神格を封印する場所。
《神獄のタルタロス》という神様によって、この世界が構築されている」
「えっと、そのタルタロスさんは、獄界そのものってこと?」
「そう。“この獄界そのもの”がタルタロスなんだ」
■4.下界
モクモクが、最後に小さな青い星を映し出した。
その輝きはどこか懐かしく、温かかった。
「そして、これが“下界”。
いわゆる人間の世界だよ。この層には“地球”がある世界や、“異世界”と呼ばれる領域。
それから――僕たちが創った《My Ragnarok》の世界も含まれている」
「凄いね、黒歴史ノートの世界を創るなんて」
「うん。あのときの設定を、みんなノリノリで再現してたからね。 “協力的”というか、“やる気満々”というか……」
「それ、神様たちのノリが軽くない!?」
モクモクは肩をすくめた。
「神って意外とそういうものなんだよ。
世界を創るのも、結局“遊び心”から始まるんだ」
ふと、俺は気になっていた疑問を口にした。
「なあ、なんで俺を“黒歴史ノート”の世界に転生させたんだ?別の異世界に転生させても、そんなに変わらないだろ?」
モクモクは少しだけ目を細め、どこか意味ありげに笑った。
「フフ……それについては、“追々”話すよ。
ただ――君の書いた“あの世界”には、まだ終わっていない“物語”があるんだ」
■5.神の権能
「さて、次は“神の権能”について詳しく教えるよ。
権能はね、神々や英雄たちが世界に干渉するための“根源の術”だ。
そして面白いことに、使えば使うほど、その力は成長していく。
権能とは、ただの“スキル”じゃない。
魂そのものが進化していく――いわば“神性の呼吸”なんだ」
そう言って、モクモクは手をかざした。
光のスクリーンが現れ、八つの象徴が浮かび上がる。
『権能の種類』
【星胎】
“勇気”、”祝福”、“加護”などの精神的エネルギーを扱い、真に極めれば、星を穿ち、天をも貫ける。
主な保有者:神話の英雄、英雄神、神獣、神話の怪物など。
──“神に成りし者”が得る権能。
【呪魔】
魔法、詠唱、祈り、契約……“形なき力”を操る権能。
炎や雷などの自然現象を自在に支配するほか、
言葉そのものに力を宿す“神言”を使う者もいる。
主な保有者:天使、悪魔、巫女、神官など。
──“言葉”で世界を変える者たち。
【聖紋】
支援・回復・創造――“守りと育み”の権能。
錬金術、薬術、工匠術に長け、
神々の武具や聖なる遺物を造り出すこともできる。
希少な権能であり、文明や叡智を司る神々がこれを持つ。
主な保有者:鍛冶神、文明神、学問神、守護天使など。
──“形を与える神”の系譜。
【殺海】
戦闘と破壊、そして再生を司る権能。
一振りで山を裂き、一息で嵐を呼ぶ。
“戦場そのもの”を自らの領域へと変える力を持つ。
この権能を持つ者は稀であり、同時に恐れられる存在でもある。
主な保有者:軍神、戦神、破壊神、再生神など。
──“力”の権化。
【淵災】
神を殺すための権能。
炎、毒、死、時間、因果――いずれも“神性”を斬るために存在する。
すべての理を覆し、上位存在すら討つ“災厄”の象徴。
主な保有者:神話の怪物、裏神、堕天者など。
──“神殺し”の名を冠する者たち。
【神威】
“淵災”と対を成す、神々の正統なる権能。
その力は同等、あるいはそれ以上にして、
世界の秩序を守る“天の律”を担う。
各神がそれぞれ異なる“理”を司り、
その全てが世界の均衡を保つ要石である。
主な保有者:神話の神々、守護の座にある天上存在。
──“神々の正義”を体現する者。
【原典】
“神威”と“淵災”をも凌駕する究極の権能。
宇宙創造、時間支配、生命再生――
その力の本質は、世界そのものの法則に触れる。
この権能を持つ者は、神話における“主神”や“原初の神”のみ。
あるいは、神を喰らい、超越した怪物たち。
主な保有者:主神、創造神、原初神、神殺しの怪物など。
──“世界を創り変える権能”。
【禁昏】
伝説上にのみ語られる権能。
記録上、存在が確認されたのは二柱のみ。
その力の性質も、行使の結果も、一切が秘匿されている。
主な保有者:不明。
──”世の理から外れた禁忌の権能”
「とまあ、こんな感じ。神は基本的に一つの権能を持っているよ。
次は神の仕事、有祐を黒歴史ノートの世界に転生させた理由の説明するね」
前にも書きましたがもう一度。
18話ではなく、17話でした。
あと、13話の最後にある「配信内容」ですが、今後の展開と嚙み合ってなかったので編集しました。
すみません。




