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「俺と神々のラグナロク 」〜黒歴史から始まる最終戦争〜  作者: ライオンの書
壱章 黒伶騎士(クロレキシ)の爆誕
10/13

10.黒伶騎士

鳥居を潜り、モクモクたちに会いに行く時とは違う不思議な感覚に襲われた。

視界が暗転し、再び明るくなったとき、俺は廃墟化した建物に囲まれていた。


”お〜”

”これが本物のダンジョンか……”

”月が見える!」


とりあえず、俺は中層に向かおうとしていたが、歩いている間に何を話せばいいのかさっぱり分からなかった。

(えーっと、どうしよう……彩さんが襲われるまでまだ50分もあるし、時間を持て余してるな)


ピロン――

【雑談をしましょう。視聴者の質問に答えるのも、立派な配信です】


おお、このスマホ、優秀すぎるだろ。


「え〜っと、何か質問とかありますか?」

”彼女いますか?”


却下。


”ここのダンジョンについて教えてください!”


よし、これにしよう。


「ここのダンジョンは特殊で、廃墟化した建物が存在します。特徴として、外にある建物と同じ構造が広がっていて、天気も朝、昼、夜と変化します。また、このダンジョンの広さは半径200mで、その先は見えない壁に阻まれています」


”勉強になります!”

”φ(..)メモメモ”


「あ、ありがとうございます。えっと、どうしてそんなこと聞いたんですか?」


”将来の役に立つから”

”神は世界を創るのが仕事なんだよ”

”学校でも世界の創り方を勉強するんだ”

”受験に出るのです!”

”ファンタジー世界を創りたいんです!”


「へぇ〜、神様って大変なんですね」


”いやいや、そんなことない” ”よく作られてる” ”さすが上位神が作った世界だよ”



気づけば、40分が経過していた。

ちなみに、俺はまだ一度もモンスターに遭遇していない。理由は簡単だ――上空を飛んでいるからだ。


「いや、これ便利だな……」


実は、ダンジョンに入る前にもう一つの防具を装備していた。それがタラリアというブーツだ。


《神々の伝令者 ヘルメースのタラリア》

【神々の伝令者 ヘルメース】が使った伝説のブーツ。足首には翼がついていて、どんな鳥よりも速く飛べる。不朽の金で作られたこのブーツは、まさに神の足取りを体現している。


「これならモンスターに会うこともないし、空を飛ぶモンスターに出会っても、この速さなら追ってこれない。楽勝だな」


そんなことを考えながら、ふと気になった疑問を口にした。


「あの……ちょっと質問してもいいですか?」


コメント欄が一斉に反応する。


”どうぞどうぞ!”


「世界って、いくつあるんですか?」


”いっぱいあるけどね”

”完璧な世界なら10個くらいかな”

”実質的に完璧な世界は10個だけだね”


「え? そうなんですか?」


”そうそう。永久に続く世界は少ないんだよ”

”どの世界にも、数十個のプログラムミスがある”

”その世界は天変地異を起こし、崩壊しちゃう”

”でも、不発の世界もある”

”ただ、完璧な世界では絶対に天変地異は起きないんだ!”

”ちなみにその完璧な世界の一つが「地球」だよ”

”地球を創った神は、マジで天才”

”神の中の最強”


へぇ、地球を創った神か……。そういえば、モクモクって地球の元管理神だったよな?


突然――


「きゃああああああああ!!」


「え?」


考え事をしていると、女性の悲鳴が耳に飛び込んできた。


”あれ、今の悲鳴聞こえた?”

”もう、49分来てるね!”


やばい!


「急いで助けます!」


”急げ急げ!”

”中二のセリフ、期待してるぞ!”

”((o(´∀`)o))ワクワク”


……忘れてた!


_________________________


【No.219 和曜ダンジョン】。

このダンジョンは特殊で、廃墟化した建物が存在している。入口付近の建物とそっくりで、天気も朝、昼、夜と変化するのが特徴だ。

そのダンジョン内は夜だった。

「あうっ!」

少女が爆風で壁に叩きつけられる。


【〈戦神の鐘〉所属 Aランク祇園彩の中層生配信!】

 ”これ、ヤバくね?”

 ”彩ちゃん!

 ”逃げて!!”

 ”ユニークモンスター、初めて見た”

 ”ヤバいヤバい!!”

 ”彩の叫び声=エロいわ”

 ”茶化すなよ!”

 ”誰か助けろ!”

 ”お前は助けるのか?

 ”無理です! 命が惜しい!”

 ”Sランク攻略者が行かないと、倒せないだろ” 

 ”【ブラウニー】っていう名前、カッコイイ”

 ”そうかな?”

 ”今その話する!?”


二本の角。鬼のような顔に屈強な体は灰色の肌で、一刀の大きな紅い魔法剣を片手に持っていた。

ユニークモンスターは、特異な個体であり、最強クラスのモンスターたちのこと。

ユニークモンスターは例外なくSランク以上の強さになる。

そんな魔物が彩の前に居た。


モンスターの頭上には


【ユニークモンスター『ブラウニー』】

と書いてあった。


「……嘘でしょ」

Aランクである祇園彩がSランク相当を倒すのは不可能。


 ”逃げて!”

 ”死んじゃう!”

 ”公開処刑www”


 コメント欄が一斉に流れる。


「ウガァァァッ!!」


 ブラウニーが手を振り下ろす。

 彩がぎゅっと目を瞑る。



「大丈夫か?」



――ブラウニーの大剣が振り下ろされた場所に彩はいなかった。



「え……?」

恐る恐る彩が目を開くと、自身に迫っていたブラウニーから100mほど離れていた。


”一体何が?”

”なんか男の声聞こえなかった?”

”俺も聞こえた”

”彩生きてる!”


周りを見渡すと、近くに人がいた。

身長は私と同じくらい、黒い仮面をかぶり、黒い服を纏った人。

男か女か分からない。


「ウガァァァアアアアアア!!」

「っ!」


ブラウニーがこちらに気づき、迫ってきた。

彩はその場から離脱しようと走り出そうする。


「あなたも逃げて!」


ここに居れば必ず死ぬ…そんな直感が彩を突き動かしたのだ。 


「動くな、少女」 


しかし、そこで彼が待ったを掛ける。

声からして、男だった。

彼は見向きもせずに彩へと放たれたその言葉に、思わずその足を止めた。


「我の戦場に足を踏み入れたなら、その命、守ってやろう」


”は? 何言ってるの?”

”Sランクだよ!”

”彩、そんな中二っぽい男はほっとけ”

”そうそう、逃げろ”

”ありがとうヒーロー。

”犠牲者だろwww”

”俺たちの彩さんを殺すつもりか!?”

”心中だろ”


彼は彩に見向きもせず、真っ直ぐとこちらに向かってくる怪物を見つめる。


――そして、彼の雰囲気が変わった。


研いで研いで研ぎ切った抜身の刀のような鋭さを持った真剣なオーラ……それを見て私は確信した。

こちらの方がより、生き残れると。


「力を貸してくれ。【神算戦艦】」

  

ただ一言、言い放たれた言葉を合図にその力を開放する。

ゴウッ! と言う空気を裂くような音と共に放たれた灰色の極光。

それが放たれるのと同時に、ブラウニーは大剣を彼に振り下ろす。


「大した事ないな」


彼は冷淡に呟く。

――彼は素手で大剣を受け流していた。


「ウガァア!?」


ブラウニーは驚きの声を上げ、次々と剣を振り下ろすが、すべて男に受け流される。

激しいぶつかり合いの中、男は冷静に対処し続けた。

瞬間、彼の蹴りがブラウニーの顔へ飛んできた。 

ブラウニーは咄嗟に顔を避ける。

しかし、彼は蹴り上げた足を真下に下ろし、踵で怪物の肩を砕く。

踵蹴りだ。

肩を砕くと、そのまま拳を叩きつけ、ブラウニーは廃ビルに吹き飛ばされる。

廃ビルから煙が立ち上った。


「ウ、ウガァァァァ!!」


まだ怪物は生きていた。

だが、もう終わりだった。


「──愚か者が、神に抗うことなど無意味だ」

「ガ――」


次の瞬間、彼はいつの間にか怪物の近くに移動しており、炎でできた剣を手にしていた。


「【創乱神製】『■■■の炎の剣』」


その剣は、怪物の首から炎を溢れさせていた。

ブラウニーは地面に伏せ、ドロップアイテムに変わった。


「……嘘……」

私はしばらくの間、呆然としていた。


”……”

”( ゜д゜)”

”(つд⊂)ゴシゴシ”

”( ゜д゜)”

”え? 何が起きたの?”

”倒しただろ。見てなかったのか?”

”現実として受け入れられない”

”同感”

”幻……夢かな”

”『マボロシ〜!』”

”そのネタ、今じゃない”

”炎の剣……カッコイイ!”

”そっち?”

”彼は誰だ!”

”Sランクの攻撃を受け流していたよな……”


「あ、あの!」

私は急いで彼に近づいた。

「た、助けてくださりありがとうございます!」

「……礼を言われるほどのことではない」

「い、いえ、本当に――え?」

気づけば、彼の姿は消えていた。まるで、最初からそこに存在しなかったかのように、周りは静かだった。



”……消えましたね”

”……Sランクの魔物の素材、置いていった””

”( ゜д゜)ポカーン”

”(つд⊂)ゴシゴシ”

”( ゜д゜)ポカーン”



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