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レセプション④「毒」

プジョル様以外、全員が息を呑んだと思う。

部屋の空気が一気に緊張が高まった。


「アーサー、やはり毒は入っていたか?」

「はい。間違いなく混入しております」

 プジョル様の表情も声も落ち着きをはらっていて少しも様子は変わらない。

 でも、毒が混入していると皇太子殿下に報告をされたと同時に、プジョル様がグラッと身体を傾けて口元を抑えられた。

 よく見ると額に細かい汗をかかれている。

 そして、たちまちにして顔色が悪くなった。


 どう見ても、毒が効いているようにしか見えない。


「アーサー、早く処置をして来い」

 皇太子殿下がプジョル様の肩をポンっと叩く。

「後はわたしがやっておく」

 プジョル様が皇太子殿下の言葉にひとつ頷き、それからわたしの方を見たので、後は任せたという意が含まれていると取った。

 わたしは「わかりました」と目くばせをした。


 例の担当者はずっと俯いていたが、プジョル様が退室しようと後ろを向いたその瞬間に、隙を見計らうように突然、丸腰にも関わらず皇太子殿下に襲い掛かった。

 彼は追い詰められているのか、すごい形相で迫り来る。


 咄嗟にプジョル様がその迫り来る担当者と皇太子殿下の間に入り、皇太子殿下を守られる。


 他の調理部の数名も同時に皇太子殿下に襲いかかってきた。

 みんな、武器などは手にしていない。


 皇太子殿下の後ろにいた側近は皇太子殿下の背後を守るように皇太子殿下と背中合わせとなり、剣を抜かれた。


 それと同時にテーブルの白いクロスがバサっという音とともに勢いよくと捲れ上がると、テーブルの下に息を潜めていた屈強な騎士達が数名が飛び出てきてた。


 最初にこの部屋に来た時は、この白いテーブルクロスはされていなかったのに、調理部から料理を運んできた時には長い白いテーブルクロスがされていたのには、テーブルの下に誰かが潜んでいるのではと予想はついていた。

 しかも先にミクパ国提供の料理を並べ、部屋に料理の匂いを充満させておいたのも、騎士達の匂いを少しでも誤魔化すためだったのだろう。


 わたしはこれ以上、毒の犠牲者が出ることを防ぐためと、皇太子殿下を守るプジョル様に加勢するために、さっき運んできた大皿の料理を手に取り、それを襲い掛かる者たちの背中を目掛けて投げた。


 一時騒然となったが、すぐに騎士達がこの場を鎮められた。

 襲撃した者達が武器を持っていなかったこともあり、本当にあっという間の出来事だった。


 「プジョル様、血が…」

 皇太子殿下を守るように、自ら盾になっていたプジョル様の口元から一筋の血が流れていた。


「大したことない。ただ少し、毒で喉と胃が燃えるように熱いだけだ」

 そう言うと、上着の袖で口元の血と額の汗を拭われた。


「なぜ、俺たちのことがわかったんだ!!」

 調理部の担当者が騎士達に捕えられ、床に押さえつけられながら、皇太子殿下に疑問を投げつけた。


「わかるよ。あの予告状も調理部で事を起こすと暗に伝えていたのだろう。王城で火を扱える場所は調理部でしかない。お前達は、このように捕えられる事を望んでいたんだろう?だから、火の海にすると暗に自分たちは調理部である事を伝えてきたし、今も武器も持たずに丸腰だ。あの予告状は自分たちを救って欲しいと私達に伝えたかったのではないか?」

 そう言葉を返されて、捕えられている者達が安堵の表情を浮かべて、脱力したのがわかった。


「心配するな。お前たちを脅していた貿易商達は捕えた。いま、人身売買や強制労働の関係先全てに騎士団が入っている。制圧するのは時間の問題だろう」

「………ありがとうございます。そこまでわかっておられたのですね。私達は仲間を盾に取られて、両殿下を毒で殺せと脅されていました。もうこうするしか方法がなかったのです。申し訳ありませんでした。彼らは無事なんですね」

「大丈夫だ。ヨゼフ殿下も酷い目に遭っているミクパ国の人の救出に尽力されている」

「…ヨゼフ殿下が…」

 そう言うと、捕えられた者達が嗚咽を噛み殺し、静かに泣き出した。

 みんな、ミクパ国の人だったのだろう。


「アーサー、毒が回らないうちに早く処置をしてもらってこい」

 皇太子殿下が不安げな表情を浮かべながらプジョル様を見て、語気を強めた。


 プジョル様は大粒の汗を流されていて、頬は紅潮していた。

「少しまずい状況ですので、しばし席を外させていただきます」

 プジョル様は皇太子殿下から一歩引き、綺麗に最敬礼された。


 そして、プジョル様がわたしの目の前にゆっくり来られた。

「ミクパ国提供の料理は先程、大広間に運んであるから心配するな。俺がシェリー嬢にやってやれることはここまでだ」

 見惚れるような穏やかな表情でわたしにそう言うと、わたしを大きく包み込むように優しく抱擁されて、わたしの耳元で呟くように言われた。


「シェリーが無事で良かったよ。あとは頼むな」 そう言うと部屋を後にされた。



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