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秘密基地


 「まるで子どもの秘密基地みたいだな」

 いたずらぽっく笑っているセドリック様がうれしそうにわたしの前髪を撫でた。

 いつも難しい表情をしながら、メガネをクイッとする冷静なセドリック様が、子どものようにブランケットを被るだなんて、意外と可愛い新しい一面を見た気がした。


「順を追って説明するぞ」

 そう言って、急に真面目な表情になり、事実だけを時間軸で端的にわかりやすく説明してくれる。


 セドリック様の口から、ミクパ国の事業についてや、それに乗じて人身売買や強制労働をする者が出てきたこと、財政課も水面下で動いていること、レセプションが今後のミクパ国との通貨統一の成否の行方を占う試金石となることなど、国家機密が出るわ出るわで、ブランケットを被って話したくなる気持ちがわかる。


 さすがにこれは誰にも聞かれてはいけない話しのはずだ。

 ブランケットを被って可愛い♡という場合ではなかったですね。


 そして、レセプションの開催を阻止しようとする怪しい動きがあり、儀典室が巻き込まれる可能性が非常に高いこと、調理部が怪しいことなど次から次に恐ろしい説明がある。


 公爵家や王家の影が動くと聞いた時にある程度の覚悟はしていたけど、予想を遥かに超える案件だった。


 加えて、セドリック様は例の女性のことについて言及した。

 例の女性は諜報員であること、あのレストランに出入りするのに、良からぬことを考える輩が見張っている可能性があり、それを欺くためにもそれっぽく見せるために演技をしていたと説明をされた。


 そして、目を剥いて必死の形相でわたしの次の再婚相手探しなど事実無根であることを必死に訴えられた。


 素直な感情をさらけ出すセドリック様の様子に、もう拗ねたようなもやもやした感情はなく、むしろセドリック様が愛おしい。

 この人はひとりでどこまでがんばっていたのだろう。

 


 ひと通り説明を終えたセドリック様は落ち着いたのか、「すごく眠いんだ」と言ってわたしを抱き寄せて、わたしの肩に顔を埋めて、そのまま動かなくなった。


 あまりにもの至近距離にわたしは緊張で動くことも出来ず、わたしの早くなる鼓動がセドリック様にバレそうだ。

 

 スー スー スー


「セドリック様???」


 小さな寝息を立てて、わたしの肩で眠ってしまったセドリック様。

 

 いろいろあってお疲れなんですね。

 いつもはオールバックにキメて近寄り難い雰囲気を出している黒髪もいまは無造作で、思わずその髪に手が伸びる。


 柔らかい…

 セドリック様の頭を撫でながら先ほどのセドリック様の話してくれたことをもう一度考える。


 いま、わたしがすべきこと。

 なぜ、セドリック様がこの案件に財政課の範囲を超えて、ここまで関わっているのか。


 いつもは背中合わせで眠りにつくが、今日は初夜以来初めて、向かい合って眠った。



⭐︎⭐︎⭐︎


 翌朝、儀典室長からもこの件について話があった。


 それからはミクパ国とのレセプションまで、嵐の前の静けさで何事もなく、粛々と準備は進んだのだが、前日になって思わぬ手紙が1通届くのだった。


 それは城内便の担当箱に入っていた。

 宛先は儀典室長宛だ。


 室長は開けるなり、腕組みをして唸ったあと、プジョル様を1番に呼んでなにかを少し話し合っていると、儀典室を人知れず警備していた影の方がどこからともなく現れて、彼は大急ぎでどこかに行き、室長は我々を集めた。


 手紙の内容は大陸共通の大陸語で書かれた予告状だった。


「明日のミクパ国とのレセプションは中止にしろ。さもなければ、王城は火の海となるだろう」


 つまり、明日のミクパ国のレセプションを中止にしなければ、王城に火をつけると書いてあった。


 大陸語で書かれているのは、我が国の言語が書けないのか、それとも筆跡で身元がバレないようにしているのか。

 王城に勤める者は基本、日常会話程度なら大陸語は出来る。

 知ってか知らずか。


 儀典室のメンバーが息を呑み、顔を見合わせる。


「レセプションは中止ですか?」

 わたしがそう静かに室長に尋ねると、室長とプジョル様はお互い目で会話して、ふたりはなんとも不敵な笑みを浮かべた。


「まさか、そんな訳ないだろう」

 プジョル様が楽しそうにしている。


「こんなくだらない手紙1通で脅しをかけたつもりだろうけど、こっちは準備万端だからな。こんなことには屈しない。むしろ、あちらの動きを待っていたぐらいだ」


 儀典室のメンバーが青ざめているのに、プジョル様と室長は目が爛爛としている。


 これ、絶対になにかを企んでいる。

 なんだか、逆に手紙の送り主の方が気の毒になってきた。

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