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本物の愛

「プジョル殿、少しお時間をよろしいですか?一応あなたに報告する義務があるように思われますので報告させて頂きます」


 プジョル殿に報告することでどう思われるのかが怖くて唾をのむ。


「先日、シェリーに俺に恋をしていると告白されました」


 プジョル殿は俺の方を向いて立ち止まり、無言でじっと俺を見ている。


「だからというわけではないのですが、仕事を愛して止まないシェリーの仕事を妨害する者たちや、荒事を起こそうと企んでいるような連中などから、どんなことをしてでも守りたいです」


 黙って俺の話を聞いていたプジョル殿が少しの沈黙後にようやく重い口を開いた。

「そうか。シェリー嬢はあなたに初恋をしたことを伝えたのだな」

プジョル殿は少しだけ淋しそうに微笑んだ。


「今回のレセプションを妨害してくる奴から守りたいのは俺もセドリック殿と同じ気持ちだ。セドリック殿、ここは一時休戦だ。共にレセプションが成功するよう、そしてシェリー嬢を守ろうではないですか」

「もちろんです。悔しいですが私ひとりの力だけではなんともなりません。でも、シェリーのためなら、私はなんでもできます。今回の件のように」

 握り拳に力が入る。


「セドリック殿も私と一緒でシェリー嬢に恋をしていた気持ちがいつのまにか本物の愛に変わったのですね」


「本物の愛?」


「ええ。そうです。本物の愛です。かくいう私もシェリー嬢に恋する気持ちから愛に変わりました。彼女を愛しています。だから、自分を犠牲にしてでも彼女を守りたい。セドリック殿も一緒でしょう」


 プジョル殿のいつものふざけた表情とは違う顔に彼の真剣さを垣間見る。


「お互い、愛が重いですね」


俺がそう言うと余裕ある笑みをプジョル殿がふっと浮かべる。

どちらからともなく手を出し合って、固く握手を交わした。


「でもこれだけは言っておきます。シェリーをプジョル殿に易々と奪われるつもりもないし、シェリーに恋していると貴方より先に告げられたので、一歩リードしていますから」

 固い握手をしたままの手に力と思いを込める。


「彼女がセドリック殿に初恋をしたことはそばにいたので知っていましたよ。しかし、貴方がシェリー嬢の気持ちをこんなに早く知ったということは少し誤算ですがね。「向き合え」だなんて助言しなければ良かった。まあそれでも、シェリー嬢がひとりで泣いている時に私がそばにいたという事実は変わりませんし、セドリック殿はせいぜいシェリー嬢に貴方が愛しているものがわからないようにしていてくださいね」


 子憎たらしい笑みを浮かべ、自分が優位であるかのように見せつけてくる。

 泣くシェリーを想像し、そばに居たのが俺ではなくて、目の前のこの大人の余裕を見せつけ、大きな懐でシェリーの心を包んだのかと思うと、冷静でいられない。


「今回のことは国家機密であると理解しているのですが、シェリーに説明しようと考えています。プジョル殿もシェリーを「名ばかり妻」にするなと言っていましたし、よろしいですよね?」

「その方が良いだろう。私も儀典室長にも相談するつもりだから、いずれ知ることになるだろう。どうせ、財務課でも動いているんだろう」

 それには黙って頷いた。


⭐︎⭐︎⭐︎


 いつものように仕事を終えて、家路に向かうわたしの横にセドリック様がいる。

 今日はなにがあったのかはわからないけど、考え込むようにセドリック様は歩いている。

 だから、あえて声はかけない。


 こうして一緒に帰るようになってから、セドリック様の今日は機嫌が良いとか悪いとかが、わかるようになってきた。


「シェリー、明日の休日の予定は?」


 考え込むようにしていたセドリック様から、休日のことを聞かれたので、余程わたしと過ごす休日が気まずくて、悩まれていたのだと推察した。

 告白したことで気まずくなってしまうのは本意ではない。


「予定はありませんが、セドリック様はわたしのことなどお気になさらずに、されたいことをしてくださいね」

 わたしのことは気にしなくて良いですよ。と意を込めた。


「では、以前に約束をしたミクパ国の料理を一緒に作ってみないか?」

「えっ?」


 セドリック様がその約束を覚えておられることに驚いた。

 あれからいろいろあったし、反故にされてもおかしくなかった。


「覚えていてくださったのですか?」

「当たり前だろ」

 少し照れながら、メガネをクイッとされた。

 いつものセドリック様だ。


「うれしいです」

 満面の笑みで返すと、セドリック様がまたメガネを掛け直しながら、小声で「うん」と頷いた。


「材料を用意するぞ」

「え、いまからですか?」

「いいから、ついてきて」


 そう言うとわたしの手を握り、セドリック様が駆け出した。

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